はじめに
日本語吹き替え版。
戦争映画と言えば、僕らの世代は1962年から1967年まで続いた「コンバット」が強く記憶に残っている。第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍歩兵連隊の分隊の活躍が描かれている。ヒューマンドラマだ。
自動小銃をもったサンダース軍曹(ヴィック・モロー)がかっこよかった。彼は残念ながら1982年の映画「トワイライトゾーン/超次元の体験」の撮影中の事故で亡くなっている。実に53才の若さだった。
それからジョージ・C・スコット主演「パットン大戦車軍団」、この映画は第43回アカデミー賞の主要部門7つを独占する凄い作品だった。ところが主役のジョージ・C・スコットは主演男優賞を辞退してしまった。頑固なおやじだ。彼によれば「アカデミー賞なんてクソくらえ」と言うことなのか?
1967年に日本で公開されたスティーヴ・マックイーン主演の「砲艦サンパブロ」もいい映画だった。あの「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエスト・サイド・ストーリー」の巨匠ロバート・ワイズが戦争映画まで手を伸ばすとは。
そして、1962年公開ジョン・ウェイン主演の「史上最大の作戦」。これは第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を描いている。とにかく当時の大スター総出演だ。
1966年のカーク・ダグラス主演「パリは燃えているか」も凄い。フランス軍によるパリの解放を描いている。この映画も当時の大スター総出演だ。
1957年日本公開のデヴィット・リーン監督の「戦場にかける橋」も有名な戦争映画だ。第30回アカデミー賞で主要7部門を獲得している。タイのクウェー・ヤイ川鉄橋の建設にまつわる物語だ。日本軍の捕虜となったイギリス軍兵士と日本人斉藤大佐との間で繰り広げられるドラマだ。今ではタイの観光地になっている。実は僕も昔に行ったことがある。
1963年公開チャールトン・ヘストン主演「北京の55日」。清朝末期、義和団事変が描かれている。勇ましいテーマソングが今でも心に残る。
1970年公開のジョージ・シーガル主演「レマゲン鉄橋」。第二次世界大戦の末期、ライン川に残された唯一のレマゲン鉄橋をめぐってドイツ軍と連合軍の激突が描かれている。
日本映画しては色々あるが、2005年公開の反町隆史主演「男たちの大和/YAMATO」は製作費25億円の大作で大ヒットした。戦艦「大和」については色々な映画で取り上げられている。最近では「アルキメデスの大戦」がヒットした。
これらの映画は戦争が第三者的な目線で描かれたものが多い。残虐なシーンも少ない。ゆうなればヒーロー映画だ。ところが1987年に公開されたオリバー・ストーン監督「プラトーン」には度肝を抜かれた。この映画は僕らが戦場に放り込まれたような臨場感がある。
「プラトーン」
戦争がとても残虐でリアルなのだ。この作品を契機に戦争映画が変わってゆく。直近では一人の伝令兵士を描いた「1917命をかけた伝令」。これはまるでワンカットで撮影されたと勘違いするほどリアルだ。僕らは一人の兵士に感情移入して戦場を駆け抜ける。ここではリアルな戦場映画を集めてみた。戦争の残酷さを肌で感じてほしい。
第15位 ミッドウェイ(2019年)
★★★★☆(見るべき名作)
2020年9月11日日本公開のアメリカ製作ミッドウェイ海戦ドラマ
監督 ローランド・エメリッヒ(インデペンス・デイ、デイ・アフター・トゥモロー、ミッドウェイ)
出演 ●エド・スクライン(アリータ:バトル・エンジェル、ミッドウェイ)
●パトリック・ウィルソン(インシデアス、インシディアス第2章、パッセンジャーズ、プロメテウス、死霊館エンフィールド事件、死霊館のシスター、アクアマン、ミッドウェイ)
●ルーク・エヴァンズ(ホビット、ドラキュラZERO、ミッドウェイ)
●ウディ・ハレルソン(グランド・イリュージョン、ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー、ハンガー・ゲームシリーズ、TRUE DETECTIVE/二人の刑事、スリー・ビルボード、ミッドウェイ)
●浅野忠信(ミッドウェイ)
●國村準(ミッドウェイ)
●豊川悦司(ミッドウェイ)
今から約80年近く前、1942年6月5日からの3日間、日米の雌雄を決する大海戦があった。今でも語り継がれる「ミッドウェイ海戦」のことだ。ミッドウェイ島は日本からハワイ諸島に向かう航路上のハワイよりにある。
当時、日本とアメリカには大きな国力差があった(今でも大きな差はあるが)。連合艦隊司令長官の山本五十六海軍大将は米国との短期決戦であればある程度互角に戦えると考えていた。長期戦では物量に勝るアメリカには到底勝てない。
「空母エンタープライズ」
1941年12月8日、真珠湾奇襲作戦で日本は多大な戦果を挙げた。ここで大きな成功を挙げたもののミスもあった。燃料基地タンクが破壊できていない。そして空母を一隻たりとも沈めていない。これらが後にボディブローのように効いてくる。
1942年4月18日、ドゥーリトル中佐率いるB25爆撃機16機によって東京・川崎・横浜・横須賀・名古屋・四日市・和歌山・神戸・新潟と日本列島縦断爆撃を許してしまう。これに日本は震えあがる。
「B25ミッチェル」
B25爆撃機は中国に許可なく着陸する。燃料切れで海上に落下する機体もあった。アメリカ軍にしてみれば捨て身の戦法であった。日本は中国をたたく。
「戦艦大和」
そして、アメリカのミッドウェイ島基地のせん滅とおびき寄せた空母の破壊を目的に「MI」作戦を敢行する。しかし、この情報は暗号解読され、米軍につつぬけになっていた。
アメリカ軍は日本の連合艦隊を待ち受けていた。彼らは日本の4空母のせん滅をただ一つの目標にしていた。そして日本はたった一日で空母4隻「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」を失い、歴戦の戦闘機約300機も失う。
詳細は「ミッドウェイ」を見てね。
第14位 ダンケルク
2017年9月日本公開のイギリス・アメリカ・フランス・オランダ合作の戦争サスペンス映画
監督・脚本・製作 クリストファー・ノーラン(バットマン ビギンズ、ダンケルク、インターステラー、インセプション)
出演 ●フィン・ホワイトヘッド(ダンケルク)
●トム・グリン=カーニー(ダンケルク)
●ジャック・ロウデン(ダンケルク)
●ハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクションの世界的ミュージシャン)
●アナイリン・バーナード(ダンケルク)
●ジェームズ・ダーシー(エクソシスト ビキニング、クラウドアトラス、ダンケルク)
●バリー・コーガン(ダンケルク)
●ケネス・プラナー(ヘンリー五世、ハムレット、マリリン7日間の恋、ダンケルク)
●キリアン・マーフィー(インセプション、トランセンデンス、ダンケルク、白鯨との闘い)
●トム・ハーディー(インセプション、ダークナイト ライジング、ダンケルク、マッドマックス 怒りのデス・ロード)
●マーク・ライアンス(ブリッジ・オブ・スパイ、ロミオとジュリエット、ダンケルク)
監督のクリストファー・ノーランは徹底したリアリストだ。彼は「この映画は戦争映画ではなくサスペンス映画だ」と言っている。確かに、そう考えると、戦闘シーンがほとんどない。ドイツ兵もほとんど出て来ない。不思議な感じがしたけど、パンフレットを読むと納得だ。(パンフレットも参考にしてレビューしています。)
これと対極にあるのがスピルバーグ監督の傑作「プライベート・ライアン」だ。銃弾によって血や肉が飛び散り、海岸が血に染まる。ノーランは「この映画を参考に見た」けれど自分のスタイルではないと告白している。
「ダンケルク」ではほとんど血は見せない・・・これは彼の洗練されたスタイルだと思うし美学だ。「インセプション」「インターステラー」なども残虐なシーンはほとんど無くスタイリッシュな映像だ。だから子供でも戦争映画の嫌いな女性でも見ることが出来る。
かといって緊迫感が無いかと言えばそんなことは無い、自分が映像の中に放り込まれたかのようなリアリティがある。映画も106分と短い。ノーランは「リアリティを極限にまで追及した結果、緊張が続き観客が長時間に耐えられない」と言っている。
セリフはほとんどなく映像とハンス・ジマーの音楽、爆撃音や飛び交う銃弾の音、逃げ惑う兵士の叫び、飛行機のエンジン音などの効果音だけだ。
主役級が無名の配役と実年齢に近い若者達を起用している。僕らは主として彼らの視点で映像を見ることになる。でも、トム・ハーディー、キリアン・マーフィー、マーク・ライアンス、ケネス・プラナーなどハリウッドを代表するスターも出演させているから豪華な映画だ。
さらに①戦闘機のパイロットは1時間、②民間の小型船舶は24時間、③陸上の兵士は一週間の3つの時間軸で物語が進行してゆく。撮影場所はダンケルク(フランス)その場所、駆逐艦も本物、戦闘機も本物を使っている・・・まさに本物づくめだ。CGを使わないのにこれだけの迫力が出せる。
話しのスジは、第二次世界大戦の1940年5月26日~6月4日までの10日間。場所はフランスのダンケルクと対岸のイギリス。ドイツ軍に追い詰められたイギリス軍、フランス軍合計40万人をダンケルク港から脱出させるダイナモ作戦の実話をドラマ化している。
詳細は「ダンケルク」を見てほしい。
第13位 1917命をかけた伝令
2020年2月日本公開のイギリス・アメリカ合作戦争映画
監督・脚本・製作 サム・メンデス(007スカイホール、007スペクター、1917命をかけた伝令)
出演 ●ジョージ・マッケイ(1917命をかけた伝令)
●ディーン=チャールズ・チャップマン(1917命をかけた伝令)
●マーク・ストロング(サンシャイン2057、シャーロック・ホームズ、裏切りのサーカス、ゼロ・ダーク・サーティ、リピーテッド、イミテーション・ゲーム、キングスマン、シャザム!)
●アンドリュー・スコット(1917命をかけた伝令)
●リチャード・マッデン(ロケットマン)
●コリン・ファース(裏切りのサーカス、マジック・イン・ムーンライト、リピーテッド、キングスマン)
●ベネディクト・カンバーバッチ(裏切りのサーカス、8月の家族たち、SHERLOCK、イミテーション・ゲーム、ドクター・ストレンジ)
2020年第92回アカデミー賞で10部門ノミネートされ、視覚効果賞・撮影賞・録音賞を獲得した実力作品だ。全編にわたってワンカットに見える映像で伝令兵士の一日を描いた前代未聞の作品だ。
こんなことが出来るのも撮影技術が格段に進歩したおかげだ(撮影監督はロジャー・ディーキンス、この作品で賞を取っている)。監督のサム・メンデスは第一次世界大戦の秘話を祖父から聞いて、これを彼なりに脚色し映像化した。
当時は有線・無線電話よりも伝令が多く使われた。だからひょっとしたらこんなドラマがあったのかもしれない。伝令は二人一組で戦場を駆け抜け重要な作戦を伝える。
サム・メンデスがワンカットにこだわったのは「観客に戦場を走り抜ける兵士の息遣いを感じさせたい」からだ。僕たちは伝令兵士に感情移入し戦場を駆け巡る。そして彼らの行く手には何が現れるのかドキドキしてみることになる。
1917年第一次世界大戦が始まって3年。ドイツ軍とイギリス・フランス連合軍が長大な塹壕を挟んで一進一退を続けていた。明朝マッケンジー大佐率いる軍隊1600人が突撃する計画だ。ところが、ドイツ軍はおびただしい砲兵隊を待ち伏せさせている。この作戦を強行すれば軍隊は全滅させられる。これは航空写真によって得られた情報だ。
エリンモア将軍はマッケンジー大佐に「明朝の攻撃を中止するように」と書かれた手紙を持たせて二人の伝令を送る。果たしてウィリアムとトム二人の伝令は任務を遂行することが出来るのか。詳細は「1917命をかけた伝令」を見てね。
第12位 スターリングラード
2001年日本公開のアメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作
監督 ジャン=ジャック・アノー(薔薇の名前、セブン・イヤーズ・イン・チベット)
原作 ウィリアム・クレイグ
出演 ジュード・ロウ(ガタカ、グランド・ブダペスト・ホテル、A.I.、シャーロック・ホームズの冒険)
ジョセフ・ファインズ(恋に落ちたシェイクスピア)
エド・ハリス(アポロ13、スノーピアサー)
レイチェル・ワイズ(ナイロビの蜂)
第二次世界大戦、ソビエトの実在の狙撃兵ヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)を描いた戦争映画だ。
舞台は当時のスターリングラード(ヴォルゴグラード)、ナチス ドイツとの戦いに苦戦するソ連に救世主のごとく現れた狙撃兵ヴァシリ。
彼は次々とドイツ兵を殺害し、敗戦濃厚であったソ連軍を勇気づける。そしてソ連共産党の機関紙で宣伝され一躍 国の英雄となるんだ。
ところがドイツ軍も負けてはいない、天才的狙撃手ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)を投入する。
そしてヴァシリとケーニッヒの一騎打ちが始まる・・・・果たして勝つのはどちらか?
少し前に映画アメリカンスナイパーが大ヒットした。狙撃兵の苦悩を描いた映画だが、それにも劣らない臨場感が伝わってくる。
ジャン=ジャック・アノー監督の緻密な演出と、悲惨な戦場が素晴らしい映像で描写される。
ドイツ軍のケーニッヒ少佐は実在の人物ではなく、ソ連の創作であると言われている。さてあなたはどう見るか。
第11位 ゼロ・ダーク・サーティ
2013年日本公開のアメリカ映画
監督 キャスリン・ビグロー(ハート・ロッカー)
脚本 マーク・ボール
出演 ジェシカ・チャステイン(インターステラー、オデッセイ、クリムゾン・ピーク)
ジェイソン・クラーク(猿の惑星 新世紀、ターミネーター新起動)
ジョエル・エドガートン(エクソダス:神と王)
監督のキャスリン・ビグローは前作の「ハート・ロッカー」で第82回アカデミー賞で6部門を獲得している。
今回の作品も前作と同様 戦争をテーマにしており、とても女性監督とは思われない男くさい映像が随所に出てくる・・・サスペンス映画を観ているようで面白い。
この物語はアルカイーダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンを見つけ出し殺害するまでのいきさつをアメリカ中央情報局(CIA)の女性分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)の目を通して描かれている。
ウサーマ・ビン・ラーディンはパキスタンに潜伏していることはある程度分かっていたが、家族とともに大豪邸に住んでいるとは考えもつかなかった。
CIAは必死に彼の行方を捜索したがなかなか確かな情報は得られなかった。
たまたま彼の部下のその部下から有力な情報が得られ、ある邸宅が浮かび上がってくる。その邸宅を衛星画像などで何か月も監視したが動きは見られなかった。
マヤは上司を動かし、オバマ大統領の了解を得る。そしてゼロ・ダーク・サーティ(真夜中の0時半)にヘリコプター数機で屋敷を急襲する。
果たして思惑通り、彼はそこにいたのか?
ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害は夜中にも関わらず、オバマ大統領の口から全米に報告された。そしてその後彼の遺体は水葬されたと言われている。
詳しいレビューは「ゼロ・ダーク・サーティ」を見てね。
第10位 フルメタル・ジャケット
1988年日本公開のアメリカ・イギリス合作映画
監督 スタンリー・キューブリック(2001年宇宙の旅、シャイニング)
原作 グスタフ・ハスフォード
出演 マシュー・モディーン(スティーブ・ジョブズ)
ヴィンセント・ドノフリオ(ジュラシック・ワールド、セル)
R・リー・アーメイ(セブン)
スタンリー・キューブリック監督の「戦争そのものを映画にしたい」と言う熱意が伝わってくるような激しい映画だ。
前半後半と二部に分かれた構成になっている。舞台はベトナム戦争時で、前半はアメリカ海兵隊に志願してきた青年達が、ハートマン鬼軍曹(R・リー・アーメイ)に徹底的にしごかれる。
鬼軍曹は新兵を殴る蹴るの体罰を加え、卑猥な言葉で激しく罵倒する。この言葉が卑猥すぎて翻訳するのも大変だったと思う。
この鬼軍曹のしごきに心の弱い者は精神に異常を来してゆく、そしてある新兵(ヴィンセント・ドノフリオ)が卒業式の夜に鬼軍曹を射殺し自分も自殺する。
第二部は一人前の海兵隊員になった若者達はベトナムの戦場に送られる。彼ら小隊は市街地へ敵の情勢を探りに出かけるが、運悪く小隊長も、分隊長も敵に殺されてしまう。
残ったジョーカー(マシュー・モディーン)達はこの難局をどうやって切り抜けてゆくのか・・・。
第9位 シン・レッド・ライン
1999年日本公開のアメリカ映画
監督 テレンス・マリック(ツリー・オブ・ライフ)
原作 ジェームズ・ジョーンズ
出演 ジム・カヴィーゼル(パッション、PERSON of INTEREST)
ショーン・ペン(LIFE!、ザ・ガンマン)
エイドリアン・ブロディ(戦場のピアニスト、プレデターズ、グランド・ブダペスト・ホテル)
ジョン・キューザック(アイデンティティー、推理作家ポー最後の5日間)
太平洋戦争の激戦地ガダルカナル島の戦いを描いている。ここで日本軍と連合軍の熾烈な戦いが始まる。
この作品は第71回アカデミー賞7部門にノミネートされ、第49回ベルリン国際映画祭にて金熊賞を獲得した秀作だ。
そうそうたるメンバーが出演している。主演のウィット二等兵を演じるジム・カヴィーゼルはこの作品が初めての主演となり、その後の活躍が目覚ましい。
この映画は一般的な戦争映画と異なり、兵士一人ひとりの心情が伝わってくる。自然の風景は心が洗われるほどに美しく、高台の風景、空、海、ジャングル、川の流れ、風にそよぐ草木・・・そんな中で死闘が繰り広げられる。
上官と対立する部下、逃避行を選択する兵士・・・・戦争を賛美する映画ではなく、戦争の実態を淡々と表現する。
大ヒットはしなかったけど、たまにはこんな戦争映画を観ることをお薦めする。
第8位 フューリー
2014年日本公開のアメリカ映画
監督 テヴッド・エアー
脚本 テヴッド・エアー
出演 ブラッド・ピット(12モンキーズ、セブン、マネー・ショート)
シャイア・ラブーフ(トランスフォーマーシリーズ、イーグル・アイ)
ローガン・ラーマン(ノア 約束の舟)
マイケル・ペーニャ(アントマン、オデッセイ)
第二次世界大戦、連合国がドイツ軍に最後の戦いを挑んだ1945年が舞台になっている。
戦車と乗組員たちのドラマなんだ。戦争の悲惨さ残忍さが伝わってくる。
死体が起き上がってくるのを恐れて、死体にまでも弾を撃ち込む。敵兵の死体の上を平気で踏みつぶして進む戦車部隊・・・もうそこには人間の理性と言うものはない。
敵の少年兵を打ち殺すことをためらったため、戦車が1輌 犠牲となる。戦場では、やるかやられるかしかないことを新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)は知る。
戦車長のコリアー軍曹(ブラッド・ピット)はフューリー(怒りあるいは復讐の女神)と名付けた戦車をこよなく愛している。乗組員は彼を含めて5人になる。
ドイツ軍の最強戦車ティーガーⅠと4台のシャーマン戦車との戦いが圧巻だ。1台の戦車にシャーマン戦車3台が破壊されてしまう。
フューリーはティーガーⅠをギリギリのところで葬る。仲間がいなくなっても任務は遂行しなければならない。目的の交差点に差し掛かったところ地雷によってキャタピラーが壊れ、立ち往生してしまう。
そこに300名のドイツ兵が交差点に向かって行進してくる、果たしてフューリーはどうなるのか。
この映画はブラッド・ピットがもの凄くかっこいい。部下には強い態度で臨むが、心の中はぼろぼろでやっと平常心が保たれている。
新米兵士ノーマンの視点で戦争が語られてゆく・・・・しかし彼は最後まで生き残り、自分の意志とは逆に英雄になる。戦争の残酷さが伝わる秀作だと思う。
詳しいレビューは「フューリー」を見てね。
第7位 ブラックホーク・ダウン
2002年日本公開のアメリカ映画
監督 リドリー・スコット(ブレードランナー、ブラック・レイン、プロメテウス、オデッセイ)
脚本 ケン・ノーラン
原作 マーク・ボウデン
出演 ジョシュ・ハートネット(ブラック・ダリア)
ユアン・マクレガー(スター・ウォーズシリーズ、8月の家族たち)
エリック・バナ(ローン・サバイバー、NY心霊捜査官)
オーランド・ブルーム(ロード・オブ・ザ・リング、ホビット)
トム・ハーディ(インセプション、マッドマックス、裏切りのサーカス、レヴェナント)
何回観てもすごい映画だ、お薦めだ是非観てほしい。
リアリティを追及するためにCG(コンピューターグラフィックス)を多用している。でも映像を見ていると実写とCGはほとんど区別がつかない。ヘリコプターもCGらしい。
1993年に実際に起こったソマリアでの「モガディシュの戦い」が描かれている。ソマリア内戦に超大国の多国籍軍が介入する。
当初は簡単な作戦で、和平に反対するアイディード将軍の副官2名を捕えるため、100名の特殊部隊をソマリアの首都モガディシュに投入した。そして一時間足らずで作戦は完了する予定だった。
ところが2機のヘリコプター ブラックホーク(UH-60)が敵の民兵が放ったロケット弾で撃ち落とされてしまう。
敵の真っただ中に取り残された兵士たちを助け出すために、新鋭部隊が投入されるが、おびただしい数の民兵との市街戦に持ち込まれ、アメリカ軍を中心とする多国籍軍は甚大な損害を出す。
そもそも白昼堂々と市街地の中心にヘリコプターを乗り付けること自体がおかしい。民兵を過小評価し、圧倒的に有利な装備を持つ多国籍軍を過大評価したことが作戦の失敗につながった。
この作品はアカデミー賞に4部門ノミネートされ、2部門賞を獲得している。
詳しいレビューは「ブラックホーク・ダウン」を見てね。
第6位 アメリカン・スナイパー
2015年日本公開のアメリカ映画
監督 クリント・イーストウッド(父親たちの星条旗、硫黄島からの手紙、ジャージー・ボーイズ、ハドソン川の奇跡)
脚本 ジェイソン・ホール
原作 クリス・カイル「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」
出演 ●ブラッドリー・クーパー(ハングオーバー、リミットレス、世界にひとつのプレイブック、二ツ星の料理人)
●ジエナ・ミラー(アルフィー)
この映画は前評判が高かったので、急いで娘を連れて劇場に出かけた。
素晴らしい映画だったが、この映画のモデルになったクリス・カイルは不慮の事故で38歳の若さで亡くなっている。したがってエンドロールは音のないまま画面が流れる・・・重苦しい時間帯だった。
決して後味のいい映画ではない、戦争を賛美しているとも思われない。まあ観る人が判断すればいいと思う。
モデルとなったクリス・カイルは4度のイラク戦争に従軍したネイビー・シールズ最強の狙撃手で公式には160人のイラク兵を射殺している。
彼が部隊の背後から兵士を守ってくれればこんなに心強いことはない。仲間からは「レジェンド」と呼ばれるのもうなずける。
しかし彼は狙撃する相手が敵か味方か判断するのにギリギリまで迷うことがある。さらに敵であれば女・子供も容赦なく撃たなければならない。
彼の心はこの重圧によって少しずつ蝕まれてゆく。そして本国に戻ってからPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩ませられる。
このクリス・カイルを演じるのにブラッドリー・クーパーは重量感のある筋肉デブに変身している。また職業軍人と言っていいほどベテラン兵士になりきっている。
彼の役者魂のすごさを感じる、また高齢のクリント・イーストウッドがこんなにリアリティの高い戦争ドラマを作り上げるなんて、彼のバイタリティーにも感心する。
まあじっくり観てほしい映画だ。
詳しいレビューは「アメリカン・スナイパー」を見てね。
第5位 U・ボート
1982年日本公開の西ドイツ製作潜水艦映画
監督・脚本 ウォルフガング・ペーターゼン(U・ボート、ネバーエンディング・ストーリー、アウトブレイク、トロイ、ポセイドン)
出演 ●ユルゲン・プロホノフ(U・ボート、デューン/砂の惑星、エアフォース・ワン)
●ユルベルト・グレーネマイヤー
名監督ウォルフガング・ペーターゼンが描いた究極のU・ボート(潜水艦)映画だ。とにかく半端ない迫力。実物大の潜水艦内部のレプリカを作って極限状態の船内を撮影した。
「そうりゅう型」海自潜水艦
ドイツの中型潜水艦U96がモデルになっている。日本の潜水艦技術も世界トップレベルだ。「そうりゅう型」が話題になっている。しかし、世界の主流は原子力潜水艦だ。最近の映画「ハンターキラー」を見てみると面白い。
「U・ボート」はドイツ映画でありながら1962年のアカデミー賞でじつに6部門ノミネートされている。この映画をきっかけにウォルフガング・ペーターゼン、ユルゲン・プロホノフなどはハリウッドに進出している。
この映画の時代背景は1941年、ナチス・ドイツの時代になる。一隻のU・ボートが任務を与えられて、大西洋を航行する。目的は連合国の護送船団への攻撃だ。敵船団への魚雷による攻撃によって大きな戦果をあげるものの駆逐艦による爆雷攻撃で撃沈されそうになる。
死との恐怖に乗組員は疲弊し、心身ともに極限に追い込まれる。果たしてこの窮地から逃れ、母国に帰ることは出来るのか・・・。
第4位 地獄の黙示録
1980年日本公開のアメリカ映画
監督 フランシス・フォード・コッポラ(ドラキュラ、ゴッドファーザーシリーズ、カンバセーション)
原作 ジョゼフ・コンラッド「闇の奥」
出演 マーロン・ブランド(波止場、欲望という名の電車)
ロバート・デュヴァル(M★A★S★Hマッシュ、クレイジー・ハート)
マーティン・シーン(ウォール街、ザ・ホワイトハウス)
デニス・ホッパー(イージー・ライダー、ブルーベルベット、スピード)
もう30年以上前の古い映画になってしまったが、いまだに強烈なインパクトが残っている。
戦争映画としては不思議なドラマでサスペンス映画と言ったほうがいいのかも知れない。
戦争に取り付かれた異常で残虐な兵士・指揮官たちが出てくる。
舞台はベトナム戦争の後期、アメリカ陸軍空挺士官のウィラード大尉はある重要人物の殺害を軍上層部から命令される。
彼は部下たちと河川哨戒艇に乗り込み、川を上流に向かってゆく。その途中で色々な出来事に遭遇する。まさにディズニーランドのジャングルクルーズに乗り込んだように行く手には何が出てくるか分からない。
サーフィンをするためにベトコンの基地を襲撃し破壊する陸軍ヘリ部隊の司令官。
ジャングルの兵士の慰労のために突如現れた2名のプレイメイト。ステージに押し寄せた兵士達に恐怖を感じ、女たちは慌ててヘリコプターで非難する。
指揮官抜きで戦い続ける最前線の兵士達、そして麻薬に溺れてゆく哨戒艇の兵士。
ウィラード大尉が殺害を命じられたのは、元グリーベレーのカーツ大佐(マーロン・ブランド)であった。彼は軍の命令を無視してカンボジアのジャングルに独立帝国を築いていた。
ウィラード大尉はカーツ大佐に捕まり監禁されるが、果たして目的を達成することが出来るのか・・・。
この大作には若いころの、ハリソン・フォードやローレンス・フィッシュバーンが出ているから見逃せない。
カーツ大佐は何故軍紀違反を犯してまで独立帝国を築こうとしたのか・・・そして彼を殺しに来たウィラード大尉はカーツの心の奥底に何を見るのか・・・。
第3位 プラトーン
1987年日本公開のアメリカ映画
監督 オリバー・ストーン(ウォール街、7月4日に生まれて、JFK、スノーデン)
脚本 オリバー・ストーン
出演 チャーリー・シーン(メジャーリーグ、アライバル)
ウィレム・デフォー(誰よりも狙われた男、グランド・ブダペスト・ホテル、ジョン・ウィック)
トム・ベレンジャー(戦争の犬たち、山猫は眠らない)
フォレスト・ウィテカー(バンデージ・ポイント、96時間/レクイエム、ローグ・ワン)
ジョニー・デップ(パイレーツ・オブ・カリビアン、トランセンデンス、ナインスゲート、フロム・ヘル、シザーハンズ)
今までの戦争映画は、対岸から眺めているような感じだったが、この映画は自分がまるで戦場に立っているような錯覚を受けるほど臨場感のあるトリ肌(鳥肌が立つほどすごい)映画だ。
実はオリバー・ストーン監督はベトナム帰還兵なんだ、だから自分の実体験をこの映画に全て注ぎ込んでいる。
戦争は実にむごたらしいものであることをさらけ出す。アメリカ兵によるベトナム民間人への虐待のかずかず、そして仲間内での殺人や、麻薬汚染などきりがない。
舞台は1967年の南ベトナム、アメリカ合衆国陸軍に志願してきたクリス・テイラー(チャーリー・シーン)が新兵としてベトナムにやってくる。
ところがこの戦場は自分が予想していたものとは全く違う別世界であることを痛感する。
ここは鬼軍曹のバーンズ(トム・ベレンジャー)とまだ良心が残っているエリアス軍曹(ウィレム・デフォー)とが仕切る、ブラトーン(小隊)であった。
第59回アカデミー賞で作品賞・監督賞など4部門を獲得している。そしてこの映画はアメリカ国内でも、海外でも大ヒットを記録している。
この作品以降 戦争映画の描き方が特にリアルになったように思う。
フォレスト・ウィテカー
スターになる前のジョニー・デップが端役で出ている、さらにフォレスト・ウィテカーも若い・・・よく見ておいてね。
第2位 ハクソー・リッジ
2017年6月日本公開アメリカ戦争映画
監督 メル・ギブソン(監督作品:ブレイブハート、パッション、ハクソー・リッジ)
出演 ●アンドリュー・ガーフィールド(ソーシャル・ネットワーク、アメイジング・スパイダーマン、沈黙-サイレンス-、ハクソー・リッジ)
●ヴィンス・ヴォーン(ザ・セル、ハクソー・リッジ)
●サム・ワーシントン(ターミネーター4、アバター、タイタンの戦い、ハクソー・リッジ、エベレスト3D)
●ヒューゴ・ウィーヴィング(マトリックスシリーズ、ロード・オブ・ザ・リングシリーズ、ホビットシリーズ、クラウド アトラス、ハクソー・リッジ)
●テリーサ・パーマー(魔法使いの弟子、ハクソー・リッジ)
映画を観に行ったけど、涙が止まらなかった。お薦めと言うより、残酷な場面が多いけど見るべき作品だと思う。沖縄戦が舞台となっている。1945年5月のことで僕が生まれるかなり昔の出来事だ。
「ハクソー・リッジ」とはノコギリ(ハクソー)で垂直に切断したような崖(リッジ)のことだ。150mの絶壁を登るとそこで待ち受ける日本兵との壮絶な戦いが待っている。
日本名は前田高地、首里に向かって進軍するアメリカ軍をここで迎え討った。アメリカ軍の先発隊は6回崖を登って攻撃したが、全部撃退され、総崩れとなった・・・日本も死に物狂いだ。
そこに映画の主人公デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)が属する第77師団が後を受け継ぐことになる。
「ハクソー・リッジ」は血で血を洗う白兵戦(銃、銃剣、手りゅう弾、ナイフによる接近肉弾戦)で両軍とも大きな損害を出している。
デズモンドは衛生兵としてこんな激戦地で武器を持たず、負傷兵を次から次へと救出する。助からないと思われるような重傷兵や日本兵までも含まれていた。
彼は敵弾をかいくぐりながら75名もの負傷兵を救出している。この行いには驚嘆するし、「私は人を殺さない、人を助ける」との信念には頭が下がる。
彼は銃弾の雨の中をただ一人走り回るが、弾が当たらずに生還できたのは、何か超自然的な力(神か)が働いたのかもしれない。そんなデズモンドも最後には負傷してしまう。
彼は5月21日に戦場を去り、日本は8月15日の終戦を迎える。そしてデズモンドは10月12日にトルーマン大統領から「良心的兵役拒否者」として初めて名誉勲章を授与される。
彼の物語を通して、戦争とは何なのか、どうして人は人を殺さなければならないのかと素朴な疑問がわき起こってくる。まれにみる傑作だ・・・是非映画館へ足を運んでほしい。
詳しいレビューは「ハクソー・リッジ」を見てね。
第1位 プライベート・ライアン
1998年日本公開のアメリカ映画
監督 スティーヴン・スピルバーグ(マイノリティ・リポート、ジュラシック・パーク、ブリッジ・オブ・スパイ)
脚本 ロバート・ロダット
出演 ●トム・ハンクス(ダ・ヴィンチ・コード、インフェルノ、クラウドアトラス、ハドソン川の奇跡)
エドワード・バーンズ
●マット・デイモン(グッド・ウィル・ハンティング、インターステラー、オデッセイ、ジェイソン・ボーン)
この映画はけっこうグロい場面が多く、スティーヴン・スピルバーグ監督がリアルなシーンを追及した結果だと思う。特にノルマンディー上陸作戦では海辺で多数の兵士が撃ち殺され海が血で染まるシーンが生々しい。
普通のアットホームなスピルバーグ映画だと思って観ると、びっくりする。
さらにリアルさを求めたため主演のトム・ハンクスらは相当にきつい軍隊同様の訓練を受けさせられたエピソードが残っている。
このリアルさが受けたのか、この映画は世界中で大ヒットし、戦争映画の興行収入記録を塗り替えている。
ストーリーは一言で言うと、ライアン二等兵(マット・デイモン)の救出劇になる。
軍隊には、よく知らなかったがソウル・サバイバー・ポリシーと言うルールがあって、軍隊に所属している兄弟を全員 戦死させてはいけない決まりになっている。
ライアン二等兵の兄3人が戦死したため、彼を無事に祖国に送り届けるのが、ミラー大尉(トム・ハンクス)の使命になる。
彼は苦労してライアン二等兵を探し出し、本部に帰還しようとするのだが、その途中で・・・敵の軍隊に遭遇する。
ライアン二等兵を救出するために多くの兵士が犠牲になるのはおかしいと感じるが、軍隊とは融通のきかない組織なんだと思う。
アカデミー賞11部門にノミネートされ、監督賞をはじめ5部門で受賞している。
まだ見てない人は一見の価値がある是非お薦めだ。あのヴィン・ディーゼルも出ているから見逃せないね。
まとめ
「ディア・ハンター」
戦争映画ベストテンをまとめてみた。過去の戦争映画は戦争を美化したり、英雄視したりするものが少なくなかったように思う。
ところが最近の風潮は戦争のリアリズムを前面に押し出し、視聴者に戦争とは何かを判断させるような映画が増えてきた。
戦争とはかっこいいものではなくて、勝者もいないことがよく分かる。いまだに世界各地で紛争が起こっているけど、いつまでたっても戦争は無くならないのかな、と考えさせられる。
今回、「ディアハンター」とか「ハンバーガー・ヒル」「硫黄島からの手紙」「ウインドトーカーズ」とか載せてない名作はまだまだ多い。またの機会に第二弾をまとめてみたい・・・・と思うけど、いつのことになるやら。
ああ、そうそう近日公開の「ハクソー・リッジ」も見てきたからね。「ハイドリヒを撃て」は無茶苦茶、残酷な映画だ。落ち込んでいる時にはパスだね。
TATSUTATSU
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