戦争映画

映画「アメリカン・スナイパー」感想・評価:ブラッドリー・クーパーが映画の為に肉体改造した、凄すぎる

サマリー


映画『アメリカン・スナイパー』予告編

2015年公開のアメリカ戦争映画、監督はクリント・イーストウッド、主演はブラッドリー・クーパーである。原作は4度イラク戦争に従軍した実在の狙撃手クリス・カイルの伝記「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」である。

アカデミー賞には6部門がノミネートされ、アメリカでは空前の大ヒットで「プライベート・ライアン」を追い抜いて、戦争映画史上最高の興行収入となっている。

クリス・カイルは38才の若さで亡くなっているが「史上最高の狙撃手」「レジェンド」と味方からは尊敬される元軍人であり、敵からは「ラマディの悪魔」と恐れられた。(彼は予想もつかない死に方をする。彼が存命していたら、映画にもゲスト出演したかもしれない。)

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ブラッドリー・クーパー

昨日映画館で娘と一緒に観てきた、あの細身でハンサムなブラッドリー・クーパーが胸板の厚い筋肉大男に変身している、ビックリである。・・・・(食事とトレーニングで肉体改造したとのことである。)

ブラッドリー・クーパーは映画「ハングオーバー」でブレイクし、「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」そして今回の映画と3年連続でアカデミー賞にノミネートされている、今乗りに乗った俳優である。

僕の好きなSF映画「リミットレス」にも出演している。最新作「二ツ星の料理人」も参考にしてね。

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クリス・カイルと妻のタヤ・カイル

しかも、職業軍人と言っていいほどベテラン兵士になりきっている・・・・・役者魂が半端ではないことが感じとれる。

また、戦場における臨場感が素晴らしく、実際に従軍した人々からの意見や、クリス・カイルの資料・ビデオ等を参考にして、徹底的にリアリティーを追求している。

映像・音・兵士の息遣い・緊張・恐れ・震え・・・・・がビンビン伝わってくる・・・・僕の大好きな「ブラック・ホーク・ダウン」にも劣らない一級品の映画である。

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84才のクリント・イートスウッドがよくここまで、こんなタフな映画を仕上げたものだと感心する。

この物語は4度におけるイラク戦場とクリス・カイルの家庭生活とが代わる代わる入れ替わる、戦争の極限の世界と家庭のはざまで彼の心は少しずつ壊れてゆく。

戦場では、女も子供も敵であれば殺さなければならない。また彼は狙撃手として最前線の兵士を背後や横からの敵の攻撃から守らなければならない。・・・・彼が「レジェンド」と仲間から信頼・尊敬される所以である。

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彼は父から人間は3種類の生き方がある、それは「羊・狼・番犬」だ、弱い羊になるな、羊を襲う狼にもなるな、羊を守る番犬になれと常々言われる。

9.11(アメリカ同時多発テロ事件)を契機に弟とともに海軍に志願する。国のために戦ってきたが、狙撃兵として公式には160人(非公式255人)の人命を奪ってきた。

国や戦友のためにやってきた人殺しが本当に正しかったのか、彼はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされる。

映画を観終わった後、決して晴れ晴れとした感じがしなかった。彼も結局戦争の犠牲者なのか・・・大変心に重苦しく残る映画だった。

ネタバレと解説

クリス・カイルは戦いのさ中、衛星携帯電話で妻のタヤ(シエナ・ミラー)と話をする。彼の様な強靭な男であっても戦いのさ中では非常にナイーブになる、そして心のよりどころはタヤであることが分かる。

電話の途中、大爆発音で会話が中断する、タヤは生きた心地がしないと思う・・・・・戦場と家庭は遠く離れているようで、実は身近につながっている。

彼の最初の仕事は、女と子供を射殺することであった、彼らは戦車用の手りゅう弾を持って、戦車に向かう・・・・彼のおかげで多くの兵士が助かるが、クリスの心には大きな傷を残す。

彼が狙撃によって人を殺すのは、あくまで自分の判断で、狙撃が正しいのか・・・・あるいは判断違いなのかギリギリまで分らないケースがある。(民間人と兵士との区別がつかない場合がある。)

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イラクテロ組織の残虐な男が出てくる、彼は密告した男の子供を電気ドリルで体に次から次へと穴をあけ殺害する。イスラム国の残虐行為とダブル・・・・・・この映画が大ヒットしたのは、現在の時流に乗っているからだと思う。

また、クリスのライバルで元オリンピック射撃選手の「ムスタファ」(サミー・シーク)が彼の前に立ちはだかる。そして何人もの戦友が犠牲になる。

最後にクリスは、ムスタファの狙撃に成功し彼を殺す、しかし彼にも妻子がいることを映画はさりげなく表現する。戦争には決して勝者はいないのである。

この映画は社会現象になっている、戦争を賛美した映画だと批判する人もいれば、れっきとした反戦映画だと論じる人もいる。

観た人間が判断すればいいと思う、僕にはとても戦争を肯定し、賛美している映画には見えなかった。

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最後にクリス自身も戦争によって精神を病み、軍を引退後の日常生活にも支障がでる。彼は傷痍軍人たちとの交流をボランティアとして行い、少しずつ人間性を取り戻してゆく。

彼には二人の子供がいる、そしていい父になるべく努力をしてゆくが・・・・・皮肉なことにボランティア先でPTSDを患った元海兵隊員ルースによって射殺される。

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彼はアメリカにおける英雄として、本当の「レジェンド」になる。・・・・・しかし残された家族はどう考えているのであろうか。

映画が終わった後のエンドロールには何も音が入っていない・・・・・画面にスタッフの名前が続くばかりの沈黙の時間であった。

観終わって・・・・どっと疲れた感じだね・・・・コーヒーでも飲んで気分転換しないとやりきれない。

TATSUTATSU

 

 

アメリカン・スナイパー (ハヤカワ文庫 NF 427)

クリス・カイル
早川書房
2015-02-20

 

ネイビー・シールズ最強の狙撃手

 

クリス カイル
原書房

2012-04

 

ブラッドリー・クーパー
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2015-07-08

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