サマリー
2016年日本公開のアメリカ アクションサスペンス映画
監督 ドゥニ・ヴィルヌーグ(灼熱の魂、複製された男、プリズナーズ、ブレードランナー2049、メッセージ)
出演者 ●エミリー・ブラント(プラダを着た悪魔、オール・ユー・ニード・イズ・キル、ガール・オン・ザ・トレイン、ボーダーライン、クワイエット・プレイス)
●ベニチオ・デル・トロ(トラフィック、21グラム、チェ)
●ジョッシュ・ブローリン(ミミック、ノーカントリー、エベレスト3D)
原題の「Sicario」とはスペイン語で「殺し屋」と言う意味だ。
まさに「殺し屋」同士がぶつかり合う生々しいドキュメンタリーのようなドラマだ。
悪を使って巨悪を倒す・・・善悪の境界線はどこにあるんだろうか?(最近この映画の続編「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」が公開されている。)
善・悪は完全には割り切れない、警察官であっても敵に内通する。悪人であってもアメリカ国防省や・FBIと手を組む・・・現実はほとんどが灰色かもしれない。
主人公のケイト(エミリー・ブラント)は善を貫こうとするがきれいごとだけでは犯罪は無くならないことを思い知らされる。
先の読めない巧みなプロットとテンポのいい進行、激しい銃撃戦とリアルな現場・・・アメリカと麻薬カルテル(メキシコ)との闘いが描かれている。
けっこう残酷な映画だ、バイオレンス・アクション系が好きな人にはお薦めだ。
FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は国防総省のマット(ジョッシュ・ブローリン)率いるチームに加わる。
アリゾナ州チャンドラー誘拐殺人事件の主犯と思われるマニュエル・ディアスを捕まえることが当面の目的だ。
マットのチームにコロンビア人らしい不気味な男アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が同行する。彼は何が目的なのか語らない。
マット達はマニュエル・ディアスの弟ギレルモを受け取りにメキシコの無法地帯シウダー・フアレス市の刑務所に向かう。
ギレルモを受け取ったマット達はメキシコの国境付近で車の渋滞に巻き込まれ身動きがとれない。そこにディアスの部下たちが迫ってくる。それを察知した特殊部隊は、彼らを皆殺しにする。
その光景を目の当たりにしたケイトはこんな超法規的な活動が許されるのかと愕然とする。
アレハンドロはアメリカに連れてこられたギレルモを水攻めで拷問し、マニュエル・ディアスの居場所を聞き出す。
ここでマットとアレハンドロの真の目的が明らかにされる。その目的とは一体何か、そしてアレハンドロの正体は・・・。
ネタバレとレビュー
マットとアレハンドロの真の狙いは、マニュエル・ディアスではなく彼を操っている麻薬王ファウスト・アラルコンの殺害である。ケイトはこのことを知って驚く。
彼らはケイトをおとりにして汚職警官を捕まえ、そいつから仲間の汚職警官たちの情報を聞き出す。
さらにマットのチームは衛星写真からメキシコ・アメリカ国境沿いの麻薬の密輸トンネルを割り出す。
そしてそのトンネルに特殊部隊を送り込み、ディアスに大打撃を与えることを画策・実行する。
トンネル内での銃撃戦でのさ中、アレハンドロは単独行動を取る。
麻薬の積み下ろしをしているディアスの手下、シルヴィオ(メキシコの汚職警察官)を確保したアレハンドロはディアスの後を追えと拳銃を突きつける。
そこにケイトが現われ、アレハンドロに銃を向け行き過ぎた行動を止めようとする。ところが彼に防弾ベストを撃たれ彼女は倒れる。
アレハンドロはシルヴィオに運転させ、暗闇に消えてゆく。
彼らはディアスの車に追いつき彼を拘束する。そしてアレハンドロは銃をディアスに突き付け、標的の麻薬王ファウスト・アラルコンの邸宅に誘導させる。
彼はアラルコンの邸宅でディアスを殺害、屋敷の護衛たちも打ち殺し、食事中のアラルコンと家族の前に現れる。
アレハンドロはコロンビア政府の元検事であり、妻子をアラルコンに惨殺されていた。
アレハンドロはアラルコンとその家族を打ち殺し、かたきを取る。
ある日アレハンドロはケイトの部屋に現れ、彼女に銃を突きつけて書類にサインしろと迫る。
彼女は「今までの捜査はFBI監視の元、合法的に行われた」と書かれている書類にサインせざるを得なかった。
マットの作戦は上層部の承認を得て、アレハンドロを使ってメキシコ麻薬カルテルを壊滅させることであった。
そしてアメリカ国内はコロンビアの麻薬カルテルに昔通り、支配させるように仕組んでいた。
麻薬カルテルをアメリカ国内から排除することが出来ないなら、メキシコ麻薬カルテルよりコントロールし易い、コロンビアを選んだわけだ。
まさに、悪を使って悪を倒す作戦だ・・・しかしメキシコ麻薬カルテルがコロンビアのカルテルに置き換わるだけで根本的な解決には至っていない。
それほど麻薬戦争はいつまでたっても無くならない根深い問題なのか・・・。
超法規的な捜査が行われてしまうところなんてアメリカらしいね・・・どうなんだろう、実際にこんなことが闇で行われているのかな?。
エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョッシュ・ブローリンの3人ともいい味出してるね、結末がややすっきりしすぎているが、まあまあな作品に仕上がっているのは監督の手腕かな。
TATSUTATSU
どの感想文を見ても「コロンビア人のアレハンドロ」と書いてあるが、作品中ではコロンビア人であるとは一度も明言されていない。「ここの前はカルタヘナにいた(コロンビアのために働いていた)」と言っているだけだ。
その前には「私はメキシコのために働く検察官だった」と明言している。外国人がメキシコで検察官になるのは不自然だし、彼はもともとメキシコ人だった、ととるのが正着だろう。
「コロンビア人のアレハンドロ」というのは日本の映画輸入業者のミスであろうと思われる。
たぬきさんへ
貴重なコメント有難うございます。僕はどうしても日本語訳を信用してしまいます。映画の翻訳もミスがあるかもしれません。古い映画の日本語訳はその時代背景によって意訳される場合がけっこうあります。古い映画を新しいバージョンのDVDで観たとき、かなり違うことにびっくりします。翻訳者は見てる人間に分かり易いように忖度したかもしれません。
辰々