サマリー
2017年5月19日 日本公開のアメリカ製作 宇宙人コンタクトSF映画
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ(灼熱の魂、プリズナーズ、複製された男、ボーダーライン、メッセージ、ブレードランナー2049)
原作 テッド・チャン「あなたの人生の物語」
出演 ●エイミー・アダムス(ジュリー&ジュリア、her/世界でひとつの彼女、ビッグ・アイズ、バットマンvsスーパーマン、メッセージ)
●ジェレミー・レナー(ハート・ロッカー、ミッション:インポッシブルシリーズ、アベンジャーズシリーズ、メッセージ)
●フォレスト・ウィテカー(プラトーン、大統領の執事の涙、ケープタウン、96時間/レクイエム、ローグ・ワン、メッセージ)
原題の「Arrival」とは「到着すること」又は「出現」なんだけど邦題では「メッセージ」になっている。邦題の方が分かり易いね。宇宙人たちはいったい何の目的で地球に来たのか?宇宙人とのコミュニケーションは出来るのか?がこの映画のテーマだ。
本日観に行ってきました。なかなか難解なストーリーで何回か見ないと分からないかも知れない。分からないなりに解説してみるけど間違っていたらごめんなさい。
僕にとってはもの凄く面白い映画だった。従来の地球外生命体との接触映画とは一味違う。ヒロインの言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)が試行錯誤しながらエイリアンとの意思の疎通を図って行く。
彼らは7本足のタコのような生物(ヘプタポッドと呼ばれる)だ、人間の前に2体(アボットとコステロとニックネームをつける)現われ何かを伝えようとする。
音も出すがガラスのような壁面に墨のような物体を二本の触手のような脚から吐き出す。そして円のような表意文字(日本や中国の漢字のように意味を表す文字)を描く・・・何を意味するのか。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は「言語によって生き方や世界観が決定づけられるという”サピア=ウォーフの仮設”」の通り、彼らとの接触によってルイーズは自分が徐々に変わって行くのを感じる。
彼らの時間の概念は人類とは異なる、彼らは過去も現在も未来も区別がない。丸い円のように時間が繋がっている。ルイーズは自分と娘の未来の映像が見えるようになってくる・・・まだ結婚もしていないのに。そして宇宙人が来ることも知っていた。
いったい彼らは何のために地球に来たのか、地球を征服するためかそれとも人類と友好関係を結ぼうとしているのか・・・。彼らは交渉相手に何故ルイーズを選んだのか。
地球に12個の物体が突如現れる。アメリカのモンタナ、中国の上海、ロシアのシベリア、パキスタン、グリーンランド・・・日本の北海道(原作では112個)。この物体は長細い卵を縦に切ったような形だ、長さは450mもある。
地面や海面すれすれに浮遊している。下部の扉は18時間ごとに開閉し中に入ることが出来る。中は空洞の道が上の方まで続き重力がコントロールされていることから壁を歩いて中心付近まで行ける。
中心付近ではガラスらしき仕切りの向こうにヘプタポッドたちがいる。彼らを見て精神に異常をきたすメンバーも発生する。ルイーズも彼らとの接触において指の震えが止まらない。
ルイーズと数学者のイアン(ジェレミー・レナー)は長い間かかって彼らの文字を解読するが、彼らの言う「武器を与える、或いは道具を与える」とは・・・どういう意味なんだろう。
彼らの出現によって株価は暴落、世界中の人々をパニックに陥れ、自殺者も多数出てくる。しびれを切らした中国が核攻撃を始めようとする。果たしてエイリアンとの戦争になってしまうのか・・・?
原作との違い
原作ではエイリアンと人類の接触は高さ3m幅6mのルッキンググラスと呼ばれる半円形状の双方向受像機なんだ。エイリアン(ヘプタポッド)は直接 人類とは接触せず、惑星軌道上からルッキンググラスを介してコンタクトを取る。
映画ではコンタクトがドラマチックに描かれるが、原作では地味な扱いだ。言語学者ルイーズと物理学者ゲーリーがヘプタポッドと接触し、彼らの言語・書体を解析してゆく。
ルッキンググラスは世界で112個もあり、アメリカ内に9個ある。ヘプタポッド達は「はためき」と呼ばれる「ずぶ濡れになった犬が身震いする音」で会話する。また、表義文字的な書体でも意思の疎通を行う・・・ここのところは映画と同じか。
人類はヘプタポッドから新しいテクノロジー(低温核融合、新素材、重力のコントロール、光航法、ワープ航法など)を知りたいと考えたが、彼らは新しい技術は一切残してくれなかった。ルッキンググラス(地球に置いてゆく)でさえもありきたりの石英ガラスだったんだ。
ヘプタポッドは人類とコンタクトし、その後何も言わずに宇宙に消えてゆく・・・人類の文明・テクノロジーレベルを瀬踏みしただけなのか?
確かに文明人が原始人と接触するのに、相手に「拳銃」など渡したりしない、そんなことをしたら文明人が撃たれて殺されてしまう。
ヘプタポッドは人類を長い間 観察していたようだ。用が無くなれば次は別の星に行ったとしてもおかしくない。文明の低い生物を相手にしても自分たちにメリットが無いからね。
しかし、ルイーズはヘプタポッドとコンタクトを取ることによって未来が見えるようになる。高度な文明に接触すれば、人間は新しい考え方と能力が得られるようだ・・・この点は原作も映画も同じだ。
ストーリー
言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)は自分の娘ハンナのことを思う。彼女は生まれ、赤ちゃんから少女になって、そしてさらに大人の女性になるが病気で死んでしまう・・・まだ生まれてもいないのに。
ルイーズは大学の講義中に大変な事件が起きたことを知る・・・でも彼女はもう既に知っていたようだ。世界中に謎の物体が現われる。
ある日彼女のもとにアメリカ軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)が来る。彼女は過去 言語学者として軍に協力した実績が買われたようだ。
大佐は録音機を取り出しエイリアンの唸り声とも思える音声を彼女に聞かせる。彼女はそれについての感想を述べるが、大佐はすぐに立ち去る。
暫くして、彼女の家の近くにヘリコプターが着陸し彼女を乗せて現場へと向かう。彼女の前には数学者のイアン(ジェレミー・レナー)が同乗していた。
行先はモンタナの広い平原だ、空には巨大な半円形の物体が地面すれすれに浮遊していた。物体の高さは450mもあるらしい、材質はプラスチックとも金属とも違う未知の物質で出来ているらしい。
ルイーズ博士とイアン博士は巨大な物体の近くに設営された軍のテント村の中で感染症予防の注射を受け、防護服に身を包んで、巨大な物体の下部に開いた穴から中に侵入する。
中は垂直のトンネルになっており重力がコントロールされているのか、壁を歩くことが出来る。暫く歩くと長方形の大きなガラス窓に行き当たる。そこに機材を並べしばらくすると霧のようなガスの中からエイリアンらしき物体が2体現われる。ルイーズは体の震えが止まらない。
彼女は防御服から叫ぶが応答がない。このようなコンタクト繰り返したのち、彼女は白板を使った文字によるコンタクトを試してみる。
この方法は効果的でエイリアンたちは、何らかの表意文字を墨のような物質でガラスのような壁に描く。彼女は周りの制止をを振り切り、防御服を脱いで生身の体で彼らとのコンタクトを始める。
これによって次から次へと表意文字におけるコンタクトが始まる。しかし彼らの言語を解読するのはかなりの時間を要する。
これらの表意文字を何か月もかかって解読する。彼女の結論つまり彼らの目的は人類に「武器を与える」と言うものであった。彼女は「武器」のところを「道具」と言えなくもないことに悩む。
そのうちしびれを切らした中国が核攻撃を始めようと大規模な海軍を物体が浮遊する海域に派遣する。指揮官はシャン将軍(ツィ・マー)で彼の考えを変えることは誰にも出来ないだろう。
さらに軍の反乱分子が仕掛けた爆弾の破裂によって物体の内部にいた、ルイーズ博士とイアン博士が吹き飛ばされてしまう。果たして彼らは死んでしまうのか、そして中国の核攻撃は始まるのか。
ネタバレとレビュー
爆風で吹き飛ばされたルイーズとイアンは奇跡的に助かった。彼女はエイリアンが重力をコントロールして助けてくれたと思っている。
ルイーズは一人、物体に近づく、その時物体から小型の乗り物と思われる飛行艇が彼女を乗せて物体の中に消えてゆく。
物体の中で彼女は直接エイリアンと接触する。彼らの内1体は爆弾によって既に死にゆく運命であった。自分たちを守らないでルイーズ達を助けたようだ。そこまでして彼女に伝えたかった事とは・・・。
エイリアンの言葉が直接ルイーズの頭に響く、彼が言うには「地球は3000年後もここに存在する」そして地球人に将来助けてもらうためにここに来た。「言葉を与える」(武器を与えるのではなく、言葉を与えるだったのだ)とおびただしい表意文字を残したようだ、長い年月かかってでもこれを解読しろと言う事か・・・。
彼女は地上に戻ってきたが放心状態だ。彼女はハルペーン捜査官(マイケル・スタールバーグ)の衛星電話を盗むと、シャン将軍に直接電話をかけ中国語で核攻撃を思いとどまるよう「ある言葉」を使って説得する。
物体への核攻撃は寸でのところで回避され、世界中が再び結束する。そして各地に送られたエイリアンからの膨大なメッセージの解読が始まる。物体は透明になって空に消えてゆく。
ルイーズとイアンは抱き合う、彼は彼女に「子供を作ろう」と言う。ルイーズの別れた夫はイアンだったのだ。彼女は彼に「作った子供は死んでしまう」と言い、そのためイアンはルイーズから別れて行ってしまった過去がある。でも将来死んでしまうかも知れないハンナを産もうと二人で決心する。
暫くして、アメリカ大統領のレセプションで、ルイーズはシャン将軍に会う。彼はこっそりとルイーズに「今日は大統領に会いに来たのではなく、あなたに会いに来た」と言う。彼が核攻撃を思い止まったのは「戦争は勝者ではなく未亡人を生むだけ」とルイーズに言われたからだ。この言葉はシャン将軍の妻の死の最後の言葉だったのだ・・・。
総合すると、タコ型エイリアンが地球に来たのは、将来自分たちを地球人に救ってもらおうと考えたようだ。彼らは3000年後に滅びる運命にあるのか・・・。地球人に自分たちの「言葉」と「進んだ文明」を与えたのか。
3000年もあれば彼らの言葉が解読でき、人類も優れたテクノロジーで進化しているはずだと考えたんだろう。ところでルイーズはエイリアンと接触することで未来が見えるようになったようだ。彼女は過去・現在・未来を直線ではなく、ループのような形で理解したのかな?
彼女は時間軸がランダムに理解できるようになったことから、彼らエイリアンが来ることも知っていたし、彼らの「言語」をまとめた本も作ることも知っていた。それに自分の娘の死も知っていた。と思うけどどうだろーか、なんか複雑で頭がこんがらがっちゃう。
まあ色々な考え方があると思うけど、正解は無いのかもしれない。そうそう原作では物体(ルッキンググラス)は小さくて石英ガラスで作られた単なる受像機の役目しかない。本体は別のところにあるようだ。原作は地味な展開だけど、これはこれでなかなか面白い。
ところで、エイリアン達は3000年後にまた地球に来るのかな、果たして人類は3000年後も生き残っているのか?今、世界を見渡すと戦争や紛争ばかりだ、とても人類は3000年持たない・・・せいぜい数百年かもしれない。
追伸:ルイーズがウェバー大佐に、バークレーのダンヴァース教授に会ったら「サンスクリット語で戦争を示す単語と語源を聞いてほしい」と頼む。しばらくしてウェバー大佐がヘリでやってきて「ギャヴィスティ」語源は「討論」と答える。しかし、ルイーズは「牛を要求」よと訂正する。・・・・この部分が何を意味するのかよく分からない。
結局、ルイーズはエイリアンが地球に来ることもウェバー大佐が自分に頼みに来ることも、全て知っていたことになる。最初見たとき、何のことかさっぱり分からなかった。
TATSUTATSU
「映画に見るフェルミのパラドックスとは:宇宙人は本当にいるのか、何故姿を現さないのか」
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