ミステリー小説

ミステリー小説「多次元世界への旅」どのような世界なのかそして行くことが出来るのか

ストーリー

 

 


日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

 

 

次元の話をしよう。ご存じの通り、1次元は「点か線」、2次元は「平面」となる。では3次元の世界は「立体」であるがこれに時間軸を付与すると4次元の世界となる。一般的には我々は「4次元」の世界に住んでいると言われている・・・諸説あるが。では、多次元の世界とはいったいどんな世界だろうか、そして我々はそこに行けるだろうか。

ある夢を見た。僕たちは1人の女性を守って迷路の中を進んでゆく。男は僕を含めて十数人ほどいる。急いで迷路を進むが、鬼が追っかけてきて女性が奪われてしまう。何回トライしても同じような結末だ。

それであれば、迷路の袋小路に陣取ってわれら男で女性を守ってみたが、鬼に蹴散らされ、彼女は奪われてしまう。とにかく迷路から出るにはスピードが重要だ。

次の作戦として、迷路を我々男たちが先に走り回って、正解な道を見つけ、とにかく急いで迷路から外に出る策に打って出た。迷路の入り口が見えた時、あと一歩と言うところで鬼に追いつかれてしまった。

色々策を練ったが、僕が彼女の身代わりになり、最大のスピードで迷路を駆け抜けることに賭けた。鬼が近づいてきた場合僕の方が足が速いからだ。彼女と衣服を交換し、顔を隠すために帽子をかぶった。もちろん、多くの男が迷路を手分けして走り回り、正解の道を探してゆく。

この策が当たった。我々は迷路を突破することが出来た。ところが、迷路から外に出たが鬼は僕を追っかけて来る・・・おかしい、パズルが解けたはずなのに。つかまりそうになった瞬間、僕は誰かに引っ張られるようにジャンプした。空間に飛び出せたのだ。そして僕の手を引っ張り上げてくれたのは、僕らが守ってきたあの彼女だった。

僕は3次元空間から下をみた。そこには、右往左往する鬼が見えた。我々がいた世界は「2次元の平面世界」だった。3次元の世界から2次元の世界は見えるが逆は出来ない。彼女の優しい顔は見覚えがあるが誰だか思い出せない。

彼女は僕を見て微笑み「もっと上(高次元)へ行こう」と手に力を入れる。そして4次元の世界は多くの時間軸が存在して、それぞれに僕がいる。5次元の世界から先は肉体を連れてゆけない。ここからは「精神世界(魂)」となるのだ。

彼女が僕を引っ張ると、僕の肉体から精神(魂)が分離され、空間を漂う。下を見ると僕の体が抜け殻のようになって床に寝そべっている。

僕は彼女に引っ張られるままに、高次元の世界を漂う。高次元の世界は実に美しい。オーロラのような場所があればプリズムを通した虹色の光が目の前に現れる。さらに万華鏡のようにキラキラとした世界が次々と展開する。

例えるなら光速新幹線の窓際の席に座って、そこから次々と変化する極彩色の光の世界を浴びるような感触だ。彼女はとめどもなく高次元へ僕を誘う。この世界では彼女だけが人間として感知できる。でも彼女にしたって肉体ではなく精神(魂)であると言うことだ。

何処までの高次元に上り詰めただろうか、目の前が急に明るくなり、ハッとして目覚めた。自分の体があるのにホッとした。なんて不思議な夢を見たものだ。

現実に引き戻された僕は味気ない日常をおくっている。朝6時に起き、8時の電車に乗る。そして9時に事務所につく。機械的に仕事をこなし、定時に家に帰る。こんな生活をあと何十年も続けると思うとゾッとした。

ある日、同じように電車に乗っていると、僕を見つめる女性がいた。夢に出てきた彼女だ・・・。彼女が次の駅で降りる。僕は急いで後を追う。彼女は素知らぬ顔で改札を出てゆく。

僕は改札の手前で我に返った。改札を出て彼女についてゆけば、もう元の自分には戻れないと感じたからだ。ホームに戻って次に来た電車に飛び乗る。所詮、僕は冒険の出来ない男だ。単調な毎日が続く。

何日かして僕は後悔した。あのまま、彼女について行ってもよかった。もしかして彼女は僕を不思議な世界に連れて行ってくれる・・・その方が良かったのだ。

それから数年たつが彼女を見かけることは無かった。チャンスは一度だけかもしれない。それを逃した僕は不幸なのか。それとも・・・・。

 

TATSUTATSU

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