ストーリー
動画をどうぞ。
もし、自分の脳が常時100%以上の働きをしたらどうなるか・・・?。12時間あるいは24時間 限定でもいい、その間は一瞬、天才になれる。世の中には「スマートドラッグ」という薬が実際に販売されている。(映画「リミットレス」のスマートドラッグは本当に頭が良くなるのか)参照。
この薬は「脳の血流を増やす」「神経伝達物質を増やす」「神経の成長促進」「脳に栄養や酸素を送る」などさまざまな働きがある。こんなテーマを描いた「リミットレス」という映画がある。ある人から一錠10万円もする薬をもらう。この薬を服用すると脳を100%覚醒させる。24時間ではあるが天才になってしまう。
これによって一晩でベストセラー本がかけてしまう。また、数字がどんどん頭に入ってくるから株などへの投資も抜群な成績を収める。これが継続できれば大金持ちも夢ではない。
ところがこんな出来事が本当になった。僕のこのスマートドラッグに絡んだ体験を紹介しよう。くれぐれも新薬の服用には気を付けてほしい・・・教訓だ。
僕は目が覚めると病院のベッドで寝ていた。左腕が骨折しているそうだ。どうもアパートの4Fから飛び降りたらしい。たまたま落ちたところに工事用の砂とジャリが積んであり大事には至らなかった。
実はひと月前、僕は脳出血で倒れた。幸い症状は軽く後遺症もほとんどなく暫く病院で安静にしていた。そんな時に脳血管障害の専門医A先生が訪ねてきた。
僕の脳の血管は若いにもかかわらず痛んでいるらしい。A先生は脳血管を丈夫にし、脳出血を起こさないための薬を開発している。僕に薬の被験者になってほしいとのことである。つまり「臨床試験」のことだ。
薬「TTZ-46」は僕のような若い人間からお年寄りまで効果を発揮する。脳の血流を増やし、血管に栄養を送り、血管壁の細胞を強固にする働きがある。この薬が実用化されれば、脳溢血などの患者を減らすことが出来る。僕は即座に了承した。
「TTZ-46」を服用し始めて一週間経った頃、僕に劇的な変化が起こり始める。とにかく頭が冴えわたるのだ。目から入ってくる情報がきちんと脳内に整理整頓される。
実は僕は「弁護士」を目指している。実際「弁護士」になるには医者よりも狭き門と言われている。何回か司法試験を受けているがなかなか合格しない。
僕はもう一度専門書を読み直した。ところがこれらの本の内容が瞬時に自分の頭の中に入ってくる。分厚い「六法全書」の各ページは全て僕の記憶の中だ。何ページの何処に何が書かれてあるかはっきりとわかる。
まるで本のページをスマホで写真を撮るように頭に入ってくる。205ページの右下に書いた落書きでさえ思い出せる。これが「天才」というものなのか! 体感した。
おかげさまで司法試験に合格した。多分トップだと思う。その後、研修を受けるところまで順調に進んだ。これが終われば正式に弁護士になれるのだ。
ただ、この薬を服用してから・・・アルコールを飲んでも全く酔わない。頭が冴え過ぎて眠れない日がしばしばあった・・・。
これは「TTZ-46」の副作用なのか、でも大したことは無いと考えていたのだ・・・あの事故が起こるまでは。そして冒頭で述べたように事故が起きた。自分でもキツネにつままれたようだ・・・自分がアパートから飛び降りるなんて。
A先生が僕の病室へ飛んできた・・・かなり青白い顔をしていた。そして先生は次の話を聴かしてくれた。これはあくまで私(A先生)の推測だ。
「TTZ-46」開発の初期の段階でマウスの実験を色々と行っている。その中でマウスの脳への影響を調べるため、迷路の実験も行っている。薬の投与しているものとそうでないものを机の上に乗るぐらいの箱庭のような迷路を作った。
この実験で明らかな優位性が見られた。おおむね、「TTZ-46」を投与したマウスの方が迷路の出口に早く到達できた。ところがこの中の15%ほどが迷路の壁をよじ登って実験台から落下するものがあった。
実験台から落下してもマウスは死ぬわけではないので、迷路から早く脱出したものとみなした。つまり、知能が向上したと分析した。
その後色々な実験を行い、霊長類による最終実験を経て「治験」(臨床試験)へと進んで現在に至った。ところがこんなことになるなんて、「治験」は一時中断して、再度今までのデーターを分析してみるつもりだ。
以上が先生の話だった。この時僕は、偉そうなことを言っても所詮、人間はマウスと一緒なのだ、大したことないと思った。
「TTZ-46」は僕を弁護士に導いてくれた。この点は感謝している。しかし、一度「天才」の凄さを知ってしまうと毎日が味気ない。あの冴えわたった僕はもう戻ってこない。
これから死ぬまで「凡人」を続けて行かなければならない。世の中、ほとんどの人がそうなんだからと諦めている。
ところで、「TTZ-46」が僕の所に少し残っている。命の保証は出来ないけど、試してみる。ひょっとしたら「天才」になれるかもしれないよ。
TATSUTATSU
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