ストーリー
日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。
動画をどうぞ
誰しも、小学時代、中学時代、高校時代に凄いと思ったヤツに出会うことがある。僕は小学・中学を通してマンガに夢中になった。特に手塚治虫の鉄腕アトム、横山光輝の鉄人28号などは何回も読んだ。当然、模写もしたし、絵も上手かった。
中学時代に、マンガを書かせたら天才的だという同級生がいた。彼は、背が高く僕らより大人びて見えた。2Bの鉛筆を掴むとスーパーヒーローを難なく書き上げる。当時の流行りはエイトマン、まぼろし探偵、スーパージェッター、七色仮面、ナショナルキッドなどだ。
彼が僕の目の前で書き上げたヒーロー達は息をのむほどうまい。同級生にこんなすごい奴がいると初めて認識した。その他の分野でも凄い奴らがいた。短距離走の早い奴、軟式だが剛速球を投げる奴、チビだがサッカーの抜群にうまい奴、読み応えのある短編を書く女の子・・・・。
しかし、彼らはどうなってしまったのだろーか。彼らが大成した噂は全く聞かない。誰しも学生時代に天才的な能力を持った者を1~2人は知っている。しかし、長い人生の間に凡人になってしまう。自分の才能に賭けるのもいいが、食えなくなったら終わりだ。
話は変わるが、僕の友人に画家の息子がいた。彼の色使いは僕らには真似できないほど斬新だ。父親から手ほどきを受けていたことが分かる。生活は楽そうには見えなかったが・・・。残念ながら僕にはその絵が評価できなかった・・・ユニーク過ぎたのか。ひょっとしたら隠れた「天才」かもしれない。
そんな彼はスケッチによく出かける。僕も彼についてゆき、絵が出来上がってゆくのを見る。とても楽しいヒトトキだ。ある日、彼は不思議な絵を描く。
街並みを描いている。ところが空き地部分に家が描きこまれていたのだ。また、ある時には川岸で風景画を描いている。しかし、そこには架かってない橋が描かれていた。
僕は何故って聞いてみた。彼は絵を描いていると情景が自然に頭に浮かぶと言う。そこには無いものが頭の中に浮かんできて描かずにはいられないらしい。
その後何か月かしてその場所には家が建ったり、橋がかかったりした。彼は未来を見る力があると感じた。しかし、彼は「偶然だよ」と気にも留めない。僕と彼は別の高校に行くことになった。
お別れに一枚の絵をくれた。物凄く不思議な絵だった。山奥の森の中にややひらけた場所がある。緑が鮮やかで美しい。ところがひらけた場所にUFOと思しきものがあった。しかもそれを眺めている僕の姿も描きこまれていた。
なんだいこれはと尋ねる。彼が言うには夢の中で何回も見た光景だと言う。彼から不思議な絵をもらって自分の部屋に飾った。それ以来、彼とは一度も会っていない。彼のことも絵のことも忘れてしまった。
僕は就職して結婚し数十年が経った。子供も出来て、よく家族でキャンプに出掛ける。キャンプファイヤーをやることになった。僕は焚き木を拾いに森の中に入った。
焚き木拾いに夢中になり、森の奥まで来ていた。ふと周りを見渡す。かつて何度も見た光景がそこにはあった。思い出した、中学生時代の友人がくれた絵画そのものだ・・・。そして右奥の方にUFOらしきものが銀色に光っていた。
暫く見ていると、UFOから宇宙人らしき者が現れ、僕に近づいてくる。顔が見分けられる近くまで来てハッとした。中学時代の友人だ・・・。彼は全く変わっていない、あの時のままだ。そして僕は気を失う。
誰かが僕を揺り動かす。目を開いたら妻がいた。木にもたれかかって眠っていたのだ。残業続きで疲れていたのかもしれない。僕は急いでキャンプに戻り、家族と楽しく過ごした。
ところが家に帰ってしばらくして「予知夢」を見るようになった。あまりに鮮明な「予知夢」が見える。僕はそれらを生成AIを使って動画に編集しSNSで発信してみた。
「予知夢」を全て公開するわけではない。まず、あたりさわりのない話題に絞ってやってみた。少しづつ読者が増え、趣味の一環としては申し分ない。
しかし、僕が見ていた「予知夢」はそんなレベルではない。大統領の暗殺、戦争、テロ、大災害などの天変地異・・・目を覆いたくなるものが多くあった。しかも、半年から数年のタームで当たるのだ。
僕は考えた、「何故、僕に予知夢を見る能力」を与えたのだ。もし、天から授かった能力であれば「公表するのが僕の役割」ではないのか・・・。僕は悩んだ。
僕は思い切ってすべてを公表することにした。年を追うごとに「予知夢が当たる」。フォロワーは僕を「現代の預言者」に祭り上げる。そして多くのコメントが寄せられた。その中には100人ほど「自分も預言者」だと名乗るものが居た。
さらに僕の身元を特定し、ストーカーまがいのことをするものまで現れた。僕は身の危険を感じ、投稿を中断した。僕の能力は中学時代に絵をくれた彼から引き継いだもの、その彼は既に死んでいる・・・そんな気がする。時空を超えた何者か(宇宙人か)が僕に発信し続ける。
それから暫くして、うなされるほど恐ろしい予知夢が現れた。地球の各地に火柱が立つ映像だ。地球が火だるまだ。核戦争が始まったのか、或いは小惑星が地球に降り注いだのか・・・。
きっとこの「予知夢」を見させることが結論なのだ。次から次へと襲い来る予知夢に神経がすり減る。周りから僕が異常に老けたと言われる。眠いのに安心して寝れない。命を削って予知夢を見る。僕が死んだらきっと誰かが後に続くだろう。なんせ、世界には100人の「預言者」がいる。
とにかくこの「予知夢」を世界に発信し続けなければ・・・。今日見た夢では看板が見えた。もっと見続ければきっと映像の中に日付や場所のヒントが出てくるはずだ。それまで、僕は死ねない・・・。
TATSUTATSU
以下のミステリー小説も見てね。
「僕の金縛り体験記」
「連鎖する惨劇」
「クリスマスの雪女」
「幽霊が見える男」
「緑の少年」
「真夜中の鏡の怪」
「死相が顔に現れる」
この記事へのコメントはありません。