ミステリー小説

ミステリー小説「天国に一番近い夢」だれにでも心地良い夢はある、それを見続けたい

ストーリー


日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

 

誰しも、夢の中に同じ場所や場面が出てくることがある。僕はしばしば同じ夢を見る。物凄く心地良い場所を僕は一人で歩いている。そこを歩くたびに心が穏やかになる。

その夢とは・・・僕は広い草原の一本道を歩いている。天気は快晴で暑くも寒くもない。乾いた風が僕の斜め左から吹いてくる。その風にジャスミンや柑橘系の混じったような何とも表現しにくい香りを運んでくる。

遠くで風が木々を揺らす音、鳥のさえずり、虫の声が響き渡る。しばらくそこを歩いてゆくと、正面に大きな森が見える。僕はその森に向かって歩き続ける。

森の中に入ってゆくと、風がやや湿り気を帯び、涼しい。森をしばらく行くと目の前に橋が見える。橋の右側には大きな湖が広がり、湖面を吹き抜ける風は少し湿り気を含んでいる。

橋の下は湖から流れ出る小川となって右から左へと流れてゆく。小川のせせらぎが耳を潤す。橋から川を見るとアユの様な魚の群れが泳ぎまわる。

橋を渡ってしばらく行くと、森を突き抜けまた草原に出る。さらに草原の一本道を歩いてゆくと道が二股に分かれている。僕はいつも左側の道を選んで先を進んでゆくと・・・自然に目覚める。

でも毎回、全く同じ夢ではない。時々、草原が芝生に代わってたり、季節も春だったり、夏だったり秋だったりする。橋も短い時もあればやや長い時もある。そして二股に分かれる道の正面に木が生えていることがある。でも夢として全て心地いいし、大筋は変わらない。

ところが、今回見た夢は少し変わっている。橋の隅に若い女性が僕を待っている。服は地味だが顔は見覚えがある。でも、どうしても思い出せない。僕はその女性の横をすり抜けて橋を渡ろうとする。

ところが、その女性は僕の後をついてくる。後ろを振り返ると誰もいない。前を向くとその女性がいて、微笑む。僕は彼女と一緒に橋を渡り森を出る。

その先には、草原が続く。ふと僕の右腕に蜂が止まって針を刺す。ところが痛みは全くない。しばらく行くとススキの原っぱに出る。左腕にススキの葉が当たり傷跡を付ける。少し血が出たが痛さは全く感じない。

そしてまっすぐの道が二股に分かれるところまで来た。僕はいつもの通り左の道を行こうとする。ところが彼女が僕の腕を引っ張って右の道へと誘う。

僕は彼女の言うがまま、初めて右の道を歩く。その時、突然僕は寝室の天井にいた。下を見るとベッドに寝ている僕がいた。僕の周りには家内や娘、孫など多くの親族が悲しそうに僕の顔を見ている。

僕の右腕には点滴が刺さっている。僕は死んでしまったのだろうか・・・。でも心は穏やかで痛みはまるでない。何回も嗅いだことにがあるあの香りが漂っている。ただ、少し線香の臭いもする。

僕は自分と言う「肉体」を脱ぎ捨て、自由に何の束縛もなく空中にいる。全てから解放されこれ以上の喜びは無いように思える。橋で会った若い女性は母の若い時の写真によく似ている。ひょっとしたら天国から母が僕を迎えに来たのかもしれない。

そろそろ天井を突き抜けて広い空に行こうと思った。ところが急に体が大きく左右に揺れて目が覚める。横には心配そうな妻がいた。

妻が言うには、いびきをかいていた僕の息が止まったそうだ。あまりにも長く呼吸が止まっていたので心配になって、体を揺り動かしたらしい。

僕の持病の一つに軽い「無呼吸症候群」がある。この病気が年とともに進行している。あのまま、妻が起こしてくれなければ「あの世」に行ってしまったに違いない。

天国の母が若い時の姿をして、僕を迎えに来た・・・僕はそう考えている。「夢」から「死」への流れが苦痛がなく最高の死に方なのかもしれない。でも、残された人にとってはたまったもんじゃないネ。

 

TATSUTATSU

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