ミステリー小説

ミステリー小説「死者が誘う夜の海水浴場」夜の海中は亡霊たちがうごめいている

ストーリー

「僕の実体験や知人から聞いた話をミステリー小説としてまとめた(フィクションもあるよ)。寝る前の数分間、僕に付き合ってほしい。読んでいただければ、深い眠りが提供できるかもしれない。でも、目がさえた時はごめんなさいね。」


夜の海は物凄くきれいだ。心が洗われるとともに暗闇の無重力世界を堪能できる・・・つまり心も身体も同時に解放されると言うことだ。海ほたる、夜光虫、月の光、幻想的でこの世とは思えない。夜の海が好きでナイトダイビングをする人を多く見かける。

しかし、夜の海を侮ってはいけない。集まってくるのは人間ばかりではない、月明かりにつられ、ここをあの世と勘違いする亡霊も多いと聞く。

僕はある出来事があって、夜の海には出かけない。その恐怖の体験についてお話ししよう。今から60年以上前の話になる。

僕の家は海辺の近くで、海水浴場まで子供の足でも20分くらいで行けてしまう。夏になるとほぼ毎日、海で遊ぶ。今と違ってプールなんかはほとんどない時代だ。

海岸沿いに神社がある。そこの松の根元に服とタオルを置いて海の中に入ってゆく。泳いだ後、近くに簡易シャワーがあるからそれで体を洗って、家に帰るだけだ。

海水浴場の少し奥にはブイを浮かべた網状のフェンスがあるから、そこまでは安全だ。僕ら小学生は、フェンスの手前に飛び込みヤグラがあって、せいぜいそこまでが遊ぶ場所になっている。

海の中はきれいだ、白い砂、貝、海藻、魚が群れる。飛び込みヤグラから海に飛び込めば目の前にその光景が広がる。いつも誰かがいて、一人で遊ぶことは少ない。

僕はたまたま、午前中夏の子供会の行事があって海に向かうのが遅くなってしまった。でも7時くらいまでは明るい。父に魚を突き刺すモリを買ってもらったから、これで獲物を獲って帰ろうと思った。

泳ぐ魚はなかなか突き刺すことは出来ないが、砂地を這うカニや魚はねらい目だ。僕は夢中になる、バケツを浮かべて狩りの始まりだ。カニは良く取れる。水中メガネで獲物を追いながら時を忘れる。

足に何か絡まっている。気が付くと、フェンスのところまで来ていた。ブイに手をかけ、足に絡まった何かを探る。それは網だった。網を足から外すとき、ヌルッとしたものが体に触れる。「人間の手」のような気がして動転する。

慌てて、海岸に向かって引き返す。飛び込みヤグラまで無我夢中で泳いだ。沖をみると日が暮れかかっていて、波間に青白く光るものがある。その光は次第に増えてゆくように思えた。

海岸に着いた時には、モリやバケツ、水中メガネはどこかに失くしていた。そうとう慌てたようだ。海を振り返ると暮れかかった海面に月が映り鮮やかだった。でも、あの「手」の感覚は残っている。間違いなく「手」だったと今でも思っている。

暫くして、近所の子供が海でおぼれ亡くなる。僕より2、3才年下で大人しい子供だった、一緒に遊んだこともある。その家に駆けつけると、彼が横たわっていた。僕は生まれて初めて「死体」というものを見た。体中が青白く、生気のないイルカのように見えた。

その家のお婆さんが孫を溺愛していて、風呂場できれいに洗って、一晩、抱きしめるように一緒に寝たそうだ。何故おぼれたのか、詳しい理由は聞いてない。

その後、巨大な台風が来て、海の近くに積んであった大量のガラス瓶が流される。割れたガラスで危険なためその海水浴場は閉鎖された。数年たった頃そこではウミウシが大発生していた。

海は工場排水などでどんどん汚染され、あのきれいな海はどっかに行ってしまった。それ以降長いことそこには行っていない。小学生時代、夏になると毎日通っていた海水浴場、そしてそこでの「亡霊の手」の感触、僕にとっての大事件だけど、今では懐かしい思い出になっている。

 

TATSUTATSU

次は「死相が顔に現れる」を見てね。

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