ミステリー小説

ミステリー小説「オーブが乱舞する夕暮れの墓場」不吉な前触れかそれとも幸運が舞い込むのか

ストーリー

 


日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

 

もう30年以上も前の出来事だ。今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。僕は仕事が忙しいのを理由に長いこと両親の墓参りを怠っていた。それが、いつも心の隅に引っかかっていた。夏のある日、僕は日帰りでのお墓参りを強行した。

新幹線で名古屋まで行ってからローカル線に乗り継ぐ・・・いつものコースだ。ところが途中で人身事故に巻き込まれた。列車が遅れることは覚悟したがこれほど時間を食うとは・・・。目的地の駅に着いたころには夕暮れが迫っていた。しかも、真夏で異常に蒸し暑い。

駅から歩いて20分くらいの所にお墓がある。大汗をかきながら途中、中学校の横を通る。毎日通ったところだ懐かしい。あの頃を思い出しながら急ぐ。集合墓地は丘の中腹に作られ見晴らしがいい、それに相当数の墓石が並んでいる。

墓地の入り口にある閉まりかけた花屋さんから花を買う。そして通路に設置された水道の蛇口をひねる。借りた桶に勢いよく水が入る・・・冷たい水が心地いい。汗をぬぐいながら両親の墓のある所に急ぐ、なんせ久しぶりだからやや迷った。

墓の向こうにある駐車場に水銀灯がともる。蒸し暑い夕暮れは、虫たちにとっては最高の日だ。灯りに少しづつ虫が集まり、あっという間に。光源を覆う。蛾や甲虫類、小さな羽虫たちが何度も何度も灯りの周りを飛び交う。

両親の墓を見つけ花を活け線香に火をつける。線香の煙がその場所を清めてくれる。墓石に水をかけ、合掌する・・・両親の顔が浮かんでくる。長い間心に引っかかっていたものが静かに外れてゆく。また来ようと墓石の間の通路を急ぐ。

その時に不思議な光景を見た。一番奥の水銀灯に近い墓石あたりに小さな光の粒が飛び回っている。最初はホタルかなと思ったががそうではない。魂がオーブとなって墓石の周りを飛び回っているのだ。その時間は数秒なのか数分なのか・・・あっという間に消えた。

見間違いか・・・水銀灯が墓石に反射し虫たちの乱舞を見間違えたのか。或いは後ろの崖に取りついた何かが発光したのか。かつて僕はヒメボタルの群生を見たことがある。やはり同じような湿った崖だった。

ヒメボタルはゲンジやヘイケボタルよりも小さく光も弱い。しかもメスの羽は退化して飛べない。群生は見ごたえがある。しかし間違いなくホタルよりも大きく空中をゆるやかに舞っている。しかも、一部は虹色に光っていた。

虹色のオーブは幸運を呼ぶと言う。あたりはもう真っ暗だ。霊魂たちが僕に何かを伝えようとしているのか。それに全く怖さは感じなかった・・・不思議だ。

両親の霊が僕に何かを語り掛けている。そんな風にも思う。ふと我に返った僕は墓を後にして駅に急いだ。家に帰り着いたのは深夜に近かった。

その夏の異動で栄転した。虹色のオーブはこの幸運の前触れなのか。しかし、「幸運」「不運」とはその時点での心の感じ方だと今は思っている。

確かに「幸運」「不運」は波のように交互に押し寄せて来る。時には「幸運」が続いたり「不運」が重なったりすることもある。でも、それは少ない。

この歳になって振り返ってみると、「幸運」だと思っていたものがそうではなかったり。「不運」だと思っていたものが実は「幸運」だったりする。必ず「逆転現象」が生じるのだ。

僕は「不運」の半分は「幸運」だと思っている。実際そうなのだ。「昇進栄転」だと思って赴任したがそこには理不尽な上司が待っていた。体が悲鳴を上げるほど苦しめられた・・・忌々しい経験がある。

オーブの話に戻ると「オーブの正体は空気中の水蒸気やホコリなどの浮遊物にカメラのフラッシュなどの強い光が反射して光の点として映りこんだもの」と解釈されている。

しかし、ごく少数ではあるが魂が浮遊したものと解釈している人たちもいる。オーブの色も色々ある。赤色は「警告」を示し紫色は「守護霊」があなたを守っていると言われている。

白色や緑色もある。その時の心の状態が色に反映するかもしれない。虹色のオーブは前に述べたように「幸運の印」だと一般的に信じられている。

両親の墓参りをしたことによって心に安らぎを感じた。そして「両親の霊」が僕に幸運をもたらした。と思うようにしている。

 

TATSUTATSU

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