ミステリー小説

ミステリー小説「晴天に幽霊を見た」あの世から迎えに来た女はいったい誰なのか

ストーリー

 


 

日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

幽霊は暗闇の中にいるものだが僕の場合は晴天の下で見た。しかも3回もだ。我々人間は精神状態がおかしくなると昼間でも「幻影」を見る。しかし、僕の場合「幻影」なんかではない生きているように見えた。

まず、一回目は町を歩いている時だ。春の温かい午前中繁華街を歩いていた。前から見知らぬ女性が歩いてくる。ふと、すれ違いざまに僕に微笑む。同時にかぐわしい香りが流れてくる。

僕はびっくりして彼女を覗き込む。平安貴族風の着物を羽織ったいでたちで僕の横を通り過ぎてゆく。僕は振り返って彼女を追いかけたい衝動に駆られる。あの微笑みには魔力がある。でも必死で自制心を保った。何事もなく前を向いて歩き続けた。

彼女の微笑みをどこかで見たような気がした。そして彼女の後ろをついてゆく何人もの男たちも見えた。ただ男たちの多くは透き通っているようにも見えた。この世の物ではないだろう。

二回目はいつもの公園で遭遇した。この日も天気がいい、広い公園をのんびりと散歩していた。散策道のわきにベンチがある。そこに和服姿の女性が座って本を読んでいた。僕がそこに通りかかると彼女が顔を上げて微笑んでくる。いつかの彼女だ。僕は彼女の横に座りたい衝動に駆られた。でも、何故かそこを通り過ぎた。

それから一年後、僕は徳島の「大塚国際美術館」を訪れた。ここは世界26か国の名画190点以上が原寸大の「陶板」として保存してある。国内でも有名なところだ。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の所に来た時、僕の少し前にいた洋服の女性が振り向いた。

彼女は微笑む。その微笑みがあの「モナ・リザ」にそっくり。三度目の遭遇だった。今度こそ彼女に会いたいと近くへ行こうとした時、肩を誰かに掴まれた。

振り返るとかなり前に亡くなった父だった。父は僕に何かを伝えたいようだ。彼女の方を見ると何処にもいない、また後ろの父も消えてしまった。

それから一か月後、僕は脳溢血で倒れた。でも偶然通りかかった老婦人が救急車を呼んでくれ、一命をとりとめた。老婦人は運ばれた病院の看護師によると亡くなった僕の母に特徴がよく似ていた。

後から考えると、「亡くなった両親」に助けられたような気がする。あのまま彼女についていったら何処に連れていかれたやら・・・冷汗が出る。

「モナ・リザ」の微笑みは多くの研究者を惹きつけその謎を解き明かそうとした。例えば、微笑みは「妊娠した女性の喜びを表している」と言う研究者がいる。

また、レオナルド・ダ・ヴィンチ自身を絵画に投影させたもの・・・或いは母の面影を絵画に込めたもの。さらに彼の理想の女性像を描いたものとも考えられる。彼の愛人説、女性の弟子を描いたものもある・・・きりがない。

「モナ・リザ」を見ていると本当に微笑んでいるのか、よく見ると微笑んでなんかいない。僕が「幻影」としてみた女性も微笑んでなんかいない。微笑んでいるように見えて、本当は僕を「黄泉の国」に連れて行こうとしていたのか。

脳は不思議な作用をすることが最近分かってきた。歳を取って目が弱ってくる。白内障や部分的網膜剥離などによって視野が欠ける。そうするとその欠けた部分を補うように「脳が幻影をみせる」。その「幻影」かもしれない。

視力が弱ってくると眼鏡に映った虚像を実物と勘違いすることがある。現在の僕がそうであるように、毎年視力が低下して来る。何かが僕の視野をかすめることが多くなってきた。

今回は天使の微笑み、或いは悪魔の微笑みを何とか回避できた。でもいつまでもこのままではいられない。いつかは「黄泉の国」に行かなくてはならないのだ。その時まで「モナ・リザ」は微笑んでいることにしておこうか。

TATSUTATSU

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