ストーリー
僕はある有名な大学の非常勤講師だ。准教授のT先輩に推薦してもらいこの職にありついた。薄給ではあるが好きな研究に打ち込める点では物凄く有難い。
僕は人類学を選考しているが特に人類の起源と変遷を明らかにすることを目標としている。これは僕のライフワークになっている。500万年くらい前のアフリカに「猿人」と言われる二足歩行の人類が住んでいたことが研究から明らかになっている。
そして200万年くらい前に「原人」が現れ、20万年前に「新人(ホモサピエンス)」が登場、現代に繋がっている。当初、現在のヒトにつながるものと考えられてきた、中間化石「ジャワ原人」「北京原人」「アウストラロピテクス」が我々ヒトの祖先ではないことが明らかになった。
つまり猿人から我々への中間化石がなくなってしまった・・・過去と現代が繋がらないことになる。これをミッシングリンクとよび世界中の研究者を悩ませている。
類人猿とヒトの共通祖先を見つけ、それを現代へとボトムアップさせて完全な鎖(リンク)をつなげたい。僕はこの研究に生涯を捧げてもいいと思っている。
僕とT准教授は時間が出来れば、世界中を飛び回って有望な化石が発掘できそうな場所を探した。そしてアフリカのある場所に目を付けた。しかし、そこでの調査は灼熱と砂埃、政情不安など過酷さを極め、さらに期間も飛び飛びではあるが足かけ6年も費やした。
そして、諦めようとしていた次の日、有望な人間の頭蓋骨と右腕の化石を発見した。出土した骨の化石を精密に調査した結果、我々に繋がる祖先の物である可能性が強まった・・・大金星だ。これによって大幅な予算がついて発掘調査の規模を拡大することが出来た・・・多くの現場作業員が雇える。
その後、有力な化石が続々と発見されリンク(鎖)が繋がってゆく。かつて現場近くから猿人の化石が発見されているが我々が見つけたものは脳容積が2倍以上になっている。こんなに短い時間であまりにも進化が早い。
現代人の脳容積は約1400cc、猿人のそれは400cc、我々が見つけたものは既に1000ccを超えている。僕とT准教授は顔を見合わせた。おかしい、「神」或いは「何か」が介在してヒトを作り上げなければこんなにはならない。
そんな心配事がすぐに現実になるとはこの時予想もしなかった。地層をさらに深く掘り進んでゆくと金属に突き当たった。この金属層を重機で慎重に掘ると、直径が約8mくらいの円盤状の物体が姿を現した。
我々は誰かがここに埋めたのではないかと、金属に付着した岩などを詳細に分析したが間違いなくこの円盤状の物体はこの地層の中にあったことは揺るがなかった。
金属表面を擦るとピカピカの新生面が現れ、錆とか腐食は見られない。金属が何で出来ているか少し削ってサンプル瓶の中に入れた。これを僕の友人で分析を専門に行っているM君に送った。
とりあえずこの円盤状の物体は近くに建てた簡易テントに保管した。そして更に地層を掘り進めてゆくと、猿人の化石が多く表れた。この金属の物体さえなければ猿人 ⇒ 原人 ⇒ 新人 へと見事につながる。
これら人類の化石を1年かけて総合的に論文にまとめ発表した。その反響機凄まじく世界はあっと驚いた。我々の研究が世界に受け入れられたのだ。ここまでに到達するのに十数年の月日が過ぎていた。T先輩は教授に昇格し、僕は准教授となった。
円盤状の物体は船に乗せ深い海に投棄した。もし、我々がこの物体はUFOであり、宇宙人の遺伝子操作によって我々現代人が作り出されたと発表したら・・・世の中の笑いものになることは目に見えている。科学は異常なハプニングを受け入れない。
我々の決断は正しかったと思っている。ただ、M君から4か月後に金属の分析結果が届いた。その金属は周期表に乗ってない物質で作られ、電子顕微鏡で見ると植物の細胞のように箱状の部屋がびっしり規則正しく並んでいるそうだ。
これはM君の推測だが、この箱状の部屋の中には反物質が閉じ込められているのではないかと言っている。通電すると金属片が浮かび上がり不思議な動きをすると驚いている。
僕は金属片をどこで入手したかあやふやにしている。所詮科学なんて人間の常識を超えてはいけないのだ・・・。
TATSUTATSU
以下のミステリー小説も見てね。
「僕の金縛り体験記」
「連鎖する惨劇」
「クリスマスの雪女」
「幽霊が見える男」
「緑の少年」
「真夜中の鏡の怪」
「死相が顔に現れる」
この記事へのコメントはありません。