ストーリー
予告編をどうぞ
音楽をどうぞ。エルトン・ジョン(僕の歌は君の歌)
時は2054年、ある新しい法案が可決された。人間の平均寿命がどんどん長くなり、90代なんてざらにいる時代。伴侶に先立たれ孤独老人が激増、社会問題となる。
孤独老人たちは認知症になりやすいし、世間の関心を得ようとして万引きや犯罪に走るのも珍しくない。とにかく彼らを鎮めなければならない。
新しい法案は「AI伴侶法案」と呼ばれ、片方が亡くなっても生前の伴侶の声・しぐさ・考え・・・を全て記憶したAIロボットをそばに置くことを推奨している(国から補助金が出る)。
AIロボットはリアルタイプからぬいぐるみタイプ、動物タイプと各種そろっている。91才の僕は最初はリアルタイプ(外見は家内そっくり)のAIロボットと暮らしていた。名前は家内の名前が歌子だったことから「僕のUTA」と呼ぶことにした。
一般的には亡くなった伴侶に似せたリアルタイプのロボットが多い。ところが若くて美人のロボットを好むエロジジイもいる。娘タイプのロボットにピンクの下着を付けさせたり卑猥な言葉を覚えさせたりもする。でもこれらは少数派だ。
僕はUTAと一緒に暮らし始めて3か月たった。ところが家内の性格を取り入れ過ぎたため、朝は早く起きろ、野菜を食え、しっかり歯磨きしろ、散歩しろ、血圧を毎日はかれ・・・と小言がうるさい。うんざりするときもある。
僕は彼女に暫く倉庫に眠ってもらうことにした。そして最近大人気のパンダタイプロボットを購入した。一緒に暮らしてみるとこれがなかなかいい。外を歩いていると子供やご婦人たちが寄ってくる。寒い夜は抱っこして眠ると湯たんぽのように暖かい。
このパンダにスマホ機能、テレビ機能、夜の電飾機能をオプションでつけて毎日街を歩く。ところがちょっとコンビニに寄っているスキに盗まれてしまった。
実はロボットの盗難が急増している。特に世間を騒がせたのは大富豪のリアルロボット盗難事件だ。このロボットの特異性は未亡人がご主人そっくりに莫大なお金をかけて作り上げた点にある・・・生きた人間と区別できない。
一説によるとセックスも出来るらしい。膨大なサーバーやスーパーコンピューターと接続し社長業もやらせていたらしい。ロボットは人間ではないので違法なんだが。
盗難の手口はこうだ。自立型ロボットのため補助人工頭脳を有している。このソフトのアップデートのためネットに接続していた。ところがそれが原因でハッカーにやられてしまった。ロボットは難なく家から出て車に乗って何処かに消えたとのことだ。
未亡人の所に多額の身代金要求があった。彼女は秘密裏に電子マネーで払ってしまった。ところが帰ってきたロボットを確認すると一部の情報が抜き取られた形跡がある。
慌てて、警察や政府機関に連絡した。外部に漏れたら困る情報が少なからずあるからだ。政府機関はハッカーを突き止め情報漏洩をスンでのところで阻止した。とにかく大富豪ともなると国や財界のトップとの闇のつながりがある。公表されては困ることが多いのだ。
僕はパンダロボットを諦め、最高のセキュリティー体制を有するガンダムタイプを購入した。これは実に凄い。盗もうとすると激しい音と目からビームが出る。人間には危害を加えてはいけないので音と光で撃退だ。
暫くこいつと暮らしてみたが金属の塊のようで実に味気ない。倉庫から「僕のUTA」を出してきてもいいが、もう一度新しいロボットに挑戦した。
世間ではあまりなじみのないスライムタイプロボットだ。このタイプは足が無いのでオプションとしてキャタピラーを付けることが出来る。そして疲れた時のために背中に椅子も取り付けた。
こいつの背中に座って道を進んでゆくと心地いい。気が付くと眠ってしまっていた。また、子供たちが珍しそうに寄ってくる。中にはボディを蹴ったりする子もいるが弾力性があるから問題なく元に戻る。
僕はこいつにさらに音楽プレーヤーとコーヒーメーカーを取り付けた。音楽を聴きながらコーヒーを飲む。特に春から初夏にかけては並木道を一緒に歩く。なんとなくもっと長生きできそうな気がするね。このタイプはあなたにもお薦めだ。
ところで、今度は腕を付けようと見積もり要請中だ。最初から手足がついているのもいいが、色々とカスタマイズするのも楽しいね。
TATSUTATSU
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「連鎖する惨劇」
「クリスマスの雪女」
「幽霊が見える男」
「緑の少年」
「真夜中の鏡の怪」
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