ミステリー小説

ミステリー小説「ビンボーで孤独な宇宙人」彼らの中には極貧にあえぎ孤独で寂しがり屋の種族がいる

ストーリー


僕は中堅どころのSF作家だ。ある日、師匠でもあるSFの巨匠Y先生から呼び出しをもらった。僕は30代半ばだが先生は80才を過ぎている。先生はかのベストセラー「四体(FOUR BODIES)」の作者だ。

僕にとっては親代わりでもあり、何とか作家で飯が食えているのも先生のおかげだ。先生もご高齢になって病気がちと聞いている。お屋敷に急いで向かった。

先生は僕を地下の書斎に案内すると、とんでもない話をした。実はT君には申し訳ないが僕の後を継いでほしい。先生には奥さんも子供もいるのに何故僕に・・・。先生の話を要約すると次のようになる。

私は肺ガンが再発し来週、入院することになっている。多分、生きては帰れないと思う。私の跡を継いで「四体(FOUR BODIES)」の続編を書いてほしい。

この離れの建物と地下の書斎は君にあげる。もうすでに弁護士に相続について話してある。そしてもう一つ大きなお願いとして「宇宙人」ボンビを世話してほしい、誠に申し訳ないがこれらを君に託したい。

「宇宙人ボンビ」・・・僕は絶句した。奥さんから事前に聞いていた通り、先生は認知症がかなり進行しているようだ。そして要望はすべて了解してあげてと奥さんから言われている。僕は「分かりました」と答えた。

先生は病院に入院後1か月で亡くなった。僕は先生の離れに引っ越し、ここで執筆活動を始めた。奥さんにも「宇宙人」のことを話したが、たぶん愛猫の「タマ」と勘違いしていると言っていた。確かに「タマ」はしょっちゅう部屋に入ってきた。時々、ベッドにも入ってくる・・・可愛いね。

引っ越してから数週間が経過した。離れの一階は居住スペースになっており、2LDKの広さだ。それに対し地下は何と広いこと20畳以上ありそうだ。地下に降りると6畳ほどの書斎があるが壁で隔てられたその奥の書庫の大きいこと。書庫のドアを鍵で開けて中を覗き込む。

ここには本棚が並んでいたがその奥はカーテンの仕切りがあった・・・その先は薄暗く、僕にとっては興味はなかった。架空の「宇宙人ボンビ」について、冷蔵庫には「いくら」「うに」「かずのこ」「マーブルチョコ」を切らさないこととメモが張ってあった。それにウイスキー「山崎」も忘れずに・・・「ボンビ」の好物らしい。

ばかばかしいが最初のうちはそのようにしていた。ところが何故か買ってきたものが減っている。いったい誰が食べるのだろーか。僕は先生の遺言通り、補充をつづけた。奥さんに話したところ、「あれらは主人の好物よ」と笑われた。

僕が寝室で寝ていると時々、「タマ」が布団にもぐってくる・・・可愛いね。不思議な夢を見た、寝ていると何かがもぐってくる。触ると「タマ」ではない。四肢が長く毛が無い。朝起きた時、昨日の夢が頭から離れない。布団にはかすかなアンモニア臭があった。

こんな夢を何日か続けて見た。ところがある夜、僕の布団の中に間違いなく何かが入ってきて僕に触れたのだ。僕はびっくりして飛び起きた。僕の隣には「宇宙人ボンビ」らしきものがいた。

それは、僕を見ると微笑んだ。身長は130cmくらいでやせ型の顔は映画「E・T」に出てくるものによく似ていた。一言でいえば「グレイ型宇宙人」だ。最初は驚いたが愛嬌がある顔だ。それに敵意はなさそうだ。

僕に微笑みかけると部屋を出て行った。「ボンビ」は本当にいたのだ。僕はこのことを次の朝、奥さんに話した。奥さんは「あっ、そう」と言ったキリ、話をはぐらかされた。奥さんは薄々知っているとしか考えられない。それに「ボンビ」は「ネコのタマ」とも仲が良かったのだ。

僕はY先生の日記を見つけた。そこには次のように書かれてあった。執筆に疲れて散歩に出かけた。川沿いの小道を歩いていた。陽もそろそろ傾きあたりは暗くなってきた。ふと、気が付くと、私の後ろ数メートルの所に何かが付いてくる。

よく見ると小学生の子供のようだ。近づいて驚いた、子供ではなくて「河童」のようだ。私は急ぎ足で家に帰ろうとしたが「河童」のような何かは何処までもついてくる。振り返るとすぐ近くにいた。その得体の知れないものはガリガリに痩せて、何か食べたそうに私に訴える。よく見ると敵意はなく、可愛い目をしていた。

私は家に連れて行き、食卓に座らせ、冷蔵庫から色々な食材をテーブルに並べ、食べなさいと促した。小さくて目の大きなそれは、食材の中から「いくら」「うに」「かずのこ」「マーブルチョコ」を手に取って小さな口に運んだ。ご飯や野菜は苦手なようだった。

それから彼との長い共同生活が始まった。私はそれが最初、宇宙人とは思われなかった。でも生活を続けてゆくうちに知能の高さに驚かされた。名前は、当初あまりにも、みすぼらしかったので「ボンビ」と名付けた。

「ボンビ」からパソコンが100台欲しいとせがまれた。与えると、大喜びで何処かに持って行った。暫くしてUSBメモリーを2つ持ってきた。1つにはSF小説「四体(FOUR BODIES)」の原稿が入っていた。

2つ目はもっと驚いた、「常温核融合炉」「バイオコンピューター」「人工冬眠」「ワープ航法」「反重力装置」「ダークマターエネルギー」「高速宇宙船」「不老不死技術」「未来型AIとロボット」「人工生命体」・・・・など100件ほどの論文・設計図があった。これらの技術は我々にとっては喉から手が出るほど欲しいが、悪用されれば大変なことになる・・・私は消去した。

私は書斎と称して離れを建て、地下に「ボンビ」を住まわせた。それからあっという間に50年が経過した。「四体(FOUR BODIES)」は機械が書いているようで感情表現が不足している。私はこれをもとに人々に受けるよう翻訳し出版した。宇宙旅行があまりにリアルに書けていると評判になり、大ヒットした。

大金が入ってくるとともに「ボンビ」は色々なものを要求した。最先端の半導体千個、銅、プラチナ、チタン、アルミなどの金属板・・・・どうも宇宙船を地球の部品を使って修理しているようだ。

以上のようなことが書かれてあった。「四体(FOUR BODIES)」の原稿は確かにサーバーの中にあった。あまりにも機械的な文章だが、宇宙旅行の描写がリアルだ。天の川銀河、アンドロメダ銀河、ブラックホール、宇宙外縁部の星々、宇宙生命体が住む星々・・・。僕は必死にこれらを地球語として翻訳し始めた。

1年間に1章のペースで続編を発表した。Y先生と同様に高い評価を得て世界中で読まれた。僕の所にかなりの印税が転がり込んだが、「ボンビ」がその半分を使うようになった・・・部品が欲しいのだ。

ある日、2ナノの最高性能半導体を1万個欲しいと言ってきた。僕は四苦八苦して調達した。「ボンビ」は今までの半導体と違って、何とか使えそうだと大喜びした。

ある日、「ボンビ」が布団に入ってきて僕の背中を抱きしめた。僕はお別れの日が来たと感じた。次の夜、UFOの目撃情報が世間をにぎわした。彼はもう行ってしまったようだ。

それからもう50年経つ・・・Y先生の亡くなった年齢に近づきつつある。僕が書き始めたSF小説続編は50章を数える。もう最終回をリリースした。

この50年間で世の中はずいぶん変わった。先生の奥さんも亡くなったし、僕が住んでいる場所の周りの景色も変わった。僕と建物は変わっていないが、周りの土地を買い占めたので、この部分だけ緑豊かな森のようになっている。僕は相変わらず独身だ。僕が死んだらこの場所は公園として残そうと考えている。

小説を書き終えた疲れからか、ずいぶん寝てしまった。その後のんびり優雅な日々を過ごしていたが、ある夜、夢のような出来事があった。「ボンビ」が戻ってきたのだ。

彼は僕の顔を見ると「タロウ、迎えに来た」と言った。懐かしさで胸がいっぱいになったが果たしてこれは現実なのか夢なのか自分でも判断できない。でも僕は「うん」と答えた。

 

TATSUTATSU

ミステリー小説「銀座は宇宙人との出合の場所」先進的な彼らは山奥、廃屋、原っぱのような寂れた場所にいるはずがない

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