ミステリー小説

ミステリー小説「幽霊を愛した男の悲劇」愛が強すぎるほど自分がこの世にいることを忘れてしまう

ストーリー

動画をどうぞ。

黄泉がえり(2003) 劇場版予告

もう一本動画

黃泉路電影片段[中字]-RUI(柴崎幸)Live & END

 


今でも、後悔の念が消えない。初夏になると思い出す、忌々しい記憶だ。親友のA君が亡くなってもう数年も経つ。何故、彼を助けてあげられなかったのか・・・もう少し早く気づいてあげれば悲劇は回避できていたのに。

A君とは大学に入ってからの友人で、6年も苦楽を共にしてきた。大学を卒業し大学院に進んだ。そして同じ研究室で同様のテーマを分担して研究してきた・・・いわば戦友だ。

僕らは合成化学の研究をしていた。高価な化学物質を触媒を使って安く作る方法を見つけ出す。世の中に役に立つ研究だ。そして研究はほぼほぼ完成に近づいている。卒業までにある程度めどをつけないといけない。研究室に寝泊まりすることも多くなってきた。

そんな時期、親友のA君の様子がおかしい・・・学校をしばしば休むようになってきた。そして僕の前に現れた時には、彼の様相が激変していた。目が窪み、頬はコケ、顔は青白い。体調でも悪いのかと彼に聞くが、「そんなことは無い」、食事もシッカリとっている・・・と言うのだ。

僕は担当のB教授に相談し、A君のアパートを覗いてみることにした。近くに来たから寄ったと嘘をついて彼の部屋に上がった。入った途端、異臭とジメットした重苦しい空気に包まれた。

部屋は薄暗く、カーテンをいつも締め切っているようだ。彼は、夕方にC子さんが来て、毎日夕食を作ってくれる。C子さんは明るいところが苦手で、部屋は薄暗くしてるんだと言う。女性と付き合っていると聞いてはいたが、部屋に来て料理を作ってくれるほどの仲とは思っていなかった。

冷蔵庫に飲み物が入っているから勝手に飲んでくれという。僕は冷蔵庫の扉を開けた。びっくり、そこには何日間も放置された食材があった。中には悪臭を放つものも・・・食べ残しの弁当だ。

本当に彼女が来て食事を作ってくれているのだろうか、それとも彼はおかしくなっているのか。僕は室内を覆う耐えきれない闇に早々にオイトマした。彼の部屋にいると僕までおかしくなりそうだ・・・そして何か得体の知れないものの存在も感じた。

帰る途中に、妹に電話してみた。妹は少し霊感を持っている。「明日でも一緒に行ってみる」と言ってくれた。大学の帰りに駅で待ち合わせてA君のアパートに行った。

彼はよく来てくれた上がってくれと愛想はいい。でも部屋は薄暗く、空気は昨日同様、重かった。今日は妹と一緒なんだと紹介した。妹は「何かいる」と小声で僕に知らせる。そしてちょっとトイレ借りますと奥の寝室にこっそり向かう。

そこには、得体の知れないものがいた。腰を抜かしそうになるのをこらえて僕の所に戻る。そして「早く帰ろ」と促す。僕は妹が少し震えているのを見て、すぐに彼の部屋を出た。

妹はおびえた様子で「寝室の隅に白い服を着た女が居た。」と言う。そして重苦しい空気は女から発せられている。「女はこの世のモノではない」「早くあの部屋から彼を出さないと大変なことが起こる」と僕を見る。

妹は「友人で霊感の強い子がいる。その母親は除霊師だ・・・連絡を取ってみる」と震えながら家に急いだ。清めの塩を玄関でふりかけ家の中に入る。

僕は眠れなかった。ひょっとしたら、A君は悪霊に取り憑かれているのか・・・そしてうつらうつらしかけた明け方、不思議な夢を見た。

僕は薄暗い森を一人で歩いている。森を抜けると広い草原があった。そして突然雪が降ってくる。数メートル先に男女がいた。二人は深い雪をかき分け山に登ってゆく。

その二人の男女の身なりに驚いた。洋服ではなく和服なのだ。しかも、100年以上前の時代劇を見ているような不思議な感覚になる。そして二人は吹雪で見えなくなる。起きた時、そんな記憶が残った。

A君の所にすぐに行きたかったが、妹たちとのスケジュール調整に手間取り、二日後になってしまった。僕は妹とその友人、母親の4人で急ぎアパートに向かった。玄関の呼び鈴を鳴らしても出てこない。僕らは慌てて大家さんから鍵を借りてドアを開けた。

A君はいなかった。そして家の奥の悪霊と思われる白いモノの存在もなかった。妹の友人とその母親は「ヤバい、今しがた連れてゆかれたかも」と、慌てふためく。霊に敏感な連中にとっては一刻の猶予もないと感じたようだ。

僕と妹に周りを探すようと言われた。僕らは手分けして数百メートル四方を探し回ったが徒労に終わった。どうしても見つからないのだ。

それから二日ほどして悲劇が現実となる。海に浮かんでいるA君の遺体がみつかったのだ。さらに、その近くの海底には軽自動車が沈んでいて、運転席には白い服を着た女性の腐敗した遺骸も発見された。

女性はC子さんのようだが・・・数週間海の中にあったため特定に難航したようだ。そして二人とも自殺なのか事故なのか今となっては分からない。僕がもう少し早く駆けつけていればこの惨劇は防げた。事の重大さの判断が出来なかった自分を責めた。

何年か経って、こんな話を聞いた。東北地方のある村では、「山で吹雪に遭遇して亡くなった女性は雪女になる」そして「その魂は恋しい男を探して村や町に降りて来る」。

気を付けないと「雪女」に取り憑かれ、あの世送りにされる。しかし「雪女」は誰にでも取り憑くわけではない。若くて気に入った恋しい男だけなのだ・・・。

A君もC子さんも東北の出身だ。こんな伝説が現代まで及ぶとは思わないが、C子さんの亡霊がA君を迎えに来たような気がする。大昔から伝わる伝説・・・現代まで続いている。激しい恋の結末は悲劇に終わる。

今では親友A君の顔さえ思い出せない。あの出来事は現実に起きたのか・・・。

TATSUTATSU

霊魂の存在と死後の世界をテーマにした映画ベストテン:魂や幽霊は必ず存在し常に僕らにシグナルを送っている

以下のミステリー小説も見てね。

僕のドッペルゲンガー体験

僕の金縛り体験記

連鎖する惨劇

丑三つ時に現れる老ネコの謎

クリスマスの雪女

幽霊が見える男

生まれた時に人間の寿命は決まっている

僕の心臓手術体験記

緑の少年

真夜中の鏡の怪

死相が顔に現れる

死者が誘う夜の海水浴場

夢と現実が直結する時

 

 

 

 

ミステリー小説「毎夜死者たちが夢に現れる」死人が出てくる夢は不幸をもたらすとされているが前のページ

ミステリー小説「視野の隅を高速で動く影虫の謎」実態のある物体なのか、それとも目の錯覚なのか次のページ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気記事

アーカイブ

最近の記事

2024年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
  1. SF

    映画「猿の惑星:新世紀」感想・評価‐サルの視点で描かれたのはシリーズ初だ
  2. 歴史映画

    映画「黒衣の刺客」感想・評価:妻夫木聡、忽那汐里が出演したホウ・シャオシェン監督…
  3. サスペンス

    映画「ピエロがお前を嘲笑う」感想・評価‐大どんでん返し系ハッカードラマだ
  4. SF

    映画「スキャナーズ」感想・評価‐超能力者達のグロイ戦いを描いた傑作だ
  5. カギ猫シロの靴下遊び(凄い跳躍力だね、高い所も征服だ)
PAGE TOP