ミステリー小説

ミステリー小説「夏祭りの怪談」夏祭りの時期になると夢枕に立つ友人

ストーリー


 

僕が住んでいた漁村は夏祭りが盛大に行われる。一年に一回の夏祭りは、昼夜続けて行われる。子供にとっては夜更かしできるし、屋台のお菓子が食べ放題だ。

お祭りには各地区からの山車(だし)が広場に勢ぞろいする・・・静観だ。子供にとってはこの山車は巨大で、かじ取りは若衆たちが担う。山車から突き出た太いハリを肩に乗せて方向転換するのだが力仕事だ。

気性の激しい漁師町だ。若衆は顔に化粧をほどこし、お神酒で威勢をつける。そして昔ながらの半纏に脚絆・足袋・わらじ・たすき・・・祭りの衣装を着こんでの晴れ舞台となる。

子供たちは太いロープの先に集まってこれを引っ張りながら町を練り歩く。この山車は海に入ることもある。町の発展と五穀豊穣を祝い、魚が獲れるよう祈願するのだ。

この夏まつりの時期になると帰省者や観光客で人口が2・3倍になる。町が活気づく1年のうちでも数少ない時だ。しかし、こんなハレの日であっても僕にとっては憂鬱な時期となる。

もう60年近く昔になる、小学4・5年生のころだ。僕の友人A君がこの山車と建物の間に挟まれ亡くなっている。それ以来数年間その地区のお祭りは取りやめとなった。

その頃から、夏祭りの時期になると、A君が僕のところに来るようになった。僕の枕もとの近くにいたり、足元にいたり、夢の中まで入ってくる。僕は夢の中で彼と遊ぶ。彼は楽しそうだが時よりふと寂しそうな顔をする。そしてお祭りが終わると何処かに帰ってゆく。

僕は怖くないのだが彼の悲しい顔をみるのがつらい。夏祭りの日までどこにいるのと聞いてみた。彼は夢の中で丘の中腹の小さな神社へと僕を誘う。そこの神社は僕も知っていて寂しいところだ。

 

そしてそんなことが3年ほど続いた。僕は中学生になっていた。ある日、僕のクラスに転校生が来た。その子が教室に入ってきたとき、僕はびっくりして転校生をまじまじ見た。

亡くなったA君そっくりなのだ。生き写しと言ってもいいかもしれない。僕はその転校生と仲良くなった。彼とは昔からよく知っているような気がする。そんな不思議な感覚にとらわれた。

それ以来、夏祭りの時期になってもA君は僕のところに来なくなった。A君の記憶は僕の心から徐々に薄れてゆく。そして転校生とはよく遊んでいたが彼は別の高校に行ってしまった。

僕はその後大学、就職と場所を転々とし、家にはほとんど帰っていない。あのにぎやかな夏祭り、A君が転校生を呼んでくれたのか。それとも偶然なのか、今では記憶があいまいになってきている。

確かに、僕はあの転校生と仲良く遊んだのだが写真などの証明するものがない。果たしてあれは僕の作り出した幻想なんだろーか。今年も夏祭りがある。いつもそんなことを思い出す。

TATSUTATSU

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