ヒューマンドラマ

映画「フォードvsフェラーリ」感想・評価:時速370㎞の世界を垣間見せてくれる体験型実話ドラマ

サマリー


★★★★☆(見るべき名作)

2020年1月日本公開のアメリカ製作ヒューマンドラマ
監督 ジェームズ・マンゴールド(アイデンティティー、ウルヴァリン:SAMURAI、LOGAN/ローガンフォードvsフェラーリ
出演 ●マット・デイモン(グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちプライベート・ライアン、ボーンシリーズ、インターステラーグレートウォールジェイソン・ボーンフォードvsフェラーリ
●クリスチャン・ベール(アメリカン・サイコ、リベリオン、バットマンビギンズ、ターミネーター4、アメリカン・ハッスル、エクソダス:神と王、マネー・ショート華麗なる大逆転、フォードvsフェラーリ
●カトリーナ・バルフ(フォードvsフェラーリ
●ノア・ジュープ(クワイエット・プレイス、クワイエット・プレイスPARTⅡ、フォードvsフェラーリ

映画『フォードvsフェラーリ』予告編 2020年1月10日(金)公開

 

タイヤのきしむ音、エンジンの轟音、衝突の衝撃とバラバラになった車体が目の前に降ってくる恐怖。いやそれだけではない焦げたタイヤ、ガソリン、排気ガスの臭いが伝わってくるド迫力映画だ。

時速370㎞の世界、そこには極端に狭くなった視野と人間がコントロール出来るギリギリの空間が現れる。瞬間の判断ミスが命取りとなる。心拍数が130を超えるという。並みの感覚・神経では耐えられない。アクセルを踏み込めば車体が砕けそうなほどの悲鳴が上がる。もし、僕が助手席に座っていたら大をちびっていただろう。

過去からレースドライバーのドラマには名作が多い。スティーブ・マックイーンの「栄光のル・マン」、ポール・ニューマンの「レーサー」などが思い起こされる。でも、この臨場感は最新映像技術、音響技術のたまものだ、レーサーになった気分でコースを失踪できる。それにレーサーの心理までもが伝わってくる。

おすすめ映画だ、この迫力は映画館でなければ味わえない。マット・デイモンとクリスチャン・ベールが火花散らす人間ドラマも見ごたえあり。カーレースの好きな人は必見だがそうでない人も十分楽しめる。

2020年アカデミー賞で作品賞・編集賞・音響編集賞・録音賞の4部門でノミネートされている。こんな質の高いドラマは久々だ。1960年代の実話がベースになっている。名車を残してくれた彼らはもうこの世にはいないが過ぎ去ってゆく古き良き時代を巻き戻すことも必要だね。監督は「LOGAN/ローガン」のジェームズ・マンゴールドだ、非凡な才能を見せている。

左端キャロル・シェルビーと右端ケン・マイルズ

話のスジを少し紹介すると。キャロル・シェルビー(マット・デイモン)はレーシングドライバーとして1959年ル・マン24時間耐久レースで優勝する。ところが彼は心臓病のためレースから引退せざるを得なかった。

彼はスポーツカーのデザイン会社「シェルビー・アメリカン」を設立する。ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)はイギリスのレーサーだがアメリカに移住し、自動車整備工場を運営しながらレースに参戦していた。ケン・マイルズが出場したレースを見ていたシェルビーは彼の非凡さを見抜く。

1963年フォード・モーターの会長ヘンリー・フォード二世(トレイシー・レッツ)は販売の伸び悩みを解消するため施策を考えていた。副社長兼総支配人のリー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)は若者に車をアピールするためフェラーリを買収することを提案する。

フェラーリはル・マン24時間耐久レースを4連覇し、世界中のカーキチの心をつかんでいたが経営は苦しかった。アイアコッカはフェラーリ買収の交渉に入る。ところが買収に失敗したどころかフィアットに買われてしまったのだ。フォードは売値を吊り上げるためのダシに使われたことに激怒する。

怒ったフォード二世は1964年のル・マンでフェラーリを打ち負かしてやると宣言する。アイアコッカは昔から付き合いのあるシェルビーに白羽の矢を立てる。シェルビーは快諾しレース・ドライバーとしてマイルズをチームに誘い入れる。

シェルビーは90日でフェラーリを打ち負かすマシンを作るとマイルズに打ち明けるが笑われてしまう。それにマイルズのレーサーとしての腕は超一流だが気が短くフォード上層部に嫌われていた。果たしてシェルビーのチームは目標を達成することが出来るのか。

その後のストーリーとネタバレ

マイルズには妻のモリー(カトリーナ・バルフ)、息子のピーター(ノア・ジュープ)がいた。彼の自動車修理工場は国税局に差し押さえられ窮地であったがシェルビーの破格の申し入れ(200$/日の報酬)に救われる。

シェルビーとマイルズは来る日も来る日もフォードGT40をベースにしたマシンの改良に明け暮れる。1965年にフォードはル・マンに参戦するも惨敗してしまう。優勝したのはフェラーリだった。

1966年ドライバーとしてのマイルズは絶好調だった。デイトナ24時間、セブリング12時間で圧勝する。そしてル・マン24時間、彼はデニス・ハルムと組んでトップを独走する。2位、3位もフォードだ。

ところが、フォード・モータースポーツ部門を統括するレオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)はフォード3台を並んでフィニッシュさせろとシェルビーに圧力をかける。シェルビーは悩んだ末、マイルズに一任する。

マイルズは独走態勢を貫こうとするが最後には減速しフォード3台が並んでゴールを通過させる。彼は自分を殺しチームプレーに徹したのだ。フォードはマイルズの優勝より車販売へのアピールを優先させた。

マイルズは残念ながら2位に甘んじなければならなかった。少し遅くスタートしたクリス・エイモン/ブルース・マクラーレン組のフォードが優勝したのだ。

失意のマイルズはしばらくレースから離れ、GT40の後継車Jカーの開発に心血を注ぐ。彼は1966年8月17日テスト中にコースアウトし、炎上する車の中で47歳の短い生涯を閉じる。息子のピーター、シェルビーの目の前の出来事だった。

ある日シェルビーはモリーとピーターを訪ねる。そしてピーターに「スパナ」を渡す。この「スパナ」はシェルビーがマイルズに出会った最初の日、彼から投げつけられた「スパナ」だった。

レビュー

この実話は今から50年以上前の出来事だ。シェルビー、マイルズ、ヘンリー・フォード2世、リー・アイアコッカなど実在した人物の名前が出てくる。

やはり、実在の人間を登場させるには50年以上の年月が必要だ。この映画ではクリスチャン・ベール扮するケン・マイルズに光を当手ている。彼の輝かしい業績は埋もれてしまっていたがやっと日の目を浴びた。

スビード・レースを見ていてブレーキの重要さを感じる。ドライバーは時速400㎞に近いスピードで加速する。マシーンがうなり声をあげるが、果たしてブレーキを踏めば減速できるのか恐怖と戦わなければならない。

ディスクブレーキが真っ赤になって溶けそうだ。フォードはそんなブレーキをユニット称してタイヤと同じように交換する。フェラーリ側は文句を言うが合法だ。

1955年にル・マン史上最悪の自動車事故が起こる。マシン同士の接触事故で破壊された車部品が観客席に飛び込んだ。86人が死亡し、200人が重軽傷を負っている。まさにレースは生死、隣りあわせだ。今ではかなり改善され事故は少なくなったといえども無くならない。

マシンを生き物ととらえれば、これを極限状態で乗りこなすには相当の技量と車の構造を熟知しなければならない。どこでセーブしどこでギヤチェンジし、何処でアクセルを踏み込むか。もう「神の領域」だね。

TATSUTATSU

 

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