ヒューマンドラマ

映画「運び屋」感想・評価:クリント・イーストウッド人生最後の監督・主演ロードムービーだ

サマリー


★★☆☆(そこそこ面白い)

2019年3月日本公開のアメリカ製作ヒューマンドラマ
監督 クリント・イーストウッド(硫黄島からの手紙、アメリカン・スナイパーハドソン川の奇跡15時17分、パリ行き運び屋
出演 ●クリント・イーストウッド
●ブラッドリー・クーパー(ハングオーバー、リミットレスアメリカン・スナイパー、世界にひとつのプレイブック、海外ドラマ リミットレス二ツ星の料理人アリー/スター誕生運び屋
●ローレンス・フィッシュバーン(地獄の黙示録プレデターズバットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生シグナルマトリックスシリーズハンニバルパッセンジャー運び屋
●マイケル・ペーニャ(ファーリー、アントマン、オデッセイ、運び屋
●ダイアン・ウィースト(シザーハンズ、運び屋

クリント・イーストウッド監督・主演『運び屋』特報

 

好き嫌いのわかれる映画だ。アクションやエンタメ系が好きな人には向かない。古き良きアメリカのロードムービーだと思って見た方がいい。80代で麻薬の運び人をはじめ、10年近く大量の麻薬を運び続けた男の実話がベースになっている。

クリント・イーストウッドは監督と主演だが驚くことに88才だ。まさに映画界のレジェンド。この歳でも制作意欲が枯れないタフさを感じる。しかし、映画は全編にわたり穏やかな印象を受けるのは、彼の歳のせいかもしれない。

共演者としてブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィーストが穏やかに脇を固めている。

原題の「THE MULE」、ミュールとはラバのことだが「麻薬を密輸するために外国から運び屋として雇われるしろうとの旅行者」と言う意味もある。

クリント・イーストウッド監督は今まで、「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」「15時17分、パリ行き」と正義の味方を描いてきた。しかし、今回は悪人、180度の転換だ・・・どうしたんだろう。麻薬の運び人映画としてはトム・クルーズの「バリー・シール」を思い出す。バリー・シールは組織に暗殺される・・・自業自得だ。

モデルとなった実在の「運び屋」レオ・シャープは相当な「ワル」だったと聞く。彼は1924年生まれ、第二次世界大戦の退役軍人で犯罪歴はない。テキサス州エルパソからデトロイトに毎月ドラム缶1本分(約200キログラム)以上のコカインを運び続け、多くの中毒患者を地獄に送っている。

彼は麻薬組織シナロア・カルテルと家族のように接していたとも聞く。そして運び賃1億円を受け取っていた。2011年にDEA(麻薬取締局)に捕まった時、実に87才だった。懲役20年の求刑を受けたが高齢のため3年程度の服役だったらしい。そして92才で亡くなっている。残念ながら僕はこの映画に感情移入出来なかった。

話のスジを少し紹介すると。2005年退役軍人アール・ストーン(クリント・イーストウッド)はデイリリー(1日だけ開花するユリ)の栽培に心血を注ぎ人生をかけていた。一人娘アイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式をすっぽかし、妻メアリー(ダイアン・ウィースト)とは離婚し、家庭を顧みることはなかった。

12年後、インターネット販売に対応できないことからデイリリーの販売は低迷する。そして家も農場も差し押さえられてしまう。ある日アールは、孫娘ジニー(タイッサ・ファーミガ)の結婚が決まったのをお祝いするパーティーに出席する。

その場所である男から簡単に金がもうかる仕事があると名刺を渡される。家族との関係を修復するには金が要る。そこに行ってみるとどうも胡散臭い仕事の様だ。堅気では無い連中が拳銃を持ち、待ち構えていた。コカインの運び屋の仕事だったのだ。

最初は恐る恐る、車を走らせ目的地に「ぶつ」を運ぶ。ところが半端ない金が車に置いてあった。そして「運び屋」稼業がエスカレートしてゆく・・・・果たして彼はどうなってしまうのか?

その後のストーリーとネタバレ

ニューヨークとワシントンで実績を上げたコリン・ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)がDEAシカゴ支局に赴任してくる。上司は主任特別捜査官(ローレンス・フィッシュバーン)、そしてトレビノ捜査官(マイケル・ペーニャ)が協力してくれる。

コリンはシナロア・カルテルの末端構成員を脅し、情報提供者とする。そのころ、アールは一回目の報酬でおんぼろトラックをリンカーンの新車に買い変える。

二回目の報酬で差し押さえられている農場を取り戻す。そして孫娘の教育費や軍人会にも寄付をしたりと表の顔は頼もしいおじいちゃんだ。アールは悪いことと知りながら「運び屋」がやめられない。次々と実績を上げてゆく。

アールはカルテルのボス、ラトン(アンディ・ガルシア)からメキシコの豪邸に呼ばれ歓待を受ける。彼は独特の運搬方法でDEAの捜査官たちを翻弄してゆく。コリン達もまさか90才近い男が「運び屋」とは考えられない・・・ここが盲点だ。

そんなラトンも部下に暗殺されカルテルを乗っ取られる。コリンとトレビノは「タタ(じいさん)」と呼ばれる凄腕の「運び屋」の情報を掴む。大量のコカインを運ぶ途中に元妻メアリーの危篤を知る。アールはメアリーのもとに駆け付け最期を看取る。そして葬儀にも出席する。

カルテルは運搬途中で連絡の途絶えたアールを探し回る。そして、見つけたアールにリンチを加える。DEAはヘリコプターも動員し、やっと「運び屋タタ」を確保する。車から出てきた「タタ」は何と90才近いじじいだった。

アールは裁判にかけられ、自ら「自分は有罪だ」と主張する。そして刑務所に収監される。刑務所の花壇にデイリリーを植え付けるアールの姿があった。

レビュー

レオ・シャープは裁判で「もし刑務所に入らなくていいのなら50万ドルのペナルティをハワイアンパパイアで支払う」と訳の分からないことを言っている。彼はこの頃かなりモウロクしていたようだ。高齢によって罪悪感が薄れたのかもしれない。

クリント・イーストウッドも波乱万丈の生涯を送っている。女性遍歴が激しく5人の女性の間に7人の子供がいる。俳優・監督業のソンドラ・ロックとの12年にわたる愛人関係は有名だ。

クリント・イーストウッドはレオ・シャープの波乱万丈の生涯を自分と重ね合わし、この映画を作ったのかもしれない。しかし、晩節は汚してはいけない・・・清く生きないとね。

TATSUTATSU

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