ホラー

映画「The EYE【アイ】」感想・評価:臓器移植によってドナーの細胞記憶は引き継がれるのか?

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2003年日本公開の香港・シンガポール合作のホラー・サスペンス映画
監督・脚本 オキサイド・パン、ダニー・パン(The EYE【アイ】)
出演 ●アンジェリカ・リー(The EYE【アイ】)
●ローレンス・チョウ(The EYE【アイ】)

The Eye (Trailer – ENG)

 

この映画は少々古いがホラー・サイキック・サスペンス・ラブストーリーと4つも同時に楽しめる秀作だ。タイの実話「角膜移植で視力を手に入れた少女が1週間後に自殺した」をベースにしている。少女はいったい何を見たのか、それとも現実社会の醜さに絶望したのか・・・?

よく論争になるが、臓器移植によってドナーの細胞記憶まで移植されるのか。例えば、肝臓移植された人が今まで酒が飲めなかったのに飲めるようになったとか。大量に輸血を受けたら性格が変わってしまったとか。世の中には、こんな不思議な現象が多くある。

この映画では実際に幽霊を見た人のエピソードも挿入されている。これも必見だ。突然、車の事故などで即死した人の魂は自分が死んだとも知らずその場に浮遊し続けるのか。

〇病院に勤めていた友人が夜中、歩く黒い影をよく見たそうだ。すると、翌日必ず人が死ぬ。
〇車に乗っていたときにとても古い背広を着た老人を見た。でも、そこは高速道路だった。人がいるはずがない。
〇ホールでエレベーターを待っていた時、監視カメラには何も映っていなかったのに、ドアが開いたら中におじいさんがいた。彼は隅で背を向け頭を垂れていたそうだ。

ユーチューブの予告編だ。

アイズ 予告編

 

この映画のリメイク権をトム・クルーズが買ったことでも有名になった。そして2008年ジェシカ・アルバ主演で「アイズ」としてハイウッド・リメイクされている。時間があればこれも見るのもいいね。

話のスジを少し紹介すると。2歳の時に失明したマン・ウォン(アンジェリカ・リー)は約19年間暗闇にいたが角膜移植の手術を受け視力を取り戻す。彼女はもう一度世界が見たいと言う。

目の包帯を取る時もの凄く不安だ。目がとても痛く視界がぼやける。脳と目が連動するのに時間がかかる。移植後の視力は0.04程度だ。筋肉が角膜になじんでも0.2~0.5程度までしか上がらない。

しかし、マンは光りの世界が見えたことに喜びを感じる。鏡で自分の顔を見る・・・こんな顔だったんだと感動する。ベッドの隣にはインインと言う少女がいて、一緒に写真を撮ってくれる。

夜中に黒い影を見る。そしてその影は同室のおばあさんを廊下に連れてゆくのがかすかに見える。不思議なことに二人はドアをすり抜けたように見える。次の朝、そのおばあさんは亡くなっていた。

退院の日、姉がタクシーで家まで連れて言ってくれる。その時マンは高速道路に背広を着た老人が立っているのを目撃する・・・ここは高速道路の中なのに。

マンは心理療法を担当するワ・ロー先生(ローレンス・チョウ)に会う。何故なら彼女は2歳の時に失明しているから、視覚語彙などを勉強しなおさなければならないからだ。そして、今まで触覚で認識していた物を視覚で認識しなければならない。そして心理状態もケアする必要がある。

マンはアパートに戻る。ドアの近くに子供がいた。子供に話しかける。ところが彼女の母親は空間に向かって話をしているマンを見てびっくりする。その子供は亡くなっていた。

マンは夜不思議な夢を見る。天井の扇風機が回っている病院らしきところにいた。そして目が覚めると自分の部屋が別の部屋に見える。

外では、昼間でも恐ろしい女が彼女に向かって来たり、中華料理店の肉をなめに来る子供連れの女も見る。子供が自分の体をすり抜けて来る。交通事故で即死した子供の様だ。子供は黒い影に連れられてどこかに行ってしまった。

マンは今までの出来事をロー先生に打ち明ける。他人には見えないものが自分には見える。毎日怯えて暮らすのは嫌、普通に戻りたいと。ローはマンが幽霊を見ているのではないかと思うが・・・信じられない。

更に、悲劇は続く、アパートのエレベーターで頭が大きく窪んだおじいさんが近寄ってくる・・・発狂しそうだ。そしてマンは暗い部屋に閉じこもる。彼女はバイオリンの演奏中に倒れ、病院に担ぎ込まれる。

そこで、隣のベッドにいたインインに会う。彼女は寂しそうだった。そして彼女の後ろにいる黒い影に連れてゆかれる・・・インインは手術中に亡くなったのだ。ロー先生からインインと一緒に撮った写真を渡される。写真を見たマンは驚く・・・これは私ではないと。

本当はマンの顔なのだが、鏡に写った自分は違っていた。果たして鏡に映った女は何者なのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

このままではマンが危ないと感じたローはドナー情報を彼女に教えてしまう。彼はマンと一緒にタイのバンコクに飛ぶ。そしてドナーを探り当てた・・・リンだ。

リンは小さい時から孤独な少女だった。彼女が泣いている近くの家では必ず死者が出る。だから疫病神と言われ気味悪がられた。彼女は死が予知できたのかも知れない。

ある日、リンが何かに憑かれたように叫ぶ姿を多くの人が見たが無視した。その後村は大火事で300人もの焼死者が出た。そして翌日彼女は首を吊って自殺した。彼女は未来をも予知できる能力を持っていたのだ。

マンはリンの部屋を見る。見覚えのある部屋だった。幻のように見えた場所はここだったのだ。鏡に映った顔はリンだった。そして彼女はマンをここに呼び寄せた。リンの魂はここに残り自殺を繰り返しているようだ。

これを止められるのは母であるあなただとマンは主張する。夜中の3時にリンの魂は来る。そしてリンが自殺するのを母親が助ける・・・彼女の魂は解放されたのだ。

マンはローとバスに乗って空港へと急ぐ、ところが途中で多くの魂がバスの外を駆け抜けてゆくのを見る。マンは大火災で多くの人が亡くなる予知夢を見る。道路は渋滞し、前方では燃料を積んだトレーラーが横倒しになっていた。

マンは車から早く出て避難しろと叫びながら走り回るが誰も動こうとしない。その時爆発が起こりローは彼女をかばって道路に伏せるが彼女は爆発の破片を受け元の盲目に戻ってしまう。

しかし、この方が普通の人間に戻れて楽だ。それにいつもローが寄り添ってくれる。

レビュー

主演はマレーシアの歌姫アンジェリカ・リーだ。彼女は日本人によく似ているから親近感を感じる。この映画のテーマは「細胞記憶」だ。

この細胞記憶は二種類に分けられている。

〇「個々の細胞の遺伝子発現パターンの差異が細胞分裂を経ても維持される。」こと。つまりDNAに加えられた後天的な修飾が維持されること。
〇「人間の思い出や癖、嗜好が脳だけではなく一つ一つの細胞に記憶されている。」例えば心臓移植を受けた女性が心臓の持ち主だった女性の恋人を見て、胸が高鳴る。・・・・映画やドラマのストーリーになっている。

後者の人間の思い出や癖、嗜好が細胞にまで記憶されているかどうかははなはだ怪しいが完全否定することは出来ない。この映画のように幽霊を見ることが出来る人の角膜移植によってその能力も移植される。

面白いテーマをホラーとして取り上げたことがこの映画の成功に繋がっていると思うね。ところで演出かどうかは分からないが上の映像をよく見るとガラス面に「幽霊」が映り込んでいる。これは「心霊写真」なのか?

TATSUTATSU

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