ホラー

映画「ビバリウム」感想・評価:無理やり育てさせられる子供の正体は悪魔か宇宙人か

サマリー

 


★★☆☆(そこそこ面白い)

2021年3月12日 日本公開 アイルランド・デンマーク・ベルギー合作ムナクソ・ホラー
監督 ロルカン・フィネガン
出演 ●イモージェン・プーツ
●ジェシー・アイゼンバーグ

精神崩壊!?一度入ると抜け出せない恐怖の街 映画『ビバリウム』予告編

 

「ビバリウム」とは爬虫類や両生類が棲む環境を再現したケージのこと。冒頭、托卵性の鳥カッコーが巣の中で卵やヒナを巣から落とす映像が出てくる。カッコーは自分では子育て出来ないから、別種の鳥の巣に卵を産む。

いち早く卵からかえったヒナはライバルを殺してしまう。育ての親は自分より大きなカッコーのヒナにエサを運び続ける。カッコーのヒナはいつもお腹を空かし、鳴き続ける。

自分の子供を殺され、さらにカッコーのヒナを育てなければならない。人間であったらとてもやりきれない。そんな感じの「ムナクソ・ホラー」だ。冒頭の映像が、ドラマのすべてを暗示している。

出てくる登場人物たちが1組のカップルを除いて不気味だ。こいつらはいったい何なんだと思う。人間の姿をしているがおかしい・・・そしてその理由が明らかになった時には手遅れだ。

庭師のトム(ジェシー・アイゼンバーグ)と保育士のジェマ(ジェシー・アイゼンバーグ)は家の購入を考え不動産屋を訪れる。店の販売員マーティンは新しく開発された住宅地、ヨンダーを勧める。

マーティンは2人が乗った車を先導し、目的地に到着、№9と書かれた家を案内する。ところが突然マーティンが消えてしまう。2人は不気味なマーティンや同じ建物が無数に並んだ住宅地に違和感を感じ、ここから早く離れようと車を走らす。

ところが何度も何度も来た道を引き換えしても、№9と書かれた家に戻ってくる。そのうちガソリンが無くなる。それでも2人は徒歩でここから脱出しようと試みるが無駄だった。腹を立てたトムは家に火をつけ燃やしてしまう。

ところが次の朝、家は元通りに戻っていた。茫然とする二人の前にダンボール箱が届く。箱を開けると中には男の赤ちゃんが入っていた。箱には「この子を育て上げればあなたたちは解放される」と書かれてあった。

2人は子供を育てるしかないと家で生活を始める。食事は定期的に家の前にダンボール入りで届く。届いた材料で食事を作るが、出来たものは無味・無臭で、食べれたものではなかった。

赤ちゃんは100日足らずで小学生ほどの大きさになる。成長スピードは犬並だ。子供はお腹が空くと金切り声をあげる。食事を与えない限り叫びを止めない。

子供はとても人間の子とは思えない。大人のような声を出して、いつもトムとジェマを監視しているようだ。こいつの正体は何なのかと悩む。夜中には不思議な図形をテレビで見ている。

トムはここから逃げようと庭に穴を掘る。そして来る日も来る日も掘り続ける。子供は成長するにしたがってより不気味になる。いっそのこと車に閉じ込めて餓死させようともするがそこまでは出来ない。

子供はどんどん成長する。二人とも子育ての疲労で、精神と肉体が衰弱してゆく。果たしてこの子供は悪魔なのか、宇宙人なのか、それとも異生物なのか。そして二人の運命は・・・。

TATSUTATSU

ネタバレとレビュー

トムは庭を深く掘り下げてゆくと死体袋に突き当たる。庭に死体が埋まっていることに驚きと恐怖で廃人のようになってゆく。ジェマは青年になった子供に「トム」を助けてと懇願する。

ところが彼は助けるどころか死体袋を持ってきてトムをその中に入れ、穴の中に放り込んでしまう。これを見ていたジェマはつるはしを持って青年に殴りかかる。慌てた青年は道路と家との段差をめくって四つん這いで地下に逃げる。今いる空間に穴を開けたのだ。

ジェマは後を追いかけ、地下に入っていくとそこには多くの別世界があった。その世界を次から次へと通り抜けると自分たちと同じように子供を育てさせられているカップルたちを目撃する。中には、子育てに絶望し、自殺した人たちもいた。あまりに悲惨な光景を見た彼女は絶望する。

そんなジェマを見た青年は彼女を死体袋に入れる。ジェマは青年に「私はあんたのママなんかじゃない」と最後の言葉を投げつける。

トムとジェマは子育ての役割を終了したのだ。つまり解放されると言うことは死ぬことだった。ジェマも穴に投げ入れられ、青年は土で穴を埋める。

青年は人間の街に行き、不動産屋を訪れる。店の販売員マーティンは既に亡くなっていた。彼らは成長は早いが寿命も短い。青年はマーティンの名札を自分の胸に付け、後を継ぐ。このようにしてこの種族は次の人間のカモを見つけて地球で生き続けてゆくのだ。

この生き物はいったい何なのか、監督は「宇宙人」だと言っている。この宇宙人は地球に住んでいる、人間に子供を育てさせ、地球征服を考えているのだろうか。

カッコーが托卵させる別種の親鳥を絶滅させないように、この「宇宙人」も地球人を絶滅させないように考えているようだ。そうでないと「宇宙人」たちも絶滅してしまう。

この「宇宙人」は4足歩行だ。喉を膨らまして声を出し、意思の疎通をおこなっている。僕らから見ると「ガマガエル」や「オオトカゲ」のようだ。とにかく無表情なところやノッペリしたところが気持ち悪い。

主人公たちが殺されてゆく、多くの人間も不幸だ、バッドエンドの「ムナクソ・ホラー」だ。どうですか、もう一回見たいと思いますか。

 

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