サマリー
2016年日本公開の韓国製作ホラー映画
監督 チャン・ジェヒョン(プリースト 悪魔を葬る者)
出演 ●キム・ユンソク(チェイサー、哀しき獣、海にかかる霧、プリースト 悪魔を葬る者)
●カン・ドンウォン(デュエリスト、群盗、プリースト 悪魔を葬る者)
●パク・ソダム(プリースト 悪魔を葬る者)
韓国で500万人以上動員したヒット作だ。一言で言えばエクソシストの韓国版になる。韓国のキリスト教人口は約3割と言われている、それにひきかえ日本は2%程度だ。
韓国において、キリスト教文化はしっかりとした土壌がある。だからこれだけヒットしたのかと言うと必ずしもそうとは言えない。悪魔祓いがやけにリアルなのだ、何が起こるか先が読めない・・・チャン・ジェヒョン監督の手腕が光る。同時期に公開された「哭声/コクソン」も同系統だ。
それに韓国のアイドル カン・ドンウォンの出演が意表をついて面白い。彼は色んな役をやりこなす。彼が演じる補助司祭アガトが実に素直な演技で女性ファンのハートをくすぐる。見て損はない作品だと思う。
女子高校生が薔薇十字団の追っている12悪魔の内、1体に憑依される。彼女は医者・祈祷師などによって治療や悪霊払いが施されるが全く回復の見込みが見られない。キム神父(キム・ユンソク)は彼女を助けるためにはもう悪魔祓いしかないと決断する。
現代社会に悪魔祓いなど時代遅れで、ソウル大司教区の指導者たちはこれを公に出来ないから尻拭いをキム神父だけに押し付ける。彼は補助司祭アガト(カン・ドンウォン)を率いて壮絶な悪魔祓いの儀式に身を投じてゆく。
ストーリー
世の中には薔薇十字団が追っている12の悪魔がいる。その中の一体が韓国にいると言う情報が入る。ローマの二人の神父は韓国に出張し悪魔祓いによって悪魔を子豚に封じ込める。それを処分する途中に彼らが乗った車が女子高校生をはねる。神父たちはその後自動車事故に逢い悪魔が解放されてしまう。
ひき逃げ事故のあと高校生の少女ヨンシン(パク・ソダム)は原因不明の病気になり、窓から飛び降り自殺を図る。一命を取り留めたものの脳死状態となる。医師による治療を試み、さらに祈祷師まで呼んでお祓いをさせるが効き目がない。
ソウル大司教区の指導者たちは秘密裏に悪魔祓いをキム神父(キム・ユンソク)に依頼する。この悪魔祓には医師のパク教授が付き添う。そして最も重要な補助司祭を誰にするか人選を行う。
補助司祭はドイツ語・ラテン語・中国語に堪能で勇敢で大胆でなければならない。そして霊感の強い寅年であること・・・これらを満足するアガト(カン・ドンウォン)が選ばれる。アガトは前の補助司祭を訪問し、引継ぎを行う。
そしてキム神父と補助司祭アガトは悪魔祓いの儀式を始める。儀式書に従って悪魔祓いを進めてゆくが、アガトにとっては思いもよらないおぞましい経験をすることになる。
誰もが途中で投げ出したくなるほど壮絶な悪魔との闘いが待っていた・・・。
ネタバレとレビュー
ヨンシンの部屋に入ると肉が腐ったような悪臭が漂う。アガトは匂い止めのクリームを鼻の下に塗り、キム神父は女性フェロモンを自分とアガトに吹きかける。悪魔は男らしい、神父たちが男だと気付かれたら乗り移られてしまう。
部屋の中に結界を塩で作り、アガトは結界の外に陣取る。大天使聖ミカエルへの祈り、そして解放の祈りへと儀式を進行する。ヨンシンは突然しゃべり始める「神父さんやめて」「この神父は私をさわったのよ」「私に触れるなこの色魔」と暴言を吐く。
おびただしい猫が部屋に集まってくる。ゴキブリやハエもそこ等じゅうから集まってくる。今度は鼠だ・・・。ヨンシンの形相が邪悪に変化してくる。
キム神父は悪魔に向かって「何故ここに来た」と問う。「お前たちのような愚かなケガれたサルだと言う事を証明するためだ、ホモサピエンス」と叫ぶ。さらに「お前たちは誰に使えているのだ」と問う・・・。
キム神父は全部で4人の人格が出てきたと判断する。さらにアガトはフランシスコの鐘を鳴らす。ヨンシンは苦しみだし多量の血を吐きだす。キム神父がヨンシンの首を絞めて殺そうとしている幻影を見たアガトはとっさに神父に飛びつき彼の首を絞める。
悪魔が見せた幻影にダマされたアガトは結界を超えてしまっていた。悪魔はアガトに心のキズを幻影にしてどんどん精神的に追い詰めて来る。彼は我慢出来ずに部屋から飛び出し路地裏に逃げ込んでしまう。
アガトは妹が犬に襲われて亡くなったときのことが頭に蘇る。その時、何故自分は助けに行かなかったのか・・・今回も逃げるのか。アガトは目が覚める、そしてキム神父のもとに戻る。
ヨンシンの両親は悪魔祓いを止めさせるために警察を呼ぶ。キム神父は「もう時間が無い、最後の一人をヨンシンから呼び出すのだ」と悪魔祓いを再開する。悪魔を封じ込める子豚の血でヨンシンの額に十字を書く、そしてアガトは硫黄を焚き、聖歌を歌う。
ヨンシンの中にいる悪魔が「マルベス」と名乗り「私は世の光を消すために来た」と言う。そしてその悪魔は子豚に乗り移るとともに彼女の心臓が停止する。安らかに天国へ旅立てとキム神父は涙を流す。
一時間以内に水深15mよりも深い川にブタを捨てなければならない。アガトはブタを抱え漢江目指して突っ走る。悪魔は次から次へと妨害してくる。アガトは川にかかる橋に近づく、体中に発疹が現われ、意識が朦朧としてくる。アガトは最後の力を振り絞ってブタを抱いたまま川に飛び込む。
その時、ヨンシンが生き返る、そして神父の体の発疹も消えてゆく。しばらくしてアガトは川から陸に上がり、来た道を戻る。彼の顔は勇気と喜びに満ち溢れていた・・・。
この映画に出て来る悪魔は5,000年間に2,430人に乗り移ってきたと言っている。名前は「マルベス」又は「マルバス」とも言うらしい?。悪魔祓いの様子をリアルに表現しているところがこの映画の「キモ」だ。
エクソシストによる悪魔祓いのテーマは繰り返し映画になっているが、こんな解釈の仕方もアリだと思う。キリスト教徒でなくても充分楽しめる。このドラマの結末シーンは陰暦7月15日の中元節(仏教におけるうら盆)に起こっている、仏教とも関係があるのも面白い。
結局、人間の勝利に終わる。最後のカン・ドンウォンの大仕事をやり終えた後の逞しさにしびれるね。
TATSUTATSU
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