サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2018年日本公開のアメリカ・イギリス合作カルト教団ホラー
監督・脚本・製作 ギャレス・エヴァンス(アポストル復讐の掟)
出演 ●ダン・スティーヴンス(ザ・ゲスト、誘拐のおきて、美女と野獣、リディバイダー、ダウントン・アビー、レギオン、アポストル復讐の掟)
●マイケル・シーン(パッセンジャー、アポストル復讐の掟)
●ルーシー・ボイントン(シング・ストリート未来へのうた、ボヘミアン・ラプソディ、アポストル復讐の掟)
アポストル(Apostle)とはキリストが遣わした使徒のことだ。使徒とは誰のことか主人公のことなのか、しかも何故、神はトーマスをカルト教団の中に送り込んだのか?アリ・アスター監督の変態映画「ミッドサマー」を彷彿とさせるような血なまぐさいドラマだ。
とにかく、得体の知れない恐怖で背筋が寒くなる。カルト教団は世界中に無数にある。カルトとは悪しき集団、反社会的な教団のことだ。外から見ると魅力的な新興宗教団体。ところが中に入ってみると真っ黒な恐ろしい世界だったとは・・・。
日本ではかつてのオーム真理教が当てはまる、サリンやVXガス、青酸ガス、生物兵器をまき散らした。自分たちだけが地球上で唯一正しいと信じこませ、後はすべてポア(殺人)しろと吹き込まれる。
この映画のスジを少し紹介すると。1905年トーマス・リチャードソン(ダン・スティーヴンス)は妹ジェニファー(エレン・リス)がカルト教団に誘拐されたことを知る。彼は信者だと自分を偽り、絶海の孤島に単身乗り込む。
表向きは女神を崇拝する自給自足のユートピアだとされてきたが実際、村に入ると何かがおかしい。教団の指導者マルコム・ハウ(マイケル・シーン)は暴力と恐怖で村を支配していた。
トーマスはかつて熱心なキリスト教の布教者であった。ところが中国での布教中に義和団事件に巻き込まれる。教会は焼かれ、信者は殺される。そして自分も激しい拷問を受ける。彼は精神に異常をきたし棄教する。
そんな彼の心のよりどころは妹のジェニファーだけだ。何としてでも妹を助けようと夜になると村の中を探し回る。ところが彼はその後身の毛もよだつ恐ろしい体験をすることになる。
その体験とは、そして村の守り神である女神の正体とは・・・・。
その後のストーリーとネタバレ
この村に国からの暗殺者が送り込まれてくる。トーマスはマルコムが刺されるところを助ける。彼はケガをするがマルコムの信頼を勝ち得る。そして彼の娘アンドレア(ルーシー・ボイントン)が傷の手当てをしてくれる。
トーマスは夜になると家から抜け出し、村を探し回る。いったい妹はどこに監禁されているのか。彼は地下道を見つける。ところがそこでおぞましいものを見てしまう。
教団には間違いなく女神がいた。しかし、女神は村人たちに監禁され、人間の生き血と肉が与えられ彼女から生えている植物が生気を取り戻すところを見てしまう。
彼女は女神ではなく、おぞましい老婆の魔物であった。このコロニーを繁栄させるために村人は魔物を地下に閉じ込める。そして当初は動物の血や肉を口の中に流し込む。そうすれば穀物が多く取れ村は繁栄してきた。
しかし時が経つにつれ、もう動物では効果がなくなる。なんと人間の血肉が必要になってくる。コロニーでは魔物を飼い、それに人間の生贄を与えることによって何とか成り立っていた。最近では魔物も年老い、コロニーを養うだけの力がなくなっていた。
そして彼の妹ジェニファーも、今にも生贄にされそうになる。トーマスは妹を助けて逃げようとしたところ、何者かに後ろから殴られ気を失ってしまう。彼は気が付く、自分自身が細切れにされようとしていた。彼は生贄から血肉を搾り取っている男と格闘し、何とか逃げきる。
魔物がトーマスを呼び止め、頭を両手で押さえ過去の出来事を彼の頭の中にフラッシュバックさせる。魔物のおぞましい記憶と力が彼に伝わる。魔物は自分に火をつけろと言う。
火は魔物を包み込むとともにコロニー全体も炎に包まれる。トーマスはアンドレアに妹を連れてこの島から逃げてくれと頼む。トーマスはアンドレア達の後を追うが格闘時の傷から出血がひどく、船に乗る前に倒れてしまう。
ところが彼の血を吸って植物が茂りだした。彼の顔や体からツルが伸び地面を覆ってゆく。島が蘇り始めたのだ。彼はあおむけになって微笑む、後から追いかけてきたマルコムはトーマスの姿を見て神のように崇める。
レビュー
おぞましいのは魔物ではない。魔物を飼っている人間たちだ。魔物の力を使って村を繁栄させ、暴力と恐怖で村人を支配する。人間が一番恐ろしいのだ。
教団の指導者はマルコムだがその後ろで彼を操っていたのはクイン(マーク・ルイス・ジョーンズ)だ。彼は嫌がる女神を無理やり地下に押し込めた。かつては本当に女神だったかもしれない・・・今では人間の生き血をすする魔物に成り下がっている。
魔物は最後に自分の能力をトーマスに与える。キリストが彼を「使徒」としてこの村に送り込んだ理由が分かる。トーマスはこのまま死んで島の土になってしまうのかそれとも神として皆を導くのか、結末は分からない。
ネットフリックスだからこそこんな残酷な描写が出来る。クインは自分の娘と島を逃げようとした青年を捕まえる。そして生きたまま脳みそに穴をあけて殺してしまう残酷なシーンがある。
あなたはこの恐ろしいドラマを最後まで見ることが出来るのか・・・。
TATSUTATSU
「アリ・アスター監督の変態映画「ミッドサマー」」
この記事へのコメントはありません。