サマリー
2015年日本公開のアメリカ サスペンス探偵映画、監督はスコット・フランク(脚本:マイノリティ・リポート、ウルヴァリンSAMURAI)、主演はリーアム・ニーソン(スター・ウォーズ、キングダム・オブ・ヘブン、96時間シリーズ、フライト・ゲーム)である。
監督のスコット・フランクは脚本家として有名で、今回は監督2作品目である。原作はローレンス・ブロックの探偵小説マット・スカダー・シリーズの「獣たちの墓」がもとになっている。
物語はハードボイルド(固ゆで卵を表す言葉で、転じて感情に流されない、冷酷非情、精神的肉体的にタフな人間を描いた探偵小説)タッチで描かれる。
リーアム・ニーソンの探偵役がハマりにはまっている。190cm以上の長身とガタイの良さ、アルコール依存症の過去を引きずってはいるが、昔デカだった経験と勘そして拳銃の腕を兼ね備えている。
違法薬物の仲介人ばかりを狙う誘拐事件が起こる。彼らは身内の女性を誘拐され身代金を払ったのにもかかわらず、女性は体を切り刻まれた惨殺死体となって発見される。
彼らは警察にとってやましい仕事をしているため、訴え出ることが出来ない。そして無免許探偵マット・スカダーが雇われる。
彼は偶然知り合った路上少年を助手に事件を調べ始める。次第に分かってきた犯人像・・・・・犯人たちは異常者としか考えられないような殺人の手口で、誘拐してすぐに女たちを殺している。
新たな誘拐事件が起こる、今度は少女だ。探偵は少女がすぐに殺されないよう電話で交渉しながら少女と金の交換を画策する。
果たして少女は無事戻って来るのか、そして犯人たちを裁くことが出来るのか、久々に面白いドラマです。是非鑑賞することをお勧めする。
「ダウントン・アビー」でブレイクしている、ダン・スティーヴンス(ザ・ゲスト)も出演している。
ストーリー
ストーリーを紹介すると、1991年ニューヨーク市警の刑事マット・スカダー(リーアム・ニーソン)が立ち寄ったバーで偶然強盗殺人が起きる。
マットは逃げる強盗達を追いかけ射殺する。ところが運が悪いことに彼が放った流れ弾が少女を即死させる。しかも彼はその時に酒を飲んでいた。
マットは自分自身に責任を感じ刑事を辞める、そして酒を断つ決心をする。
1999年彼は無免許の探偵業をしていた。彼のところに断酒会仲間のピーター(ボイド・ホルブルック)が相談しに訪ねてくる。
彼の話しは弟ケニー(ダン・スティーヴンス)を助けてやってほしいとのことであった。マットはケニーの所に行き話を聞く、彼が言うには「昨日妻を誘拐され、身代金を要求された」そして「直ぐに40万ドル払った」ところが妻は細切れに惨殺された姿で戻ってきたとのことであった。
マットはこの事件はFBIの管轄だ、そちらに連絡してはどうかとアドバイスするが、ケニーはどうも違法薬物の仲介人らしく、警察にこのことが知れるのを嫌がった。
ケニーはマットに「妻を殺したやつらを見つけろ、前金で2万ドル、捕まえたらさらに2万ドルの謝礼を払う」と言う。彼は一旦断ったが、ケニーの「どうしても妻の仇を取りたい」と言う強い意志に負け引き受けることにした。
マットは調査を開始した。まずケニーの妻が死体で見つかった場所や誘拐されたと思われる商店街での聞き込みを徹底的に行う。そして彼は図書館で過去の新聞を調べ、同様の事件が無かったか調べる。
図書館で、路上で生活している少年TJ(ブライアン・アストロ・ブラッドリー)と知り合い、成り行きから調査を手伝ってもらうことになる。
マットはパソコンが苦手らしい、パソコンに精通しているTJはインターネット検索で同様の事件を見つける。かなり前にグリーウッド墓地で女性の惨殺死体が発見されている。
彼はこれを糸口に事件を追うことになる。墓の管理人ジョナス(オラフル・ダッリ・オラフソン)に話を聞く。彼の言動がオカシイ、次に殺された女の婚約者ルーベン(マーク・コンスエロス)にも話を聞く。
ルーベンの婚約者レイラは3人の男に拉致されたとのことであった。マットは彼も違法薬物の仲介人であることを見抜く。
ルーベンの部屋からジョナスの住んでいるマンションが見え、屋上にハト小屋があった。彼はジョナスを疑い屋上を調べたところ、彼の小屋があり中からルーベンとレイラの絡み合った写真が見つかった。
そこにジョナスが現れる、マットは彼を問い詰める。拉致犯3人の内1人はお前に違いない、だがあとの2人はどこにいると追求した。
彼はあとの2人は人間の皮をかぶった悪魔だ、このことが知れたら殺されると言いながら屋上から飛び降り自殺してしまった・・・・・彼は死ぬ間際に2人の内一人の名前はレイであることを告げていた。
マットは手がかりを失ってしまった。
マットはケニーに会い、誘拐犯はDEA(麻薬取締局)にかつて所属していた者か関係者で、また同じことをするはずだと言う。
そして彼はこのことを違法薬物の仲介人達に連絡しておけ・・・・必ず奴らは動くはずだ、その時には俺が相手になると。
ところが新たな事実が分かった、ピーターは弟のケニーをDEA捜査官のマリーに売っていた、しかしマリーは運の悪いことに誘拐犯に捕まり殺され、彼女が持っていた仲介人達の名簿が奴らの手に渡っていた。
マットはピーターに「俺はお前を信用できない、事件から降りる、金も明日返すとケニーに伝えろ」と言い残して彼の部屋を出る。
そんな時TJが仲間に殴られ、病院に担ぎ込まれる。彼は血液の病気に罹っており、雨に濡れて体温が下がったことから発病していた。しかし病院で安静にしておれば大事には至らない模様だ。
マットは次の日ケニーに金を返しに行ったが、大変な事件が起こっていることを知る。ケニーの知り合いのランドー(セバスチャン・ロッシェ)の14才の娘ルシアが奴らに誘拐されたとのことであった。
マットは誘拐犯からかかってきた電話に「金は払うが、ルシアの生存が条件だ、このクソ野郎」と誘拐犯を挑発しながら自分の作戦に乗せようと試みる。
彼は誘拐犯にルシアにしか知りえない情報(愛犬の名前)を連絡させ、彼女の無事を確認する。そして彼女と引き換えに100万ドル払うと約束する。
果たして、マットはルシアを救い出す事が出来るのか、また誘拐犯はどんな奴らなのか観てのお楽しみである。
ネタバレ
<ここから先は映画を観てから読んでね>
マットはまず現金を用意させる。偽札が20万ドル、本物がが60万ドル合計80万ドルだ、偽札の束の上下に本物を差し込み見破られないようにする。
そして昔、軍隊の経験があるピーターにライフルを持たせ援護の体勢を取らせるよう打ち合わせる。落ち合う場所は、今から一時間後、奴らがレイラの遺体を捨てたグリーンウッド墓地である。
マットはコートに身を包み、2丁の拳銃を忍ばせる。
マットはピーターとケニーを待ち合わせ場所の側面に潜ませる。彼は現金の入った2個のバッグを両手に持ち、誘拐犯に近づいてゆく。
正面には二名の誘拐犯が人質のルシアの喉にナイフを突き立て立っている。マットは遠くから現金を見せ、「ルシア」を解放しろと叫びさらに近づく。
誘拐犯の一人に金の入ったバッグを渡す。彼らは金を確認し、ルシアを開放する。可愛そうに彼女は既に二本の指を切り取られていた。
誘拐犯の一人レイはマットを撃とうと銃を構える。マットはレイに向かって「ライフルがお前を狙っている、撃てるものなら撃ってみろ」・・・・・・レイは銃を降ろし車に戻ろうとした時、偽札が発覚する。
マットは隠し持った銃でレイを撃つ、銃は命中したが奴らは防弾チョッキを着ていた。そして両者の激しい銃撃戦となる。
この銃撃戦でピーターは死に、誘拐犯の一人に致命傷を負わせる。彼らはあわてて車で逃走する。
早く車を探さねばならない。ところが車で待っていたはずのTJがいない、雨が本降りになってきた。マットはTJの携帯に電話をかける。
TJは何と奴らの車に隠れて乗っていた、そして彼はマットに奴らの居場所を連絡する。
TJは致命傷を負ったレイがもう一人の誘拐犯アルバートに絞殺されるところを見てしまう、仲間も平気で殺してしまうとは何という奴らだ・・・・思わず戦慄が走る。
急いで駆け付けたマットとケニーはTJと合流する。彼らはスキを見て部屋に突入し、誘拐犯のアルバートを捕まえ、手錠で壁のポールに拘束する。
マットはケニーに誘拐犯の処分を委ねる、このままこいつを警察に突き出すか、それとも・・・・・・・。ケニーの腹は決まったようだ、奴を殺すつもりだ。マットとしては警察に突き出すべきと忠告するが、ケニーはきかない。
彼とTJは奴らのアジトにケニーを残したまま、ここを後にする。タクシーでTJを家に帰したあと、彼は自分が間違ったことをしてしまったと気づき、ケニーがいるアジトに戻る。
ところが家にはケニーがいない、地下に降りると階段の所にケニーの死体があった。誘拐犯は何らかの方法で手錠を外し、ケニーを襲ったようだ。
その時背後の暗闇から誘拐犯が襲い掛かる、マットはワイヤーで首を絞められそうになったが取っ組み合いとなり、最後には射殺する。
警察の現場検証が始まる、明け方マットは疲れ切って自宅に帰る。自宅のソファーにはぐっすり眠りこんでいるTJがいた。
レビュー
ニューヨークの薄汚れたビルと町、そして人気のない墓地・・・・徹底的にハードボイルドタッチに画面が仕上げられている。マット(リーアム・ニーソン)は何時も憂鬱な表情で笑顔を見せることは無い。
彼に接触する者はケニー、ピーター、誘拐犯達と次から次へと死んでゆく、死神にとってマットは頼りがいのある男なのかも知れない。
物語の展開は地味ではあるが、それがかえって現実味を持たせる。またマットはタフな男だが、スーパーマンの様に描かれてない点も映画を成功させている一つの要因になっている。
全編暗い雰囲気だが、唯一彼と路上少年TJの交流が微笑ましい・・・・・これは映画の中での息抜きとなる。
映画の中でTJが話をしていた、ダシール・ハメットの探偵小説に出てくる、私立探偵のサム・スペード(映画 「マルタの鷹」でハンフリー・ボガートが主演)
また、レイモンド・チャンドラーの探偵小説に出てくる、フィリップ・マーロウもマットと同じ系統の私立探偵だね。フィリップ・マーロウに最もイメージが近い俳優としてケーリー・グラントがあげられる。
ケーリー・グラント
フィリップ・マーロウが出てくる映画としては「三つ数えろ」「かわいい女」「ロング・グッドバイ」「大いなる眠り」などがあり、ハンフリー・ボガート、ジェームズ・ガーナー、エリオット・グールド、ロバート・ミッチャム等が主役を務めている。
「ロング・グッドバイ」のエリオット・グールド(M★A★S★Hマッシュ)
探偵小説と言えばコナン・ドイルのシャーロック・ホームズ(シャーロック、エレメンタリー)が定番だが、これらの映画の様にハードボイルド作品もたまには面白いね。
何と驚くことに僕とリーアム・ニーソンは同級生なんだね。僕の頭はハゲかかっているのに、彼はふさふさ(まさかカツラじゃないだろうね)と若々しく、えらい違いだね。
僕も今日から、彼の真似でもしてみようかな・・・・・。
tatsutatsu
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