サマリー
1970年公開のアメリカ ブラックコメディ映画、監督はロバート・アルトマン、主演はドナルド・サザーランド(鑑定士と顔のない依頼人)、トム・スケリット(エイリアン)、エリオット・グールド(オーシャンズ11)、ロバート・デュバル(地獄の黙示録)、サリー・ケラーマンである。
今までに、こんな下品な映画は観たことが無い、しかもこの作品を高校生の時、偶然観てしまった。僕がエエカゲン人間になってしまったのもこの映画のせいだと、他人事にしている。
しかし、れっきとした芸術作品でアカデミー脚色賞まで取っている。脚本はリング・ランドナーJrが書いているが全編ほとんどアドリブで脚本があまり使われていない。リングは激怒したとのことであるが、何故かその彼がアカデミー賞を取るとは、皮肉なものである。
20世紀フォックスとしても、ヒットするとは思えず、製作費4億円(現在のレートで)程度で、しかもフォックスの裏山でのロケである。ところが大ヒットし興行収入は82億円も稼いでいる。しかもTVドラマも作られ11シーズンまで続いた、世の中何が起こるか分らないものである。
ドナルド・サザーランド(息子は24‐TWENTY FOUR-のキーファーである)、トム・スケリット、エリオット・グールドの出世作である。
朝鮮戦争が舞台となっており、日本の九州(小倉)なんかも映画に出てくる。MASHとは移動米軍外科病院(Mobile Army Surgical Hospital)のことである。
3人の軍医を中心に物語が展開されてゆく、彼らは腕は一流だが女性にだらしがなく、この移動病院の中で卑猥ないたずらばかりする。映画を吹き替えで見ると、途中日本語音声が突然途切れビックリするが機械の故障ではなく、あまりに内容が卑猥でとても日本語に翻訳出来ないかと推察する。
今ではこんな作品は作れないと思う、大昔のおおらかな時代のアメリカ映画の名残りであろう。軍隊をこれだけパロディー化しておいてよく文句が出なかったものだと思う。
冒頭は負傷兵がヘリコプターで病院に運ばれて来るシリアスな場面から始まり、主題歌も反戦歌のようなイメージで当時の曲名は「自殺の喜び(Suicide is painless)」と訳されていた。
内容も知らずに友人と映画を見に来た僕は、これはヤバそうな映画と思っていたら、180度逆転のブラックコメディーであった。
仕事に疲れたり、嫌なことがあったら是非この映画を観て気分転換することをお薦めする。(但し、下ネタの嫌いな人には向かないかもしれない。)
お知らせ:「お薦めコメディ映画ベストテン‐仕事の疲れは笑いで吹き飛ばせるね」も見に来てね。
ストーリー
ストーリーを少し紹介すると、ホークアイ・ピアス大尉:通称切れ者(ドナルド・サザーランド)とデューク・フォレスト大尉(トム・スケリット)は軍から要請され、MASH(移動米軍外科病院)に赴任する。この時切れ者は本部のジープを盗んで基地まで運転する。
基地についた彼らは図々しくも、すぐに食堂に向かう、食堂には偶然基地の司令官ブレーク大佐が居た。そして美人のディッシュ婦長(ジョー・アン・フラッグ)の隣の席に座り、彼女をすぐに口説き始める、しかし彼女は亭主持ちである。
切れ者はブレーク大佐に赴任の報告をし、金髪で美人の看護婦を付けるよう頼み込む。そして歯科医のウォルドスキー大尉と神父を紹介される。
デュークはたまたま通りかかった女性を口説くが、レーダー伍長から、彼女は司令官の彼女だから手を出すなとクギを刺される。
宿舎に案内されると、いかにも堅物に見えるバーンズ少佐(ロバート・デュバル)が下働きの若者ホー・ジョンに読み書きを教えている最中だった。デュークはホー・ジョンに聖書より写真付きの本(ヌード雑誌)を読めと手渡す。
彼らは手術室に入り、負傷兵の手術を行う・・・・手術の腕は一流であった。しかし手術のかいもなく死んでゆく負傷兵が後をたたない、胸部切開の専門医が必要と司令官に要請する。ほどなくトラッパー・ジョン大尉(エリオット・グールド)が基地に来る。
MASHへ、これまたエロそうなオフーラハン婦長(サリー・ケラーマン)が赴任する。
バーンズ少佐のあまりにも雑な治療を見て、トラッパーは激怒して彼を殴りつける、そこに司令官とオフーラハン婦長が通りかかり、司令官は謹慎を命じるが、トラッパーにはそんなことは通用しない。
オフーラハン婦長はバーンズ少佐をかばうが、切れ者はあんな無能男は早く追い出すべきだと主張し、彼をケチョンケチョンにけなす。
怒ったオフーラハン婦長は、基地の軍規の乱れを将軍に通達するようバーンズ少佐と連名で手紙を書く、そして二人は意気投合し抱き合う、バーンズは「君の唇は燃えるように熱い(ホットリップス)」と彼女を抱きしめる。
そんなナニの最中にトラッパー達はこっそりと彼女のテントにマイクを差し入れ、全テントに二人のナニの実況中継を流してしまう。
翌日の朝食の時、切れ者たちはオフーラハン婦長をホットリップスとからかう・・・・彼女は頭にきて食堂を出てゆく、これ以来彼女の愛称はホットリップスとなる。
さらに切れ者(ホークアイ)は食堂に現れたバーンズをからかう、昨日の彼女はどうだった、「彼女の腰は良く動くのか」「うめき声はどうなんだ」教えてくれと・・・・バーンズも頭にきて切れ者に殴り掛かる、そして皆に押さえつけられ国に強制送還される。
ある日切れ者は神父から歯科のウォルドスキー(愛称:ペインレス=無痛)の件で相談に乗って欲しいと言われるが、神父はなかなかじらして理由を教えてくれない。
彼はペインレスの所に行く、陸軍一のナニの持ち物の彼が言うには、どうもホモの気が出て来たらしい(潜在的なホモなのかもしれない)、男なのに男では無くなってゆくみたいだと告白する。そしてもう男でないなら自殺したいと言い出す。
そして彼は自殺するいい方法がないかと尋ねる、トラッパーの提案では「ブラックカプセル」が楽に死ねる、昔ヒトラー夫婦が使った毒薬だと。
そしてペインレスの送別会が盛大に執り行われる、会の最後に彼は「ブラックカプセル(偽の眠り薬)」を飲んで棺に入る。
切れ者は夜中にディッシュ婦長を呼び出す、彼女は明日移動になる・・・・・彼はディッシュにペインレスに一晩付き合ってほしいと頼み込む、そして彼の不能を癒してほしいと、嫌がる彼女はしぶしぶ承諾する。
次の朝彼女は満足そうな顔をして基地を後にする、そしてペインレスは見違えるように元気になっていた。
ある日デュークはホットリップスのアンダーヘアが何色か、賭けを提案した、賭け金は20ドルである。彼女の金髪はきっと染めているに違いないとデュークは推理し、そして皆でシャワーテントの前に集合して確認することに意見が一致した。
シャワーテントに彼女が入るのを確認し、タイミングを見計らって、予定通りテントをはね上げた・・・・・彼女は悲鳴を上げ逃げ惑う。
賭けの勝負はデュークの勝ちである。ホットリップスは怒って司令官に愚痴を言いに行くが、彼は彼女とベッドインの最中だった。
などなど、次から次へと卑猥な出来事がまだまだ続いて行く・・・・・・・。
レビュー
全編に「ラジオ東京」の日本語の歌番組が流れており、戦場が日本から近いことが雰囲気として伝わってくる。けっこう女性を侮辱しているドラマだから、今ではこんなドラマを作るのは難しいだろうね。
コメディーではあるが、手術室のシーンは血がドバドバ流れており、リアリティを感じさせる。そして軍医たちは患者を治そうと日夜必死である。(アメリカ軍の敵でも治療している。)
この手術室のシーンが時々挿入されることから、戦争の悲劇と罪悪感が伝わってくる。戦争とは命をかけた危険なゲームであると映画は訴えかける。
コメディーばかりだと、どうしても薄っぺらい映画になってしまうが、それをうまくカバーし見応えのある映画に仕上がっている。
映画の中には、色々な新しい実験がほどこされている、例えば主人公どうしが話しているところに次から次へとわき役陣の話が割り込んでくる。・・・・・・やはりアドリブ中心の演出が効いているように思う。
監督のロバート・アルトマンは2006年に81才で亡くなっている。こんな面白い映画を作る監督はもう出てこないかも知れない。僕はアルトマンの映画はあまり好きなほうではないが、この映画は大好きである。
また、当時の俳優たちは、こんなに楽しく演技出来た映画は無いとも話している。そしてこの映画には「人生くよくよせずに楽しくやって行こう」というメッセージが隠れているように思う。・・・・どうだろうか映画を観て確認していただきたい。
最後に、この作品で映画クラブ100作目のレビューである、長い間続けてこられたのも読者の皆さんのおかげである。今後とも気楽にお付き合い願いたい。
辰々
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