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映画「イヴ・サンローラン」感想・評価‐ファッション界の天才は孤独だったのか

サマリー


2014年公開のフランス伝記映画、監督はジャリル・レスペール、主演はピエール・ニネであり、フランスでは大ヒットしたとのことである。

イヴ・サンローランは皆さん知っての通り、ファッション業界の天才デザイナーである。YSLのロゴがブランドアイコンとして良く知られているから、誰でも一つぐらいは何かしらこのブランド品を持っていると思う。

彼はフランス領アルジェリア出身で1936年に生まれ、2008年71才で亡くなっている、ココ・シャネル、クリスチャン・ディオール、ポール・ポワレなどと20世紀を代表するファッション界をリードした人物である。

しかし彼の人物像はあまり知られていない、実際の彼は内向的で病的なほど繊細かつゲイである。そして彼の恋人は長年同棲していたピエール・ベルジェで、また共同経営者でもあった。

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イヴ・サンローランとピエール・ベルジェ

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イヴ・サンローラン(ピエール・ニネ)とピエール・ベルジェ(ギョーム・ガリエンヌ)

イヴは天才ではあるが、経営の才能は無い或いは関心が無かった、従ってピエール・ベルジェがいないと会社の経営どころか日々の生活もままならない。

逆にピエール・ベルジェはデザイナーとしてのセンスも関心もなかったのかも知れない。

僕はファッションは苦手であり、あまり関心もない、家内は僕の服装センスの無さに幻滅しており、一人では絶対に服を買うなと「禁止令」が出ている。

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そんな僕が何故この映画に関心を持つのか・・・・・・僕としては天才としてのイヴ・サンローランに興味がある。彼の才能の凄さはどこにあるのか、天才としての悩みは、日々の生活は・・・・・等々を観てみたい。

今回この映画ではイヴの天才としての光の部分だけでなく、ドロドロした影の部分も描かれている。男どうしの強烈な嫉妬やゲイの世界など生々しい描写が出てくるので、嫌がる人も多いかも知れない、しかし彼の天才としての仕事を知る上では一見の価値があると思う。

また「天才の悲劇を描いたお薦め映画ベストテン」も見てね。

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イヴ・サンローランの有名なデザインの1つ「モンドリアン」。

ストーリー

映画のストーリーを少し紹介すると、クリスチャン・ディオールは無名の新人イヴ・サンローラン(ピエール・ニネ)にデザイナーとして非凡な才能を秘めていることを見抜く。

イヴは小さい時から服に興味を持ち伯母のドレスを「僕はきらいだ」と批判したそうだ、生まれながらの天賦の才能を持っていたことをうかがわせる、そして自分の理想とするクリスチャン・ディオールにデザイナーとして採用されるのである。

クリスチャン・ディオールから「このドレスのウエストを絞るのはどうしたらいい」と意見を聞かれる、イヴは近くにある白い布を自分で破ると、ドレスのウエストに巻き付け瞬時にステキなアクセントをつける、周りから彼のヒラメキに対し、ため息が漏れる。

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イヴは美術品の愛好家であり、収集家でもあった、彼が美術品を見る目は天性のもので誰から教わったものでもない。

オートクチュール(パリで取引されるオーダーメイド一点物の高級服やその店のこと)の先駆者クリスチャン・ディオールが亡くなる、イヴは若くして(21才)主任デザイナーに抜擢される。

彼の最初のコレクション(ファッションデザイナーが開催する服の展示会=ファッションショー)は大成功する、彼のデザインはシンプルでしなやか軽快なのに厳格さも併せ持つと表現される。

このころイヴは実業家のピエール・ベルジェ(ギョーム・ガリエンヌ)に出会う、そして同棲し愛し合うようになる。ところがイヴにアルジェリア独立戦争の召集令状が届く、彼は兵役に付くものの、軍隊に耐えられず精神病を患う。

そして彼はディオール社を解雇される、しかし彼にと
ってはこの出来事は好機で、アメリカの大富豪などから資金調達を得て「イヴ・サンローラン」として独立する。そして第一回目のコレクションは成功するが、ファッション誌の中には「一発屋」かと批判するところもあった。

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ピエール・ベルジェはファッションモデルのヴィクトワール(シャルロット・ルボン)と仲の良いイヴに嫉妬し、彼女を寝取ってしまう。そしてイヴとピエールの間に隙間風が吹き始めるが、事業は少しずつ軌道に乗って行く。

しかしファッションの流行は浮き沈みが激しくイヴの仕事も低迷する時期があった。しかし彼は粘り強く自分のファッションを追求してゆく。彼の作った「モンドリアン」は大成功を収め、世界中でコピーされる。

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年4回のコレクションは彼の体と精神を痛めつける、彼は自分一人で年間に300着以上作ることもあった。毎日一着に近いペースで服を作り続けることになる、天才と言えどもハードな日々である。私生活は酒、たばこ、ドラッグにまみれ、さらに男娼を買うまでになってゆく。

イヴはピエールとやり直そうと、二人で旅に出る。そして旅から帰ってきてファッションへの情熱が残っていればまた服を作り始めると彼は言う・・・・・。

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旅から帰り、イヴは次から次へと斬新な試みを始めるが、それらのほとんどは成功へと結びつく、彼はフランスファッション界の寵児となり、ヌード写真も撮影し態度も横暴になってゆく。

毎日のイヴ主催のどんちゃん騒ぎにピエールは疲れ果ててゆくが、イヴとの絆は途切れることはなかった、お互いを必要としていたからだ。

イヴはコレクション準備のために忙殺され、体を壊して入院する・・・・心身ともにボロボロであった。そんな彼は病気を押してショーの最後で挨拶をする。

イヴ・サンローランは2008年6月に癌で71才の生涯を閉じる。50年に及ぶキャリアの中で女性の服装に革命を起こしたと言われている。

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レビュー

映画の全編に流れるジャズが心地よい、そしてファッションショーの場面で流れるオペラが場を盛り上げる。

ファッション業界は派手で優雅な世界であるが、その舞台裏は泥臭く、人間味あふれる世界である。天賦の才能を持っていたとしても50年の長きに亘ってトップに君臨するのは並大抵のことではないと感じる。

常に新しいものを追いかけ、自分が変わって行かないと世の中の流れにはついて行けない。しかもイヴ・サンローランらしさも失わない様にしなければいけない。

彼は仕事によって心身ともにボロボロになって行くが、やはり彼を支えるピエールの存在が大きい。彼をデザイナーとしての仕事だけに専念させた功績は大きい。

この映画では神ではなく、生身の人間としてのイヴ・サンローランが描かれていることに驚嘆するが、ここまで描いちゃって本当にいいのと思うところもある。

彼は満ち足りた死に方は・・・・と聞かれた時に「満ち足りたベッドの上で死にたい」と言っている。また一番の苦しみは何かと聞かれた時「ハゲること」とも言っている・・・・・果たして死ぬ間際に彼の髪の毛はふさふさだったのであろうか

ところで、僕の頭はハゲかかっている。

辰々

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ピエール・ニネ
KADOKAWA / 角川書店

2015-03-20

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