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映画「リスボンに誘われて」感想・評価:世界に100冊しかない本に出会った男がその中に見たドラマとは

サマリー


2014年公開のドイツ・スイス・ポルトガル製作のヒューマン映画、監督はビレ・アウグスト、主演はジェレミー・アイアンズ、原作はパスカル・メルシエのベストセラー小説「リスボンへの夜行列車」である。

映画『リスボンに誘われて』予告編

 

この物語はスイスのベルンから始まりポルトガルのリスボンが舞台となる。僕は数年前にスイスのベルンに旅したことから映画の舞台が懐かしく感じられた。

地味だが上質な大人の物語で、スイスの高校教師ライムントが世界に100冊しかない本「言葉の金細工師」に出会う。彼はこの本を読み始め感銘を受ける、そして著者に会うためにリスボンにまで出かけてしまう。

彼を衝動に駆らせたものとは何か、そして彼の人生を変えてしまうほどの出来事がそこで待っているとは知る由もない。

歳を取って自分を振り返った時、何とも言えない取り返しのつかない衝動に駆られることがある、もう一度自分の人生をやり直せるとすれば、あなたは別の道を歩むことが出来るのであろうか。

そんなことを考えながらこの映画を観て頂ければ、きっと自分の人生にとって自分を見つめ直す有意義な時間になると思う。

ストーリー

ストーリーを少し紹介すると、スイスのベルンで高校教師をしている初老の男ライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)は学校に行く途中、橋から飛び降りようとしていた若い女性を助ける。

彼女は彼の教室までついてくる、そしてしばらくして学校から姿を消してしまう。彼は彼女がコートを忘れたことに気づき授業を無断で抜け出し、後を追うが見失ってしまう。

彼女のコートの中には一冊の本「言葉の金細工師」があり、この本を購入したと思われるなじみの書店を尋ねる。本は「人生の一部しか生き得ないなら残りはどうなるのだ?」の言葉から始まっていた。

書店では確かに昨日女性に売った本だが、彼女は一時間程店内で本を読んでいると、突然取り乱して出て行ったとのことであった。

本を開いたところリスボン行の切符が床に落ちる、しかも後15分で列車は出てしまう。

彼は駅に急ぎ彼女を探すが見つからない、その時列車が動き出す、そして彼は衝動的に夜行列車に飛び乗ってしまう。

彼はリスボンに部屋を取り、本の作者アマデウ・デ・プラド(ジャック・ヒューストン)の住居を尋ねる。住居には彼の妹アドリアーナ(シャーロット・ランプリング)がいた。

彼女が言うには、本は100冊印刷したが手元には6冊しか残っていない、スイスにまで読者がいたとは有り難い、そして兄は作家か哲学者になりたかったが、結局医師になったと話をしてくれた。

帰りがけに家政婦から、アマデウに会いたいなら墓地に行きなさいと告げられる。彼は既に亡くなっていたことが分かる。(何故アマデウの妹アドリアーナは彼が生きているように振る舞うのか・・・・。実は彼女の兄は命の恩人であったことが後に分る、そして兄の死を受け入れることが出来ないようであった。)

ライムントは帰りがけに運悪く、背後から来た自転車に衝突されメガネが壊れてしまう。そして次の日、メガネを作らざるをえなくなった彼は眼科医のマリアナ(マルティナ・ゲデック)と知り合うことになる。

彼は話しの流れからマリアナにアマデウの本に自分がずうっと考えていたことすべてが書かれてあると告白する。そして偶然にもマリアナの伯父がアマデウを知っていることが分かる、しかも彼は昔反体制派(レジスタンス)の一員だった。

伯父ジョアンはライムントに会っても良いと言ってくれた、しかし彼は変わり者で当時の話はあまりしないかもしれないとマリアナから言われる。果たしてアマデウとはどんな人物でどんな人生を送ったのか・・・。

ネタバレ

ジョアンとの話ではアマデウも彼の親友ジョルジェ(アウグスト・デール)も共にサラザール独裁体制下で戦ったレジスタンス仲間であったことを話す。

ある日秘密警察の幹部メンデスが彼を訪ねて来て、レジスタンスメンバーの名簿を暗記できる女を知らないかと尋問する、そして白状しろと両手を金づちで潰された苦い出来事を打ち明ける、彼の両手には生々しい傷跡が残っていた。しかしジョアンが最も許せないのは、数か月前にアマデウが残虐なメンデスの命を救っていたことであった。

さらにライムントはアマデウの高校時代の教師バルトロウメ神父(クリストファー・リー:関連「ドラキュラZERO」、「ホビット」、「ロード・オブ・ザ・リング」)に会う、アマデウは厳格すぎるこのカトリック系の高校を最も嫌っていたと本に書いていた。

アマデウは非常に頭の良い生徒だったが孤独であったと、神父から聞く、そして彼は革命の日に亡くなった事も知る。

アマデウは脳に動脈瘤を抱え死ぬ運命だったことが本に書いてある、しかしこのことは誰にも打ち明けていなかったようである。葬儀には少し遅れて、見知らぬ女性(エステファニア)が来たようであった。

さらにアマデウはメンデスの命を救ったことによって住民から恨まれる、そして診療所には誰一人もこなくなってしまった悲惨な出来事も知った。彼は医師として当然のことをしたまでだが、これによって多くを失う結果となってしまった。

ジョアンからたばこが欲しいと再び呼び出されたライムントはジョルジェの恋人エステファニア(メラニー・ロラン:複製された男)の話を聞く、レジスタンスメンバーの名簿を暗記できる女とは彼女のことだったのである。

彼女は初めてアマデウに会った時、端正な顔立ちをした彼に心を奪われる。そんな時レジスタンスに対する締め付けがどんどん厳しくなってゆく、アマデウは彼女と新天地へ向け逃げる約束をする。

ところがアマデウの親友でエステファニアの元恋人ジョルジェが彼女を拳銃で殺そうとする。彼女から情報が漏れてしまえば、レジスタンス革命が失敗に終わるからである。

止めに入ったアマデウはかろうじて彼女を救い、車で国境に向かう。しかしジョルジェには本当に彼女を殺すつもりはなかったのかも知れない、それより恋人を親友のアマデウに取られたことの方がショックだったに違いない。

スペインとの国境の検問に捕まった時、エステファニアは車のトランクに隠れていた。アマデウは貸しのあるメンデスに電話をし、無事に国境を通過することが出来た。

アマデウはエステファニアに一緒に船でアマゾンへ行こうと誘う、そして新しい土地で新しい人生をやり直そうと訴える。

でも、彼女は「あなたは貪欲すぎる」そして「あなたは私を渇望し、新しい人生も渇望した」けれど結局「あなたが欲したのは私ではなく、自己の魂を求める旅だ」と彼の申し出を断る。

彼は寂しそうに国に帰って行く、そしてしばらくして彼女のもとにアマデウの訃報が届く。彼女は「彼を殺したのは結局私なのかも知れない」と涙を流す。

 

ライムントはエステファニア(晩年の彼女:レナ・オリン)をスペインに訪ねたときに彼女から直接この話を聞く、そして本を手渡し「彼を殺したのはあなたではなく、彼は病気だったのですよ」と慰める。

全ての旅が終わり、ライムントはスイスに戻る事になった、駅にはマリアナが見送りに来ていた。「あなたは私が退屈ではないと言ってくれた、ありがとう」とお礼を言う。

彼女は「あなたはまた、自分の人生に戻るのね」と寂しそうに答える。

ライムントはこの旅を通して、マリアナと親交を深め、淡い恋が芽生えつつあった。列車に乗って去りがたい彼に向かって、彼女は「ここに残ればいいのに」と彼を引き留める。

レビュー

初老のライムントは5年半前に妻に去られている、その理由は自分が退屈な男だからと思い込んでいる。今回の衝動的な旅は、自分探しの旅であったかもしれない。

自分と違い、情熱的な青春を送ったことが書かれたアマデウの本(彼が亡くなった後、ノートを発見したアドリアーナが彼の魂を残すため本として出版した)そしてエステファニア、ジョルジェ、ジョアン達に出会うことによって、精一杯生きた彼らに憧れを抱いた。

しかしマリアナは、そんな彼らは今はバラバラな人生を送っている、誰も信じられない時代を送った人達であり、羨ましがる必要はないとライムントを擁護してくれる。

ライムントはこの旅で、自分の人生を変えてくれるかも知れないかけがえのないマリアナに出会った。スイスの教員の仕事をなげうっても十分な価値がある。

そして、ベルンの橋で身投げしようとした女性は、残虐な秘密警察のメンデスの孫娘カタリナ・メンデスであったことが分かる。彼女は祖父の非道をを恥て衝動的な行動をとったが、今は落ち着いたとお礼をライムントに言っている。

最後にアマデウの本の一節が心に残る・・・・「誰しも若い時には自分を不死のように思って行動する、でもいつからか自分の死を自覚するようになる、その時はいつになるだろうか」

辰々

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