サマリー
2011年公開のSFアニメ映画 3D
原作 士郎正宗
監督 神山健治(攻殻機動隊S.A.C.、Individual Eleven、Solid State Society、笑い男事件、東のエデン、009RE:CYBORG、CYBORG009 CALL OF JUSTICE、攻殻機動隊SAC_2045)
声の出演 田中敦子(草薙素子)
阪脩(荒巻大輔)
バトー(大塚明夫)
トグサ(山寺宏一)
イシカワ(仲野裕)
サイトー(大川透)
押井攻殻を受けて次に続く神山攻殻の傑作だ。
今、ハリウッドで実写化されている。草薙素子をスカーレット・ヨハンソンをやるらしいが楽しみだ。
「攻殻機動隊」は海外では「GHOST IN THE SHELL」と呼ばれる。
「GHOST」とは幽霊のことではなく「人間の魂」と言う意味なんだ。
近未来では、脳は「電脳化」され体も「義体化」されてしまう。つまりサイボーグになってしまうのだが、機械化された人間の唯一の拠り所が「GHOST=人間の魂」なんだ。
この「GHOST」が無ければ、ただのロボットにすぎない。
「攻殻機動隊」一連のシリーズは電脳化された脳が、ハッカーによってハッキングされ犯罪に利用されてしまう。
これらの難事件を担当するのが荒巻大輔率いる「公安9課」だ。
そしてこの課を牛耳るのが、全身義体でかつ超能力者以上の能力を持つ「少佐=草薙素子」なんだ。
か弱い?女性草薙素子が屈強な大男どもを顎でこき使うところに魅力がある・・・逆転現象だ。
公安9課のメンバーはバトー、トグサ、イシカワを始めスペシャリストばかりの魅力的なグループだ。
インターネットの世界が可視化され分かりやすい、そしてアイドル的な「タチコマ(AIを搭載した多脚戦車)」が可愛い。
ストーリーがやや難解だが、足を踏み込んだら最後、ここから抜けられないほど魅力的な物語だ・・・さあ会社の仕事を忘れてどっぷりつかってみてはどうか。
このS.S.S物語は2034年「攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG」から2年後の設定になっている。
草薙素子は疾走し、公安9課のリーダーはトグサになっているんだ。
本来ならバトーがリーダーになるべきだが、彼は辞退し彼らしい単独行動を取る。
「傀儡廻(くぐつまわし)」と呼ばれる電脳を操る得体の知れないハッカーとの闘いだが、貴腐老人(寝たきりで干からびて死んでゆく老人を貴腐ブドウに例えている)とさらわれた多くの子供が絡んでくる。
さあ、あなたは「傀儡廻(くぐつまわし)」の正体を見破ることが出来るのか。
あらすじ
シアク共和国カ・ルマ元将軍の「梵」字の刺青をした13人の工作員たちが謎の自殺を遂げる。彼らはマイクロマシンを使ってテロを画策していたことが調査の結果明らかになる。
カ・ルマ元将軍の長男カ・ゲル大佐はこの件で取り調べを受けるが突然逃げ出し、新浜国際空港に人質を取って立てこもる。
彼は「傀儡廻(くぐつまわし)が来る」と叫び、彼を追い詰めたトグサの前で自殺する。
荒巻とトグサは日本に亡命したカ・ルマ元将軍の療養施設に向かう。元将軍は大病を患って療養中であったが自分で生命維持装置の配線を抜き取り自殺していた。
しかし、メディカルデーターを解析したイシカワは自殺に見せかけた殺人であることを見破る・・・それに表面上はカ・ルマ元将軍がまだ生きているようにデーターが改ざんされていた。
バトーはカ・ゲル大佐が自供した隠れ家を調査する。そこで偶然にも少佐(草薙素子)にあう。
少佐は隠れ家からマイクロマシンを盗み出し「ソリッド・ステートに近づくな」と警告を発して、夜の高速に消えてゆく。
カ・ルマの手口が分かった、子供達を誘拐し、これらの子供にマイクロマシンを埋め込んでウイルス(天然痘をベースに遺伝子操作した時限発症機能付BC兵器)をばらまこうと計画していた。
これらの子供達を保護したが、彼らにはまだマイクロマシンが埋められた形跡はなく、記憶の一部が消去されていた。彼らが記憶していた住所を尋ねるとそこには独居老人が住んでいた。
それらの老人は介護ロボットにつながれた貴腐老人(寝たきりで干からびて死んでゆく老人を貴腐ブドウに例えている)ばかりだった・・・この全自動介護システムは世間からは遺産回収システム(寄付老人)と批判されている。
住基ネットを調査すると驚くことに約2万人の子供が消えていた・・・誘拐されたのだろうか。
更に詳しく調べるため、総務省のデーターベースにアクセスする。ところがそこにはウイルスが仕込まれていて公安9課のサーバーに大ダメージを与えてしまう。
そこに突然荒巻が現れ、この子供の件は政府がからんでいる。そしてカ・ルマの手下16人の身元調査は継続するが、「傀儡廻(くぐつまわし)」の調査からは一旦手を引くと言い放った。
荒巻の手には誰かが厚生省に持ち込んだマイクロマシンウイルスがあった。そして「傀儡廻(くぐつまわし)」とは政府が差し向けたハッカーかもしれないと彼はつぶやく。
バトーはトグサにカ・ルマの隠れ家で少佐に出会っていたことを話す。そして「傀儡廻(くぐつまわし)」とは少佐のことではないのかと疑い始めていた。
その頃、草薙素子(遠隔操作義体)は外務省条約審議部(公安6課)の中村部長と会っていた。彼は傀儡回(少佐か或いはソリッド・ステート=介護ネットが少佐の義体を操っているのか)を暗殺者として雇い、カ・ルマ元将軍とその工作員を皆殺しにしていた。
少佐は中村部長に「この件から降りる」とつぶやき遠隔操作義体を残して消えてしまう。
公安9課が保護した子供たちが消えてしまった。
トグサは行方不明になった子供を追ってあるマンションにたどり着く、そこには貴腐老人が居た。
老人はトグサに「自分の財産は虐待されていた子供に全て与える」「死にたくなければ我々の社会にかかわるな」と警告して息絶えた。
深入りしすぎたトグサは電脳をハッキングされ罠にはまる。彼は自分の意志に反して娘を電脳化しようと病院に向かっていた。
そして電脳化の後、娘がさらわれるのは目に見えている。「傀儡廻」のワナを回避する方法は自分が拳銃で頭を打ちぬいて自殺するしかない。
果たしてトグサは自殺してしまうのか、「傀儡廻(くぐつまわし)」とはただ単にソリッド・ステート=介護ネット或いは老人達の深層心理の総体だけなのか・・・・。
ネタバレとレビュー
同時刻にカ・ルマの部下ラジ・プート中尉が入国してきた。ラジ・プートの目的は外務省と関係が深い宗井代議士を暗殺することにあった・・・カ・ルマの暗殺を企てた男であるとラジ・プートは嘘の情報が吹き込まれていた。
危機一髪のところでバトーはラジ・プートを捕獲する。ところがラジ・プートに殺しを依頼したのは宗井代議士本人であった・・・ラジ・プートも「傀儡廻」にはめられていた。
ラジ・プートの情報によると「傀儡廻」とは「人ではなくソリッド・ステート(介護ネット)内にある誘拐インフラ」とのことだと口走った。
バトーはこの件をトグサに連絡しようとしたところ、彼が電脳をハッキングされていることに気が付く、バトーはトグサのところに急行する。
あわや、トグサが拳銃自殺しようとしたところに、少佐が現れ彼を救い出す。
少佐はソリッド・ステート(介護ネット)の情報を正確につかんでいた。ソリッド・ステートにはハブ電脳が存在する。
少佐と9課のメンバーは、宗井が関係する「財団法人 聖庶民救済センター」に侵入する。
警備用サイボーグやロボットたちに守られた強固な警備を突破し施設にもぐりこんだ。
そこには誘拐されたおびただしい子供達が洗脳教育を施されていた。
そしてそこにいた宗井代議士とその部下たちを拘束する。
この施設は政府の最重要施設で、虐待された子供たちを誘拐し、介護ネットにつながれた老人たちの子供として登録する。
そして老人の遺産を使って、子供たちを教育し「純血な日本人による支配階級を形成させる」のが宗井の計画である。
この誘拐インフラを利用して子供たちを集めようとしたカ・ルマとその工作員たちは「傀儡廻」によって皆殺しにされていた(表向きは自殺)。
このソリッド・ステートのインフラを作ったのが「コシキタテアキ」と言う男であることも分かった。
しかし、「コシキタテアキ」は二年前に亡くなっている。
では「コシキタテアキ」のリモート義体を使って裏で暗躍していた者はいったい誰であろうか。
「コシキタテアキ」は「純血な日本人による支配階級を形成させる」宗井の計画を苦々しく思い、宗井を暗殺しようとしていた。
「コシキタテアキ」のリモート義体を使った人物は日本をコントロールしようとした国内又は海外の組織なのか・・・今となっては何も分からない。
当初「傀儡廻」は少佐なのかと思ったが、彼女は表面上これを利用しただけに過ぎないことが分かる。
今朝の新聞で全国の虐待児童が「約2万5千人」になったと報じていた。この物語では虐待児童2万人が住基ネットから消えている。
現実社会とリンクして、日本の闇を感じさせる。また、自殺者が3万人と減らない・・・日本の厳しい現実を突きつけられる思いだ。
老人介護の現実問題も、将来このドラマのように全自動介護ロボットが死にゆく老人を見守る時代が来るのかもしれない。
実に恐ろしい現実を突きつけられるね・・・虐待児童と身寄りのない介護老人がセットになって「ゴーストのリサイクル」が行われるとは、決してアニメドラマの中だけの話しではない。
孤独な老人の末路は実に厳しいものがある、僕のようなじじいには身にしみる。
ところで神山監督は押井攻殻のオマージュが実に多いね。それに彼は「個」「個別」「個性」「孤独」などのテーマが好きだ。
「STAND ALONE COMPLEX」とは二つの意味があって、「端末複合体」と「孤立コンプレックス」とのことだそうだ(孤立した個人の集合体と言えば分かり易いか?)。
電脳化社会においては多くの個人が情報を共有化して一つの複合体のように行動してしまう現象だ。
また「SOLID STATE SOCIETY」とは「孤独老人社会」を表している。
(SOLID STATEのもともとの意味はICやLSIなどの素子:そし のことだ。)
そもそも、公安9課じたいがずば抜けた能力を持った「個性派集団」で組織されている。その中でも少佐はエスパーと言ってもいいほど孤高の存在だ。
しかしそれらを難なく束ねる荒巻大輔は「理想の上司」だ、しかも彼は上司の言うことなんか聞かない彼が一番「強烈な個性の持ち主」かもしれない。
ハリウッド版「ゴースト・イン・ザ・シェル」を4月7日に見てきましたよ・・・まあまあかな。
TATSUTATSU
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