サマリー
2014年公開のフランス・カナダ合作のコメディ映画、監督はジャン=ピエール・ジュネ(エイリアン4、アメリ)、主演は子役のカイル・キャトレットで、原作はライフ・ラーセン「T・S・スピヴェット君 傑作集」である。
誠に不思議な物語で、観ていて微笑ましいし、子役のカイル・キャトレットがものすごくカワイイ。子供が主人公の映画ではあるが、大人向きの映画と言える。
主人公T・S・スピヴェットは10才の天才少年である、彼は子供の目から見た摩訶不思議な大人の世界をのぞき見し、辛辣な批判をする、この批判が非常に面白く笑いを誘う。大人は、皆生意気な「クソガキ」と思っちゃうけど、彼は真剣であるし、当たっているだけに怖い。
彼は自分で考えた永久機関がスミソニアン協会の科学賞に選ばれる、そして授賞式のスピーチをするために家族に内緒で、今住んでいるモンタナの牧場からワシントンDCへ一人で列車に乗って旅をする。
また、彼は不慮の事故で亡くなってしまった双子の弟と比べて、両親に愛されていないんじゃないかと常に強迫観念にとらわれている。でも両親や姉は彼のことを深く愛していることが映画の結末になって分ってくる。
そんなに派手な映画ではないが、「アメリ」の子供版的な感じで気楽に観れば楽しいと思う、劇場では3Dで放映されたとのことである。
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ストーリー
ストーリーを紹介すると、T・S・スピヴェット(カイル・キャトレット)はモンタナの山の中で、無口なカーボーイの父テカムセ(カラム・キース・レニー)、昆虫学者の母クレア(ヘレナ・ボナム=カーター)、アイドルを目指す姉のグレーシー(ニーアム・ウィルソン)、愛犬のタピオカと住んでいる。
家族は不慮の事後(銃の暴発)でT・Sの双子の弟レイトンを亡くしていた。悲しみに暮れる家族であったが、T・Sのもとにスミソニアン博物館の次長ジブセン(ジュディ・デイヴィス)から電話がはいる。
それはT・Sが発明した磁気車輪の永久機関がベアード賞を受賞したとのことであった。T・Sは父親が発明したと嘘をつき、授賞式への招待を辞退した。
T・Sは一旦は授賞式への出席を辞退したものの、一人でスミソニアン博物館に行くことを決心する。信号機を赤く塗って列車を止め、そして乗り込み旅は始まる。
荷物には服やT・Sの大事なもの(鳥の骨格標本、クマのぬいぐるみ)と母の日記を持ち出す。ワイオミングで捕まりそうになったり、ネブラスカでは無賃乗車のオジサンに励まされたり、途中の駅で念願のホットドッグを食べたりと楽しくはらはらする旅である。
旅の途中で母の日記を見る、日記にはT・Sとレイトンの生まれた時の足型や子供の絵などの思い出がいっぱい貼り付けられていた・・・・・T・Sは胸が熱くなる。
T・Sは列車の最終地点シカゴからヒッチハイクでやっとワシントンにたどり着く。スミソニアン博物館でジブセンに直接会うが、彼女はT・Sが10才の少年であることにびっくりする。
ネタバレ
ジブセンはT・Sを授賞式に出席させ、集まった皆をビックリさせようと考えた。T・Sは授賞式に出る、聴衆は愛想笑いをしているが、皆の顔が引きつっていることを発見する。
彼は引きつき笑いと、本当の笑いとの違いを、顔の筋肉の動きや、目の症状から分類することが出来ると、とっさに古い文献のことを考える。
T・Sはスピーチで三つの事について話をする。まず一つ目は「賞を頂いたことへのお礼」、二番目は発明品の永久機関について、磁力を使っていてこの磁力は400年しか持たないから本当の永久機関では無いことを話す。
三つ目は胸が熱くなってなかなか言葉が出ない、T・Sは弟の話をする・・・・弟が銃で自分を撃った事を話す、T・Sは銃声の音波を図表にしようと考え、弟と一緒に研究するが、銃が暴発し弟が吹っ飛んだとのことであった。
彼は涙ながらに弟の事を話し、聴衆も涙した。ところがこの一部始終を母クレアは聞いていた。
弟レイトンの死後犬のタピオカは血が出るほどバケツを噛むようになった、でも今はホタルを噛むようになっている、主人の死をタピオカは受け入れたと思う。
T・Sはマスコミに出まくり全米の人気者になった、聞くところによるとホワイトハウスも関心を持っているらしい、でもT・Sは寂しくなって家に電話を掛けるが誰もいない。
テレビ番組の収録の時、予想もしない母が出てきて、弟が亡くなったことはT・Sのせいではなく事故であったことを話し慰める。そしてテレビ放送中だが、息子を抱きしめ帰ろうとする。
酔っぱらったジブセンはT・Sに悪態をつくが、母クレアに張り倒される、そんなところに父のテカムセも出てきてじゃまなキャスターを殴り倒し、息子を背中に乗せて帰途に付く・・・・・・両親ともにT・Sを深く愛していることが分る。
T・Sはのどかな牧場の生活に戻る、お母さんは妊娠していて、子供が生まれそうだ。そしてT・Sは赤ん坊のためのゆりかご揺らせ機を永久機関として作る。
レビュー
子供を主人公にした楽しい映画であるが、大人を痛烈に批判する場面が、時々出てきて面白い、たとえば学校の先生とのやり取りでは、先生の知識をはるかに超えていて、先生は対応に困り赤点を付ける。
でも先生に提出した赤点レポートは科学雑誌に投稿して見事に掲載されている・・・・・・・先生もT・Sが天才であることを見抜けない。学校にもT・Sの居場所は無い・・・・・彼は落ち込む。
姉は弟T・Sのことをうすのろと呼んでいる、そしてモンタナから自分より早く出ていくことに腹を立てている、彼女は田舎牧場から早く都会に行きたいようだ。
父は弟のレイトンを溺愛していて、T・Sをあまりかまってくれないし、母も忙しそうに昆虫の研究をしている・・・・天才とは孤独だ。
彼の興味の対象は、皆と違っていて、10才の子供なのにこどもこどもしていない・・・・・変に大人びているから周りとのギャップに悩んでいる。
でもそんな子供でも家族はみんなT・Sを愛している、ただ理屈っぽいT・Sを敬遠しているだけなのだ。
結末はハッピイエンドで良かったね・・・・・・・子役のカイル・キャトレットが天才的な演技をする。凄い役者は生まれながらに何かを持っているのかなーと思わず感じちゃうね。
辰々
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