ホラー

映画「ヘレディタリー/継承」感想・評価:誰に何を継承させるのか、結末まで続く恐怖にちびりそうだ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2018年11月日本公開のアメリカ製作ホラー・サスペンスドラマ
監督・脚本 アリ・アスター(ヘレディタリー/継承ミッドサマー
出演 ●トニ・コレット(シックス・センス、リトル・ミス・サンシャイン、ヘレディタリー/継承
●ガブリエル・バーン(ヘレディタリー/継承
●アレックス・ウルフ(ライ麦畑で出会ったら、パトリオット・デイジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングルヘレディタリー/継承
●ミリー・シャピロ(ヘレディタリー/継承
●アン・ダウド(ヘレディタリー/継承

【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

 

謎が謎を呼び、結末まで緊張と恐怖が続くホラー映画だ。ヘレディタリーとは世襲や遺伝などの意味もある。アリ・アスター監督の長編映画デビュー作だ。この監督、ただ者ではない、緻密な伏線をばら撒き視聴者を恐怖のどん底に引きづり込んでゆく。

映像と音と不気味な音楽によって心理的な恐怖をじわじわと盛り上げる。今までない異質なホラーと言っていいかもしれない。あなたは最後まで耐えられるかそれとも途中でちびってしまうのか?

主人公の家族はいったい何に呪われているのか。「継承」とは誰に何を「継承」させるのか?そして「継承」による代償は・・・。予想もつかない結末とは?

話しのスジを少し紹介すると。ミニチュア模型アーティストのアニー・グラハム(トニ・コレット)は実母エレンの死をきっかけに精神が落ち込んでゆく。

彼女の家族は呪われたように悲劇に見舞われていた。最近亡くなった母エレンは解離性同一性障害を病んでいた。父は精神分裂病で餓死し、さらに兄は被害妄想で自殺していた。

生き残っているのはアニーだけだ。彼女自身も夢遊病に悩まされ、いつかは自分や子供たちにも親と同じ精神病が出て来るのではないかと怯えていた。

アニーには、夫スティーヴ(ガブリエル・バーン)、長男のピーター(アレックス・ウルフ)、長女のチャーリー(ミリー・シャピロ)がいた。チャーリーはエレンに溺愛されていたが彼女は内向的で家のすぐそばのツリーハウスがお気に入りだった。

ピーターは高校生だがパーティに行くため車を貸してほしいとアニーに頼む。アニーはチャーリーも一緒に連れてゆく条件で車をかす。パーティの途中にチャーリーが苦しみだす。彼女はピーナッツアレルギーだ。食べたケーキにそれが入っていたようだ。

ピーターはチャーリーを車に乗せ病院へ急ぐが、途中、動物の死骸をよけようとして電柱に接触する。その時、窓から顔を出していた妹の首が吹っ飛ぶ。ピーターは放心状態で家に戻り、ベッドに入る。

翌朝、チャーリーの首なし死体を見たアニーは叫び声をあげ泣きじゃくる。家族は修復不可能なまでに壊れてゆく・・・。

そしてこの家族に更なる悲劇が襲い始める。何が待っているのか、そして運命から逃れることは出来ないのか・・・。

アリ・アスター監督の「ミッドサマー」が公開されている。これもちびるほと怖い。異質な恐怖を再び味わうことになるとは・・・。

その後のストーリーとネタバレ

アニーは精神的に耐えきれなくなって集団セラピーに参加する。そこでジョーンと言う女性と知り合う。彼女は何かあったら連絡してと電話番号のメモをくれる。アニーは思い余ってジョーンの所に行く。

暫くして町で偶然ジョーンに会う。アニーは再び彼女の部屋を訪れ、そこで不思議な体験をする。何とジョーンは降霊の儀式を始めたのだ。そしてテーブルに置いたグラスが動いたり、黒板に字を書いたりし始めた。アニーは腰が抜けるほど驚く。

アニーは家に帰ってから真夜中に嫌がる家族を集め降霊会を再現してみた。チャーリーの霊を呼び出してみた。ところが得体のしれないものを呼び出してしまったようだ。一時的にアニーがおかしくなる。彼女は知らないうちに地獄の扉を開けてしまった。

それ以降、家族に不思議なことが起き始める。アニーは自分が大切に作ってきたミニチュア作品を壊してしまう。そしてピーターはチャーリーの幽霊を見たと言う。アニーは何者かによって書かれたスケッチブックを燃やそうと暖炉の中に投げ込む。ところが火が自分にも燃え移り、慌ててスケッチブックを暖炉から拾い上げる。

アニーはジョーンの所に行ってみたが留守だった。(部屋の中には何かの儀式を行った跡が残っていた。そして三角形の線の中にピーターの写真があった。)

アニーは自宅に戻って、母エレン・リーの遺品を調べる。その中には「悪魔の召喚方法」の本があった。本には「儀式の完了後定められた者の体に宿る」「王は男、男の肉体が必要である」とあった。さらに「王の臣下への財宝」として多額の金貨が与えられるようだ。

アニーは血の気が引く。悪魔には3つの首が必要なようだ。アニーは屋根裏部屋を調べてみる。そこには沢山のハエが発生していた。部屋の奥には母と思われる首のない死体が横たわっていた。その頃、授業を受けていたピーターが発狂したように異常な行動を取る。

スティーヴは高校から連絡があり息子のピーターを家に連れ帰る。アニーはピーターが描かれたスケッチブックを焼却しないと大変なことになると夫に話す。スティーヴは本を暖炉に投げ入れることを拒絶するがそれをアニーが投げ込む。

その瞬間、スティーヴは火だるまになって燃え尽きる。ベッドに横たわっていたピーターは目を覚ます。アニーには何かが憑依したのか壁をはい回る。ピーターは黒こげになった父を見つける。

突然母が襲ってくる。ピーターは急いで屋根裏部屋に隠れるが。そこに母は現われワイヤーを首に回して自ら首を切断する。部屋の隅には裸の男女がこちらを見ている。ピーターは気が動転し窓を突き破って地上に落下する。

ピーターの体から魂が抜け出るとそこに光が吸い込まれる。首のない母の死体は空中を浮遊しツリーハウスに吸い込まれる。気が付いたピーターはツリーハウスの梯子を上って行く。

ハウスの中には多くの人々が四つん這いになって頭を下げていた。正面には王冠を被ったチャーリーの首が祭られてあった。王妃リーと書かれた祖母の写真も額縁に入っていた。そして祖母と母の首なし遺体もあった。

信者から王冠をかぶせられる。ピーターに向かってジョーンは「チャーリー大丈夫よ、あなたはペイモンになった。地獄の8王の一人」「我らは北西に向かいあなたを呼びました。最初の女性の体ではなく今は健康な男性の体を捧げます。」

「我らは三位一体を拒絶し偉大なペイモンのために祈ります。」「あらゆる秘密に対し知恵を授けたまえ、名誉と富とよき使い魔を与えたまえ」「人々を我らに従わせたまえ」「我らが今そして未来永劫あなたに従うがごとく」「ペイモン万歳」。

レビュー

悪魔崇拝カルト集団の物語だ。召喚する悪魔の名前は「ペイモン(あるいはパイモン)」。ペイモンは「地獄の8王の一人」とか「序列9番の地獄の王」などと呼ばれる。姿は「王冠を被り、女性の顔をした男性で、ひとこぶラクダに乗って現れる」と言う。

生贄によって召喚され、「召喚者に知識と知恵を与え、人々を召喚者の意志に従わせる力を持つ」。ペイモンの召喚者はアニーの母エレン・リーだったが、亡くなったためチャーリーに引き継がれたようだ。壁に書かれた「サトニー」「ザザス」は悪魔を召喚する呪文だ。

チャーリーも首が切断され、亡くなってしまったがその魂はこの世に存在していた。そしてピーターの体として再びよみがえる。映画に出て来るペイモンの絵は3つの生首を持っている。エレン、チャーリー、アニーの生首なのか?

現実世界において、悪魔崇拝(サタニズム)は「悪魔教会」などの多くの組織があるらしい。そして有名人として、レディー・ガガ、マリリン・マンソン、マイケル・ジャクソン、スティーブ・ジョブスなどが怪しいとされる。

ここにおける「サタニズム」とは単にキリストとは異なる全知全能の神を表しているだけかもしれない・・・日本における「密教」に近いのか?この映画のように世界征服を目的に悪いことを企む組織は少ないようだ。

大昔に流行った水木しげるのマンガ「悪魔くん」を思い出す。彼は全人類が幸せに暮らすためには「悪魔の力を借りなければならない」と「魔法陣」の前で「呪文」を唱え、悪魔を召喚する。そしてソロモンの笛を使って悪魔を従わせる。

しかし、これではホラーではなくなってしまう。悪魔崇拝カルト集団を描いたホラーとしては「ローズマリーの赤ちゃん」「エンゼル・ハート」をお薦めする。

TATSUTATSU

ミッドサマー

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