邦画

映画「アルキメデスの大戦」感想・評価:日本が威信をかけて建造した世界最大級の戦艦「大和」の最後を見届けよ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2019年7月公開の日本海軍と戦艦「大和」の建造に関するサスペンスドラマ
監督・脚本 山崎貴(永遠の0、寄生獣シリーズ、海賊とよばれた男、アルキメデスの大戦)
原作 三田紀房「アルキメデスの大戦」
出演 ●菅田将暉(あゝ、荒野、火花アルキメデスの大戦
●柄本佑(居眠り磐音アルキメデスの大戦
●舘ひろし(アルキメデスの大戦)
●田中泯(アルキメデスの大戦)

映画『アルキメデスの大戦』予告【7月26日(金)公開】

 

全長263m、排水量72,809トン(満水)、46cm主砲を搭載した史上最大級の戦艦「大和」。この戦艦の攻撃能力は世界に類を見ないほど強大だがそれにも増して姿が美しい。まるで海上に浮かぶ富士山だ。

今のお金にして4,000~5,000億円(あくまで推定)を投じ、日本の技術の粋を集めて建造された。ところが就役から3年半後の1945年(昭和20年)4月7日、鹿児島県沖の坊ノ岬近くで、たいした戦果も挙げられずに撃沈される。

このドラマは三田紀房のマンガ「アルキメデスの大戦」の実写化だ。史実や実在のモデルを基にした壮大なフィクションだからこそリアリティがある。

冒頭、5分半の「大和」がアメリカ戦闘機の集中攻撃を浴びて沈没してゆくCGを見るだけでも価値がある。10本の魚雷と空から降り注ぐ爆弾によって横転し、船体の爆発によって真っ二つに折れ、3,000名の乗組員とともに海底に消えてゆく。

わずか2時間足らずでこの怪物が消えてゆく。不沈戦艦と呼ばれ「日本人の心の支え」であったものがあまりにあっけなく崩れてゆく。時代は大艦巨砲主義から航空主兵主義に移って行く。

山崎貴監督はこの「大和」が沈むことによって「無謀な戦争を止めるきっかけを我々に与えた」と考えている。そして、「大和」は日本国に代わって犠牲になる為に建造されたと言う強烈なメッセージを伝えたかったようだ。

山崎は大和近くの駆逐艦に乗っていた人から聞いた話にショックを受けている。撃墜されたアメリカ軍パイロットを救助艇が助けて飛び立ってゆく光景を目の前で見たそうだ。この時、日本は勝てないと心底感じたと・・・。

ドラマは9年前に遡る。1933年(昭和8年)戦艦大和建造計画が持ち上がる。海軍大臣 大角岑生(小林克也)、造船中将 平山忠道(田中泯)、海軍少将 嶋田繁太郎(橋爪功)を中心とする建造推進派。海軍中将 永野修身(國村隼)、海軍少将 山本五十六(舘ひろし)中心とする反対派が激突する。

山本五十六は大艦巨砲主義は古臭い、これからは航空主兵主義に移行すべきと主張する。そして戦艦よりも航空母艦を創るべしと激論を戦わせる。戦艦大和建造費があまりに安いのに疑念を抱いた山本五十六は帝国大学出身の天才数学者・櫂直(かいただし:菅田将暉)をスカウトして少佐とし、戦艦大和の本当の建造費を算出させる。

戦艦大和の情報は最高機密に属し、全くその全容がつかめない。果たして櫂直はどのようにして戦艦大和の真の建造費を割り出し、見積もり差額との不正を暴いて、建造をストップさせることが出来るのか。

その後のストーリーとネタバレ

戦艦大和の情報は最高機密に属しているから誰にも入手できない。困った櫂直は現存する最高の戦艦「長門」(1920年竣工当時世界最大・最強の戦艦:全長225m、基準排水量39,120トン)をベースにしようと考える。

櫂は長門の艦長・宇野大佐(小日向文世)を上層部のコネで訪ねる。「長門」に乗り込んだ櫂は付き人の田中少尉(柄本佑)とメジャーを使って必死に艦を計測する。

さらに「長門」の設計図を秘密裏にメモに書き写す。この情報をもとに櫂は幻の大和の設計図を自分なりに書いてみる。設計図を書くにあたって10冊ほどの専門書を数日でマスターする。そばにいた田中少尉は100年に一人の天才数学者と言われる櫂の実力を目の当たりにして腰を抜かしそうになる。

誰も見たことのない大和の設計図を櫂は自己流で書いてしまった。これをもとにして製造コストを算出するのだが材料費・加工費・人件費が分からなければ話にならない。櫂はかつて家庭教師をしていた尾崎財閥の令嬢・尾崎鏡子(浜辺美波)の協力を仰ぐ。

恋人の鏡子によって尾崎造船から独立した大里造船社長・大里清(笑福亭鶴瓶)を紹介される。そして大里から多くの貴重な情報を入手し、鋼材の重量から建造コストを算出する数式を作り上げる。

戦艦大和建造推進派と航空主兵主義派との最終会議が始まる。この席で櫂は自分の作った数式を披露し、鋼材の重量から戦艦製造のコストを算出してみせる。

戦艦大和の建造費は会議では9,800万円(当時のお金で)とされた。これに対し櫂の試算では1億4,000万円以上かかることになる。おかしいと突き上げるが、造船中将 平山忠道はこれは敵の目をくらます戦法だと意にかえさない。

ところが平山は櫂の作った戦艦大和の設計図を見てびっくりする。そこには平山が作ったものよりも理論的に正しい設計図があった。平山は自分の設計した大和が大波に弱いことを知る。彼はこの会議から負けを宣言し引き下がる。

暫くして櫂は平山から部屋に呼ばれる。彼の部屋には戦艦大和の模型があった。そして平山から戦艦大和を作るのを手伝ってほしいと懇願される。彼は自分の思いをさらけ出す。

「このまま戦争を続ければ日本は滅亡してしまう」「そうさせないためには大和に犠牲になってもらう」「この巨艦大和が沈めば日本は目が覚め戦争を止めざるを得ない」・・・平山はそうつぶやく。

戦艦大和は1941年12月16日に就役する。艦には就役前の11月25日、山本五十六連合艦隊司令長官が視察に訪れる。そこには櫂中佐の姿もあった。櫂は下船し、振り返って戦艦大和を見る。その瞳から涙が流れる。

レビュー

大和型戦艦は3隻建造予定されていた(大和、武蔵、信濃)。1号艦は「大和」、2号艦は「武蔵」が就役していた。ところが1944年(昭和19年)10月24日フィリピン海の一部シブヤン海で「武蔵」が撃沈される。

アメリカ戦闘機の度重なる攻撃で9時間後沈没する。そして「大和」も1945年(昭和20年)4月7日、鹿児島県沖の坊ノ岬近くでわずか2時間で撃沈される。

戦艦「武蔵」

武蔵の沈没に慌てた海軍は3号艦を空母に設計変更し「信濃」としたが空襲を避ける為、未完成のまま横須賀から呉へ回航される途中に米潜水艦の攻撃によって沈没させられる。そしてその後、最後の浮沈戦艦「大和」も沈没する。

大艦巨砲主義によって46センチ砲が搭載されたが動かない標的であっても数%程度の命中率であった。したがって動く対象物であれは0.1%以下と言われている。戦闘機の方が目標に近づき魚雷や爆弾を投下させることが出来るのでその差は歴然だ。

空母「信濃」

もし、日本がもっと早く航空主兵主義に移行しておればどうなったか分からない。しかし、そうなれば戦争が止めどもなく続くことが考えられる。

山崎貴監督の「大和」が沈むことによって「無謀な戦争を止めるきっかけを我々に与えた」との強いメッセージは胸を打つ。この物語はフィクションだが戦争の無謀さを考えさせるうえで良い作品だと思う。

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