邦画

映画「日日是好日」感想・評価:茶道を通して毎日を生きる楽しさを味わえる秀作

サマリー


★★★★☆(見るべき名作)

2018年10月公開ヒューマンドラマ
監督・脚本 大森立嗣(まほろ駅前多田便利軒、日日是好日
原作 森下典子『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
出演 ●黒木華(母と暮せば散り椿日日是好日
●樹木希林(わが母の記、あん海街diaryモリのいる場所万引き家族日日是好日
●多部美華子(深夜食堂日日是好日

黒木華&樹木希林共演『日日是好日』予告編

 

樹木希林さんの遺作になってしまったが、しっとりとした心に優しいお薦め映画だ。「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」とは禅語のひとつで唐末の禅僧 雲門文偃(うんもんぶんえん)の言葉とされる。

「毎日毎日が素晴らしい」と言う意味だが色々な解釈がある。「毎日が良い日となるように努力すべき」とか「日々について良し悪しを一喜一憂するのではなく今が一番大切なのだ」そして「あるがままを受け入れる」など多くの考え方がある。

僕が映画を観て感じるのは「一日一日を大切に生きる。過ぎ去った時間は戻ってこない。」そして「雨でも晴れでも暑くても寒くても、季節のままに生きる。」・・・ことかな。

映画「アバウト・タイム~愛おしい時間について」も人生を考えさせる映画で「人は誰しも人生と言う時間を旅している、その旅が素晴らしいものになるように、ベストを尽くすしかない」と言っている点が共通する。(映画「アバウト・タイム」にみる充実した人生を送る為の時間の使い方 もご参考に)

話のスジを少し紹介すると。大学生の典子(黒木華)は従姉の美智子(多部美華子)とお茶を習うことになった。当初はそんなに乗り気ではなかったが、茶道教室の武田先生(樹木希林)のもとに通いはじめる。

最初は何も分からず先生の言われるままに真似をするところから始まった。先生は「お茶は形から入っていいんですよ、あとから心を入れれば」と言ってくれる。

お茶の心が分からないままに数年通い続ける。典子は大学を卒業しなんとなく出版会社のアシスタントをすることになった。美智子は商社に就職しバリバリ仕事をはじめる。

典子も美智子も何故かお茶を習う事は続いていた。武田先生が優しいし、お茶のお菓子も美味しい・・・。就職して3年後美智子は会社を辞めると言う・・・夢破れたのか。彼女は地元に帰って見合で開業医と結婚する。

典子は美智子がいなくなってもお茶を習い続け、少しずつお茶の道が分かるようになってきた。自然に手足が動きお茶を上手くたてることが出来る。お湯と水の注ぐときの音の違い、かき混ぜる時の力の加減など5感が研ぎ澄まされてゆくのが分かる。

典子は恋人が出来、結婚をすることになったが、相手の裏切りが分かり結婚を断念する。典子はもの凄く落ち込む。出版会社のアシスタントから正社員へのテストもうまくゆかなかった。

その後のストーリーとネタバレ

典子は一年以上苦しんだがそれでも好きになってくれる人との出会いがあった。また、日々の生活に戻って行く。ある日父(鶴見辰吾)から「近くに来たので合わないか」と電話があった。典子はあいにく忙しく断ってしまった。

数日後、父が倒れたとの連絡が入る。典子は病院に駆け付けたが、しばらくして父は亡くなる。典子は思いっきり泣く・・・何故父にもっと親孝行出来なかったかと。

お茶をたてていると5感が研ぎ澄まされ、春の雨の音、夏の雨の音、秋の雨の音の違いも少しずつわかる。そして二十四節気の移ろいを全身で味わう。

私の中で何かが変わって行くような気がする。世の中にはすぐにわかるものと長い時間がかかるものとがある。お茶を習い初めて24年が経とうとしていた。「お茶が教えてくれたことは、季節のように生きる事」。

武田先生はもうかなりの高齢になっていた。先生は新年のお茶会初めで「毎年同じことが出来ることは幸せ」と皆の前で話す。

レビュー

映画館はジジババでごった返していた。ストーリーには大きな起承転結もなくドラマチックなシーンもほとんどない。物語が季節の移ろいとともに淡々と進んでゆく。

それなのに見ていて飽きない、100分の映画だがもっといつまでも見ていたかった。こんなに心が洗われる映画は久しぶりだ。大森立嗣監督の手腕の凄さと樹木希林さんと黒木華さんの自然な演技が感動を呼ぶ。

日々忙しさにかまけて季節を感じることが少ない。最近では年を取ったせいか、月日の流れも速い。よく考えると毎日何となく過ぎてゆくことはもったいない。

残念ながら僕はお茶を習ったことは無いし、今後もやろうとは考えていないけど茶道の奥深さをこの映画で知った。「季節を五感で感じ、季節のように生きる」・・・これをこれから実践してみようかな。

TATSUTATSU

 

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