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映画「あん」感想・評価:暗いテーマを明るく描き結末が感動を呼ぶ心に残るドラマ

サマリー


ハンセン病(らい病)をテーマにした映画だが、決して暗くはなくしかも結末は心にジーンと響く。

映画『あん』予告編

主演が樹木希林だから成功したように思う・・・・彼女なくしてはこの映画はありえないね、いい味出してる。(樹木希林さんは亡くなってしまった。ご冥福をお祈りします。)

僕はどちらか言うと河瀬直美監督の映画は苦手な部類に入る、この映画も前半は少し退屈しかけたけど後半からの盛り上がりで充分挽回してるね。

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徳江(樹木希林)

主人公の徳江(樹木希林)は少女の頃に、療養所に連れてこられハンセン病と診断される。病気が確定されてしまえばこれからの人生は外界から完全に隔離された療養所生活になってしまう。

少女の徳江にとって両親や家族と別れることが死ぬほどつらかったに違いない。

この病気は顔や手足がタダレ、指や鼻がもげたり皮膚が溶けるような症状があったことから、当時の人たちはこの病気に極度の恐怖心をもっていた。

その恐怖心が患者たちへの根深い「差別」につながっている。現代医学ではこの病気の原因も治療法も確立され、日本ではほぼ根絶されている。でもいまだに「差別」が無くなっていないことをこの映画はうったえる。

らい予防法が廃止されるのが1996年と最近になってからのことで、それまで患者は強制隔離されていた。

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どら焼きやの雇われ店長 千太郎(永瀬正敏)

徳江はどら焼きやの雇われ店長 千太郎(永瀬正敏)に自分が産むことの出来なかった息子の面影を見る。その千太郎も重苦しい過去を引きずっている。

どら焼きやのお客の一人ワカナ(内田伽羅:うちだきゃら)はいつも千太郎から失敗作のどら焼きをもらっておやつにしている。彼女は母子家庭で貧しく、まだ中学生だ。

ワカナは卒業の時期だけれど、高校に行かないと言う。彼女はカナリアを大切に飼っている、でもアパートの大家からペット禁止を通告され、カナリアの里親を探さなくてはならないのがもっかの悩みだ。

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ワカナ(内田伽羅)

季節の移り変わりを桜で表現している。桜が咲くころに徳江が千太郎の前に現れ、どら焼きやのパートで働きたいと言い出す。

千太郎はその申し出を断ったが、彼女が自分で作ってきた「あん」の美味しさに驚き、彼女を雇い始める。徳江は「あん」を50年間も作り続けてきた。

彼女は小豆を煮込み、丁寧に愛情をこめて「あん」を作る。千太郎はそれを見ながら作り方を教わってゆく。

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桜が散り、若葉が出てくる季節だ、千太郎の店は「あん」の美味しさに評判を呼び繁盛する。ところが徳江が過去にハンセン病であったうわさを聞きつけ、店のオーナー(浅田美代子)が彼女を辞めさせるように千太郎のところに来る。

それからうわさが広がり、どら焼きやには客が来なくなる。徳江は店を辞めてゆく。千太郎は徳江を守りきれなかったことに悩み、ヤケ酒をあおる。

ワカナは千太郎と徳江の療養所を訪ねる。徳江は初めて自分の壮絶な過去を話し始める。

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時が静かに流れてゆくような自然な演出がいいね、そして心が揺れ動くさまを木々が風に「ザワザワ」とそよぐ描写で表現する・・・・うまいね。

自然(木々・桜・風・朝日・夕日・月・雨・・・・・)は何にも言わないけど観る者の心に訴えてくる・・・・・・河瀬監督は派手な演出とドラマチックなストーリーをわざと排除している、これがかえって現実味を出しているね。

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千太郎役の永瀬正敏が忌まわしい過去を背負った孤独な男をうまく演じている。また、樹木希林とのやり取りも親子みたいでピッタリだね。

千太郎は心の底にやさしさを持っている。でもこのやさしさは現代社会には通用しない・・・・だから落ちこぼれの人生を歩んでいる。

ワカナ役の内田伽羅は樹木希林の実の孫娘であり、おばあちゃんと共演出来るなんて幸せだよね。ただセリフは最初棒読み系で少し心配したけど、後半ではサマになってきている。

かつてはスーパーアイドルだった浅田美代子が無神経で嫌な女役をうまく演じる・・・・彼女の地じゃないだろーね。

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2015年公開のヒューマン映画、監督は河瀬直美(もがりの森)、主な俳優は樹木希林(東京タワー、わが母の記、海街dairy)、永瀬正敏(隠し剣 鬼の爪)、内田伽羅、市原悦子(黒い雨)、浅田美代子(釣りバカ日誌)、原作はドリアン助川である。

第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてオープニング上映される。39回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞を樹木希林が獲得している。

秦基博が主題歌「水彩の月」を歌っている、実にこの映画にピッタリだ。この映画は人気が高くロングラン上映が続いている。

最後に、この作品は大作ではない、テーマが暗い、ドラマチックな演出はない、主演がおばあちゃん・・・・ヒットするはずの無いセオリーだらけだ、でも多くの人に受け入れられている、何故か・・・・・是非自分で確かめてみてはとうかな。

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河瀬直美監督、樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、ドリアン助川

ストーリー

千太郎(永瀬正敏)は朝起きるといつものようにアパートの屋上で、朝日を見ながら煙草をいっぷくする。世の中春で桜が満開だ。

彼はアパートの近くにあるどら焼きや どら春の雇われ店長だ、店長と言っても一人しかいない。いつものように店を開け、どら焼きの準備を始める。

どら春にはいつも常連客の女子中学生がたむろしていた。そこにやはり中学生のワカナ(内田伽羅)がどら焼きを食べに来る。

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そんなところに今日は桜に誘われて、徳江(樹木希林)という老婆が現れる。徳江はこの店でアルバイトをしたいと言い出す。歳を聞いたところ76才で、あまりに高齢であることに千太郎はビックリする。

千太郎は徳江にどら焼き一個を手渡し追い返す。とても老婆に務まる仕事ではない、見た目よりけっこうきつい仕事だ。

ワカナは店長からできそこないのどら焼きをいっぱいもらって帰る。ワカナもこの店でアルバイトしたいようだが、まだ中学生では頼むことは出来ない。

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追い返したはずの徳江が戻ってきて、どら焼きを食べたけど「あん」が今一だと言う。徳江は50年も「あん」を作ってきたらしい、帰り際に自分の作ってきた「つぶあん」を置いて行く。

千太郎は徳江の「つぶあん」をゴミ箱に捨てようとしたが、思い直して試食してみる。徳江の作った「つぶあん」が意外に美味しいのにおどろく・・・・味もかおりも今使っている「あん」より段違いだ。

桜が散って若葉が出始めたころ、徳江がまた店に来る。千太郎は徳江に店を手伝ってもらうことにした。

徳江は両手にアザがあり指が変形して、字を書くのに苦労していたが「あん」作りには支障はなかった。

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千太郎は徳江から「あん」作りを教わる。徳江はどら焼きは「あん」が命だ、そして「あん」は業務用のものを使ってはダメ、自分で満足ゆくものを作らないとと言う。

徳江は小豆を煮込み、あくを丁寧に取って砂糖や水あめを入れてさらに煮詰める。千太郎も徳江も出来たての「あん」を使ったどら焼きを食べ、絶品の味を確信する。

「あん」を手作りするようになってから、お店は行列が出来るほど繁盛する、どら焼きの評判がいいようだ。

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ところがしばらくして、お店のオーナー(浅田美代子)が千太郎とところに来る。アルバイトで雇っている徳江がハンセン病患者ではないかとうわさがたっていると言う。

そしてどら春の看板にキズをつけることになるから、直ぐに解雇しろとせまる。千太郎はやるせない気持ちで橋どり重くアパートに戻る。

千太郎はそれでも徳江を解雇しなかった。しかしその後誰が悪い噂を流したのか、桜の葉が落ちるころには店の客足がぱったりと止まる。

果たして店はどうなってしまうのか、この先は是非映画を観てね。

ネタバレ

<ここから先はネタバレするから映画を観てから読んでね>

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お店のオーナー(浅田美代子)

徳江から千太郎に手紙が来る。手紙には「自分には非は無いつもりでも世間の無理解に押しつぶされてしまうことがある」「でも店長さんは、自分のどら焼きを作り続けてください」とあった。

徳江はどら焼きやにもう来ないつもりだ。

銀杏が色づくころにワカナがカナリアを持って店に現れ、千太郎に「徳江さんのところに行こう」と誘う。

徳江は療養所にいたがかなりやつれていた・・・病気なのか。ワカナはカナリアを徳江さんに育ててほしいとお願いする。

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徳江は夫が亡くなってから10年経つと言う。そして兄に連れられてこの隔離施設に来たのが16才くらいだったと昔を思い出す、それから60年に渡る長い月日をここで暮らしている。

ここへ来るとき母は徹夜してブラウスを縫ってくれた、でもここに来ると持ち物は全て処分されることになっていたので家から持ってきたものは何も残っていないと言う。

そして徳江はここで今まで和菓子を作り続けてきたとのことだ。千太郎は徳江が出してくれたぜんざいを食べて涙を流す。

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実は千太郎もどら春に来る3年前、働いていた酒場で酔った客を止めようと誤って相手に暴力をふるってしまう。そして殴った相手に重い障害を与え、刑務所暮らしをする羽目になる。

千太郎は刑務所で過ごしている間に母を亡くしてしまった。彼も暗い過去を引きずっている。

お店のオーナーがおいを連れて、千太郎に面倒を見ろと言ってくる。お店を改装してお好み焼きとどら焼きが両方出来るようにしたいとのことだ。

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千太郎とワカナが徳江を訪ねたところ、友人の佳子(市原悦子)が出てきて、徳江が3日前に肺炎で亡くなったと言う。

佳子は千太郎に徳江の形見をもらってほしいと言う。「あん」作りの道具だ。それにカセットテープに吹き込んだ徳江の思いも受け取って欲しいと。

千太郎とワカナはテープを再生し、徳江の声を聴く・・・・・声を聴いた二人は涙を流す。

徳江はワカナからあずかったカナリアを空に放してしまったと謝る・・・・カナリアが自由にしてほしいと鳴いていると思ったからだ。

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さらに徳江は子供を授かったのに、産むことが許されなかったと言葉を続ける。週に一度の散歩の時に、あまりに寂しい目をした千太郎を見かけ、つい声をかけたようだ。

徳江がもし子供を産んでいれば、千太郎と同じ年になっていたと言う。

佳子は徳江の墓代わりに植えられた「そめいよしの」を二人に見せる(療養所の人々には墓が無い決まりだ)。

新しい春が来た、公園には桜が満開だ、ワカナは制服を着て高校に行くようだ、そして千太郎は桜の下でどら焼きを売る。

千太郎の「どら焼きいかがですか」の生き生きした声が公園に響く・・・。

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レビュー

この映画の最後で、徳江は「私たちはこの世を見るために、聞くために生まれてきた」「私たちは生きる意味がある」と言っている・・・・・胸にジーンとくるね。

同じ人間として生まれたのに、人間扱いされてないなんておかしいよね。

ハンセン病は日本では根絶されたが、海外ではまだまだ多くの人が苦しんでいる。世界でこの病気が根絶される日が来ることを祈るばかりだね。

徳江は死ぬ前に自分の息子に会えたとお礼を千太郎に伝える。千太郎も自分の母親に徳江を重ね合わせたのかもしれない・・・・・二人を「あん」が引き付けたんだろーね。

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ところでワカナ役の内田伽羅の演技はまだまだだけど、素直なところが好感を持てるね。

ハンセン病をとりあげた映画は過去から多い、松本清張原作 野村芳太郎監督の「砂の器」、遠藤周作原作 熊井啓監督の「愛する」、外国では「ベンハー」、「モーターサイクル・ダイアリーズ」等が有名だね。

時間があれば鑑賞することをお薦めだね。

このようなテーマの映画は一般的にはスポンサーが集まりにくいし、ヒットするかどうかも分らない、でも河瀬直美監督は取り上げてる、実に勇気があるね。

樹木希林さんは最近映画に引っ張りだこだね、やはり独特の個性を持った俳優はなかなかいないからね。さあまだ時間があるからもう一回観るか。

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