サマリー
2014年に公開された、イギリス製作のスパイ映画、監督はアントン・コルベイン、主演はフィリップ・シーモア・ホフマン(レッド・ドラゴン)、原作はジョン・ル・カレ(裏切りのサーカス)の同名小説である。
残念なことにフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作になってしまっている、彼は薬物の過剰摂取によって死体で発見される。(2014年2月にニューヨークの自宅で、享年46才である。)
この映画はイスラム過激派を追う諜報機関の活動を描いた作品で、派手な銃撃戦とか殺人などのシーンは無い。
ドイツの諜報機関とCIA(アメリカの中央情報局)の駆け引きや、イスラム過激派の大物の尻尾を掴むためのおとり作戦など、どちらか言えば玄人好みで地味な作品である。
スパイ映画と言えば男臭い映画が一般的だが、この作品では女性諜報員が目立つ存在として描かれている、たまにはこんな静かなスパイ映画を、くつろいでじっくり観るのもおつなものだと思う。
ストーリー
ストーリーを少し紹介すると、舞台はドイツのハンブルグ、この町では2001年にアルカイダが9.11同時多発テロを計画した港町である。
そして欧米の諜報機関がこのテロの情報を入手しながら未然に防ぐことが出来なかったことから、彼らにとっては大きな汚点を残した場所でもある。
ドイツの諜報員のバッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、イスラム過激派のイッサ(グリゴリー・ドブリギン)が密入国した情報を掴み彼を監視し始める。
イッサは政治亡命を望んでいた、人権活動団体の弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス:アバウト・タイム、リトルプリンス)は彼と接触しそして彼を隠れ家でかくまう。
イッサの目的は銀行家のトミー(ウィレム・デフォー:グランド・ブダペスト・ホテル)と接触し秘密口座に隠してある、彼の父の金を引き出すことにあった。
イッサの母はチェチェン人でロシア人の父に犯され彼が生まれ、そして母はすぐに亡くなってしまったとのことである。彼は父を憎んでいた、そのため父の汚れた遺産は慈善団体に寄付しようと考えていた。
バッハマンは慈善活動家のアブドゥラ博士が表面的には穏健派の紳士を装っているが、実は資金をテロ組織に横流しする黒幕だとにらんでいる。イッサを使って彼を捕まえようと画策する・・・・つまり海老で鯛を釣る作戦である。
果たして彼の作戦は成功するのか、それとも博士は尻尾を出さないままに終わってしまうのか是非映画を観て頂きたい。
ネタバレ
バッハマンはまず弁護士アナベルを捕まえ拉致し、自分達に協力するよう説得をする、見返りはイッサの亡命受け入れである。
アナベルは渋々承諾する、イッサを銀行家のトミー(彼もバッハマンに脅され情報屋に成り下がっている)に会わせ、巨額の遺産をアブドゥラ博士にゆだねる手続きをさせる。
アブドゥラ博士はなかなか尻尾を出さなかったが、ついにイッサの遺産の一部をトンネル会社を通じてテロ組織に横流しをする証拠を残してしまう。
バッハマンの思うつぼである、彼はアブドゥラ博士を監禁しようとタクシー運転手を装い、博士を車に乗せて立ち去ろうとしたところ、横からCIAの車に衝突され、博士ばかりかイッサまで連れ去られてしまう。
最後の最後で、トンビに油揚げをさらわれてしまったようである・・・・彼は強引なCIAに対する怒りと自分に対する情けなさに思わず声を上げて叫ぶ「ちくしょう」。
レビュー
この映画ではバッハマンの諜報活動のやり方はソフトである、かれはテロリストであっても自分達の利益になるのであれば泳がせたり、待遇改善をエサに情報を得ようとする。
ところがCIAは強引である、容疑者は片っ端から容赦なく捕えてゆく・・・・・・・かえってテロ活動をあおる結果になりかねない。
CIAの幹部マーサ(ロビン・ライト)はバッハマンと情報交換をすると見せかけ女の武器(彼に気があるそぶりを見せる)をつかい彼を信用させ、淡々とチャンスをうかがう。
彼女はある面冷静で、強引なアメリカ方式を実践する・・・・・・生ぬるいことをしないのは9.11のせいかも知れない。
バッハマンのやり方が正しいのか、それともマーサのやり方が正しいのか、映画を観て判断してもらうしかない。
この映画は美女たちの戦いも見ものである、CIAの幹部マーサ(ロビン・ライト)・バッハマンの右腕イルナ(ニーナ・ホス)・弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)・・・・・・彼女達を見ているだけでも楽しい映画である。
まあ、男はいつまでたっても女性に弱いね・・・・・・・・。
辰々
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