サスペンス

映画「デトロイト」感想・評価:顔がこわばり胃が痛くなる衝撃のバイオレンスドラマ

サマリー


2018年1月日本公開のアメリカ製作バイオレンス・アクション映画
監督 キャスリン・ビグロー(ハート・ロッカー、ゼロ・ダーク・サーティ、デトロイト)
出演 ●ジョン・ボイエガ(スター・ウォーズ/フォースの覚醒スター・ウォーズ/最後のジェダイ、デトロイト)
●ウィル・ポールター(メイズ・ランナーレヴェナント、デトロイト、)
●アルジー・スミス(デトロイト)
●ジェイコブ・ラティモア(デトロイト)

映画『デトロイト』日本版予告編

 

デトロイトはフォード発祥の地で自動車産業の街と言われたアメリカの大都市だ。1967年7月23日に暴動が起き、瞬く間に拡大してゆく。

掠奪が横行し放火によって大火事が発生する。これを鎮圧するため州警察や軍隊までもが駆り出され町は戦場のようになる。当時、僕は高校生くらいで、この事件はあまり記憶に残っていない。

この暴動がキャスリン・ビグロー監督によって映像化された。僕は彼女の「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」が好きで今回も映画館に足を運んだ。

デトロイト暴動の発端は、黒人のベトナム帰還兵を祝うパーティが無許可営業の酒場で行われたことだ。これを取り締まる為に市警察が取った対応が横暴さを極め、地元住民との小競り合いに発展する。

冒頭、これらの模様がドキュメンタリー映像のように淡々と映し出され、前半はやや退屈した。間違った映画を見に来ちゃったかなと少し心配になった。

ところが後半から展開がガラリと変わる。アルジェ・モーテルのシーンからだ。モーテルの客の一人が面白半分に窓から弾の出ない競技用のピストルを撃ったことから市警と軍隊が殺気立つ。

ここからのシーンは顔がこわばり胃が痛くなるほどのバイオレンス場面の連続だ。競技用のピストルを撃った黒人青年カール(ジェイソン・ミッチェル)は逃げる途中、デトロイト市警のフィリップ(ウィル・ポーター)に背後から射殺される。

ホテルの同じ部屋にいた若者たちが一階に集められる。白人女性2人と黒人男性6人だ。市警のフィリップと同僚のフリン(ベン・オトゥール)、デメンズ(ジャック・レイナー)は彼らに執拗な暴力を振るう。

騒動を聞きつけて近くの店で民間の警備員をしているメルヴィン(ジョン・ボイエガ)、ミシガン陸軍州兵ロバーツ准尉(オースティン・エベール)が駆け付ける。

フィリップは狙撃に使われた銃(銃は空砲でおもちゃ)をみつけようと青年ばかりでなく、女性も尋問して痛めつける。市警3人のバイオレンスをもう誰も止められない。

彼らはどんどんエスカレートしてゆく、そして最悪の結末が待っていた・・・。

あまりのバイオレンスの激しさで目はスクリーンにくぎ付けだ。楽しい映画を期待する人にはお薦めできないが、人間の狂気をここまで映像化出来た作品は数少ない。彼らの迫真の演技と監督の凄さに脱帽する。

しかし、映画の根底に流れるテーマ「人種差別」だけは忘れてはいけない。暴動も殺人もすべて「人種差別」から始まっている。

その後のストーリーとネタバレ

8人の若者たちは壁に向かって手を挙げ並ばされる。そしてフリップは一人、一人殺してもいいと精神的なプレッシャーをかける。白人女性のジュリー(ハンナ・マリー)とカレン(ケイトリン・ディーヴァー)は黒人男性と付き合っているのが気に食わないのか娼婦呼ばわりしていたぶる。

フリップは青年の一人を別室に連れ込み暴力を振るう、そして拳銃を撃ち、撃ち殺したように見せかけて部屋から出て来る。次に死にたい奴は誰だと叫ぶ。もう青年たちはパニック状態だ。ロバーツ准尉はスキを見て2人の女性を別室に逃がす。

さらに青年たちに対する暴力の応酬は続く。フリップは部下のデメンズに一人別室に連れて行って撃ち殺せと指示を出す。これは本気ではなく見せかけのつもりだったが、デメンズはその青年を本当に撃ち殺してしまう。

慌てたフリップはデメンズとフリンに「正当防衛だった」と口裏を合わせる。初めて人殺しをしてしまったデメンズは顔面蒼白だ。

フリップは青年たちに「ここでの出来事は絶対に口外するな」と了解させて逃がすが、一人だけ了解しない青年がいた。フリップは至近距離からその青年を撃ち殺す。

結局3人の無実の青年(10代)が撃ち殺されている。民間警備員のメルヴィンは近くにいたが手出しも出来ず、傍観するしかなかった。まるで警察官たちによる集団リンチだ・・・市民を守るはずの警官が「黒人」だと言う理由で殺人者になる。

このアルジェ・モーテル事件はそののち裁判が行われるがフリップ達は有罪に問われることも無く「無罪」で幕を閉じる。生き残った5人の若者たちはこの先トラウマを抱えて人生を歩まなければならない。

レビュー

映画か終わった後、重苦しい気持ちで帰った。娯楽作品ではないので敬遠される方も多いと思う。でもこんな出来事が実際に起こったのは間違いない。

ここに出て来る人種差別者のフリップは数人の実在モデルの合体だと言われている。キャスリン・ビグロー監督はこの映画を作る為に、惨劇の生存者から話を徹底的に聞き込み、リアルなドラマを作り上げている。

この暴動は今から約50年前の出来事だが、黒人に対する人種差別や暴力・殺害などは現代でもほとんど変わっていないらしい。トランプ政権になってからさらに人種間の分断が起こっている。

考えさせられる映画だ。たまには社会派ドラマに挑戦してはどうだろうか、自分の考え方が変わるかもしれないね。

 

TATSUTATSU

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