サスペンス

映画「ヴィドック」感想・評価:鏡の顔を持つ連続殺人鬼とは誰なのか実在のヴィドックが暴く

サマリー


2002年公開のフランス映画、監督はピトフ、主演はジェラール・ドパルデュー(1492コロンブス、ライフ・オブ・パイ)である。ピトフは「デリカテッセン」「エイリアン4」で特撮監督を務めた人で、今回が監督デビュー作である。

Dark Portals: The Chronicles of Vidocq – Trailer

HD24P(映画撮影のためのビデオカメラ)デジタルシネマを世界で初めて採用した作品で、映像はやや目がチカチカするものの、その鮮やかさは驚きに値する。

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物語はパリ警視庁の前身にあたる犯罪捜査局の初代局長で、引退後は探偵となった実在の人物「フランソワ・ヴィドック」をモデルにしている。

そしてフランス全土を震撼させた連続殺人鬼「鏡の顔を持つ男」を追いつめるヴィドックが描かれている。

鏡の顔を持つ男の仮面に映った人間は必ず死ぬと恐れられていた。そしてヴィドックが仮面の男に殺される場面から始まる。彼はガラスを溶かすカマに落ちてゆく、その時仮面の男の素顔を見る。

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主人公が映画の冒頭で死んでしまうとともに、犯人が誰なのかを主人公が知ってしまう、このな斬新なストーリーは観たことが無い。

作家のエチエンヌは、ヴィドックが殺されるまでの足取りをさぐり、連続殺人事件の真相を明らかにして行く。

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果たして仮面の男とは誰なのか、またヴィドックは本当に死んでしまったのか、映画を観て頂きたい、少しエロチックな埋もれた秀作である。

ストーリー

ストーリーを少し紹介すると、舞台は1830年のパリ、ヴィドック(ジェラール・ドパルデュー)が殺されたと新聞の号外が町中に配られる。この号外を読んだ作家のエチエンヌ(ギヨーム・カネ)はヴィドックの探偵事務所に駆け付ける。

彼はヴィドックの伝記作家であった。そして彼はヴィドックの助手ニミエ(ムサ・マースクリ)に向かって伝記を完成させ、犯人捜しに協力すると申し出る。

ニミエが話すところによると、ヴィドックは一週間前に起こった奇妙な事件を捜査していた。その事件とは二人の男がイナズマに撃たれ焼け死んだ不可解な出来事である。二人はそれぞれ武器商人と化学者であった。

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彼らはしばらく前からおびえており、それぞれ4人もの護衛を付けていた。ところが雷は防ぎきれなかったようである。しかし彼らの帽子の中から金の髪飾りが見つかる。

ヴィドックは金の髪飾りを避雷針代わりに使った殺人とよむ、さらに被害者の衣服には火薬まで塗り込まれていた。

彼は髪飾りをなじみの踊り子プレア(イネス・サストーレ)のものと見抜き、彼女を尋問する。彼女は手紙と一緒にお金が送られてきた、そして帽子の中に髪飾りを入れろと指示される。

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さらに3つ目の帽子にも細工したことが分かった、その相手とは医者のラフィットであった。ヴィドックは彼のもとに駆け付け間一髪、帽子はじき落雷を防いだが、ラフィットは心臓麻痺で死んでしまったとのことであった。

そしてその場所には鏡の顔を持つ男が潜んでいた、ヴィドックはその男を追うが、簡単に逃げられてしまった。

エチエンヌはさらにヴィドックの捜査の足取りを追う、殺された3人の共通点はいったい何だろうか。彼らは変人ではあるが悪人ではなさそうだ。

彼らが通っていた娼館へエチエンヌは調査に出向く、そして3人が望んでいたものは、処女つまり純潔な少女達を手に入れることであった。

性に興味の無い彼らがいったい何のために、お金を出してまで少女たちを集めていたのか・・・・・このあとは映画を観て頂きたい。

ネタバレ

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エチエンヌはこれらの情報(人身売買)を掴んでいた新聞記者のところに出向く、そして真相を尋ねる。さらに心臓麻痺で亡くなったラフィットの妻の所へも情報の真意を確かめに行く。

ラフィットの妻は鏡の顔を持つ男と死んだ3人との話を盗み聞きしていた。仮面の男は若さを保つ薬を渡す代わりに、少女を手に入れろと取引をしていた。

彼女の話では仮面の男は錬金術師であり、また殺人鬼でもある、そして鏡には最後の犠牲者の顔が写るとのことであった。

ところがエチエンヌの調査を追うように、これらの証人達が何者かに次々と殺害されてゆく。また死んだ3人もたぶん少女たちの人身売買を拒んだために、仮面の男に殺されたであろうことが推測される。

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エチエンヌはヴィドックの最後の足取りを調べる。彼は仮面の男つまり錬金術師の実験室を見つけそこに踏み込む、そこは少女たちの生血を原料にして、不老不死の鏡のエキスが作られていたおぞましい場所であった。

そこに仮面の男が現れる、彼は男と格闘するが、仮面の一部をはぎ取ったところで、男は逃げてゆく。ヴィドックの考えでは、男の仮面は生命体の鏡であり、この鏡は人間のエネルギーを吸い取る道具だと思われる。

錬金術師は人間を殺し、その魂をガラスに閉じ込める。男は魂を食べ若さを保つ、鏡を作れるのは処女の生血だけであるらしい。男は原料をガラス職人に渡し、生命体の鏡を作らせているようであった。

エチエンヌはニミエとプレアを連れて、鏡が作られていると思われるガラス工房へ行く、そして密かにかくまわれている仮面を作ったガラス職人に会う。

ところがそのガラス職人は立ち上がり「ワナにかかった」と自分の変装を取る。そこにはヴィドックが立っていた、彼はガラス職人に成りすまし、エチエンヌが来るのを待っていたのであった。

鏡の顔を持つ男とは何と、作家のエチエンヌであった。ヴィドックは炎が燃え盛る大ガマに落ちたとき、運よくカマのくぼみに隠れることが出来、命拾いをしたとのことであった。

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ニミエは仮面の男に向かって拳銃をぶっ放す、しかし拳銃の弾は仮面にはじかれ彼に襲い掛かる、そしてニミエは死んでしまう。仮面の男はこんなことでは殺せないのである。

ヴィドックはたくさんの鏡がぶら下がった部屋へ仮面の男をおびき寄せる。仮面の男は自分の顔が鏡に映り、仮面に封じ込められていた魂が次々と飛び出してゆく。

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結局仮面の男は鏡を見ることによって、自分で自分のエネルギーを吸い取られ弱体化していく、そこにヴィドックは床に落ちていたガラスの破片を拾い上げ、仮面の男の腹を突き刺す。

男はもだえ苦しむが、すきを見て窓ガラスを突き破り、堀の水の中に落下する。

後で堀を調べたが死体は上がらなかったそうである。果たして鏡の顔を持つ男は生きているのであろうか・・・・。

 

レビュー

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映画の進歩は著しいもので、デジタルシネマはどんどん進化してゆく、俳優たちの周りの空間や、仮面に写る映像のほとんどはデジタル化された画像が使われている。

昔は映像化が不可能とされた物語なども、最近では撮影技術、映像化技術などによってどんどん映画化されている。そのうち俳優はいらなくなってしまうのか・・・・まあ片や、映像化技術を使わないシンプルな昔風の映画もそれはそれで面白いかも知れない。

この映画でモデルとなったヴィドックは実在の人物で、最初は犯罪者であった、投獄と脱獄を繰り返すうちに改心し、犯罪捜査に協力するようになる。

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彼は過去の犯罪者としての経験や人脈によって数々の手柄を立てる、そしてパリ捜査局の初代局長にまで登りつめる。

さらに引退後は世界初の「探偵」となる、彼の探偵としての回想録は、エドガー・アラン・ポーやアーサー・コナン・ドイル(シャーロックエレメンタリー)などに影響を与えたと言われている。

また、ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」も彼から着想を得たとのことである。まあとにかく世界には変わった人物がいるものだと思う。

こんな一風変わった映画を観るのもたまには、気分転換になっていいね・・・・。世界で初めて探偵業を始めた「シャーロック・ホームズのモデルはフランスに実在した」を参考に。

辰々

ところで怖い映画を4連発で紹介するね。是非見てね「死霊館エンフィールド事件
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トラウマになるほどグロいお薦め映画ベストテン

ところで「初心者入門シャーロック・ホームズのすべてが分かる映画・海外ドラマ」も参考にしてね。

 

 

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