サスペンス

映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」感想・評価:主人公が閉じ込められている世界はどんなところ天国、地獄

サマリー

 


★★★☆☆(お薦め)

2022年11月11日 日本公開 アメリカ製作 SFサスペンス
監督 オリヴィア・ワイルド
出演 ●フローレンス・ピュー
●ハリー・スタイルズ
●クリス・パイン
●オリヴィア・ワイルド

映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』日本版予告 2022年11月11日(金)公開

 

アメリカが光り輝いていた1950年代、広い邸宅と青い空、主人公のアリス(フローレンス・ピュー)は優しい夫ジャック(ハリー・スタイルズ)と暮らしている。

夫は「ビクトリー・プジェクト」という、極秘の仕事に従事している。毎朝、ジャックは高級車に乗り込んで仕事に行く。近隣の住人達も妻を邸宅に残し職場に急ぐ。ありふれた毎日が繰り返される。

ジャックを送り出したアリスは広い邸宅の中で、掃除をしたり、食事を作ったりと満ち足りた環境にいた。余暇も充実している。隣近所の妻たちとプールで泳いだり、パーティをひらいたり、ダンス教室に出かけたりと・・・ところが時々なぜか不安に襲われる。

料理の途中、卵を握ってみる。ところが手の中でつぶれた卵に中身が入っていない。ある日、窓ガラスを拭いていると後ろの壁が彼女に向かってくる。壁とガラスに挟まれ、アリスは押しつぶされそうになる。

何気なく、顔に料理用のラップを巻き付ける。ぐるぐる何度も巻き付け窒息しそうになって、ラップを引きちぎる。隣の住人マーガレットが発狂し、喉を搔っ切って屋根から落ちる。

プールでは、水中の暗闇に引き込まれる。ダンスのレッスン中、鏡に向こうにいた女性がこちらに向かってきて激突する。日常の中、満ち足りているはずなのに、しょっちゅう嫌な「デジャブ」を見る。

それに「ヴィクトリー・プジェクト」の創設者、フランク(クリス・パイン)に日常生活がのぞかれているような気がしてならない。彼は全てを知ったような顔をしてアリスを見る。

ある日、アリスは山のふもとに飛行機が墜落したのを見た。彼女は山に向かってゆく、そして入ってはならない「本社」と呼ばれる禁断の地に踏み込んでしまう。そこで見たものとは・・・。

ご存じの通り、アリスとは「不思議の国のアリス」を連想する。そう考えるとこの世界は「夢の中」なのか?彼女は主婦があこがれる理想的な世界に住んでいることになる。

申し分のない広い家、家の中は一流家具で埋まっている。そして高級車に乗って仕事に出かける優しい夫。余暇は好き放題、毎日がパーティーだ。ところがこんな理想的な暮らしの中でいったい何が不満なのか。

妻たちが次々とこの環境は「偽物だ」と気づいてゆく。つまり、ここで暮らす彼女たちには現実感が無い。楽しいことばかり過ぎる。理想の世界に住んでいても、現実感がなければ幸せはそのうち崩壊する。

妻たちは「自分は囚われ、自由が無い」さらに「間違いなく夫に拘束されている」と感じ始める。まるで自分の意思が無いような世界だ・・・つまり飼育されている世界だ。極端な例を出せば「かごの鳥」或いは「虫かごの虫」状態だ。

この理想の世界に集まってくるカップルたち。よく見ると男たちはすべて「ダメ男」のように見える。しかも昼間は「会社」で何をやっているのだろうか。

次々と疑心暗鬼に陥る女たち・・・そしてこの世界から脱出するためには「自分が自殺する」か「亭主を殺すしかない」と考えるようになる。この映画の怖さはこんなところにあるのかもしれない。

妻から愛想をつかされそうになった男たちはこの題名の通り「Don`t Worry Darling = 心配しないでダーリン」と別世界に逃げようとする。

この「別世界」は次の何なのか「夢の中」、「仮想空間」、「メタバース」、「宇宙人にとらわれた世界」・・・最後まで見ればその謎は解ける。

結婚生活が破綻したときに夢見る世界。ダメ男たちが最後に取った手段、それは恐ろしい結末を迎える。ところでこれを監督しているオリヴィア・ワイルドはこの映画にも出演している。

彼女は女優として色々なドラマに出演している、「ドクター・ハウス」なんかよかったね。今回の作品はなかなか面白いと感じる。美人なのに監督の才能もあるとは驚きだ。主演のフローレンス・ピューの演技も素晴らしい「ミッドサマー」を思い出すね。

 

TATSUTATSU

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