SF

映画「スノーピアサー」感想・評価:地球で最後に生き残った人々を載せた高速列車は何処に行くのか

サマリー


鬼才ポン・ジュノが放つ近未来SF映画『スノーピアサー』予告編

 

2014年日本公開の韓国・アメリカ・フランス合作映画で、監督はポン・ジュノ、主演はクリスエバンスである。ポン・ジュノ監督は私の好きな監督の一人である。「殺人の追憶」を観たとき、凄い才能を持った監督が出てきたと思った。最近では「パラサイト 半地下の家族」が素晴らしい。

原作はフランスのグラフィックノベルであるが彼がそれを長年温め膨らませたものと思われる。その物語の斬新さは素晴らしいと思うし僕自身もこのようなテーマは大好きである。

しかも彼の初の外国合作映画で言語は英語となる、また結構お金もかかっている。

しかし残念ながら、全体を通して映画に彼らしいシャープな切れ味がない。僕としては少し残念な作品だと思う。また好きな人と嫌いな人が分かれてしまう映画のような気がする。

ストーリーを一言で言ってしまうと、氷河期に突入した地球で最後に生き残った人類を乗せた巨大列車の物語である。

ストーリー

少し紹介すると、地球温暖化を食い止めるため大気中に散布された薬品が地球規模での低温化を招く。そして地球は氷河期に戻り、雪と氷に閉ざされてしまう。人類のほとんどは死に絶え、「スノーピアサー」と呼ばれる永久機関をもった巨大列車に乗っている人々のみが生き残る。

列車の中の先頭車両には富裕層が住み列車全体を支配する。後部車両には貧困層が奴隷のような生活をしており、リーダーであるカーティス(クリス・エヴァンス)はこの理不尽な待遇を打ち破るべく反乱を起こす。

彼は用意周到に計画を練り、この列車のセキュリティーを担当していたナムグン・ミンス(ソン・ガンホ)と娘のヨナ(コ・アソン)を見つけ仲間に入れる。


そして前方車両に向かって進撃する。列車王国の総理大臣とも呼べるメイソン(ティルダ・スウントン)は防衛隊を率いて応戦する。

カーティスは果たして先頭車両まで到達することが出来るのか、また先頭車両に君臨するウィルフォード(エド・ハリス)とはいったい何者なのか・・・・・・・是非見て頂きたい。

ネタバレ

<ココカラ、ネタバレします。>

当初僕の予想としては一車両に1000人以上が乗り込める巨大列車を想定していた、しかも連結車両は数百台から数千台・・・・最後尾から先頭車両に行くまでに何週間もかかる・・・・。

ところがこの映画では車両は普通車両、連結も10~20台程度に見えてしまう・・・もっと膨らませてほしかった。

列車には、色々な特殊車両が連結され、花園・食料製造工場・水族館あるいは魚類養殖場か・幼稚園・ディスコ・・・・・などなど面白く見せてくれる。

また、永久機関は例えば、空気中から取り出した重水素を用いた核融合とか・・・・さらに線路が摩耗しないリニアモーターカーとか最新技術を使ってほしかった。

さらに巨大列車の成り立ちと歴史(少なくとも100年以上)なんかも少し挿入してくれれば物語の深みが増したように思う。

カーティスは飢餓に負け子供を食べてしまった過去を持つ、その時ギリアム(ジョン・ハート)は自分の腕を切り落とし「食べろ」と与える。

ギリアムは貧困層の精神的支えのように描かれている。しかし彼はウィルフォードとつながっている・・・・その真意は、増えすぎた人口の抑制か。


メイソンは貧困層に対し強権を発動する、規律を破ったものは容赦しない。罪人は腕を車両から出させ外気で凍った腕を叩き割らせる・・・・残酷なシーンである。

また、定期的に子供を親から引き離し連れて行ってしまう・・・・なんのために。

カーティスは仲間を率いて防衛隊と戦う、暴力描写が激しい場面があり、この場面はポン監督らしい。

カーティスは多くの仲間を失うが、メイソンを捕え前方車両に向かって進む。そして、ウィルフォードと対峙する。ところがウィルフォードは彼を暖かく迎え「私の後継者になれ」と信じられない言葉をはく。

彼は呆然と立ち尽くす、今まで多くの犠牲を出してまでここに来た意味は一体なんだったのだろうかと。過去に何回か反乱があった・・・そのたびに多数の死傷者をだし鎮圧されたが、それはガス抜きなのかそれとも人口のコントロールなのか。

ギリアムとウィルフォードがつながっているのも暴露される。カーティスが呆然とする間、時すでに遅くナムグンが車両に爆薬を仕掛けた後だった。

彼は永久機関本体の狭い空間の中で働く、連れ去られた子供を見つける。子供はとても大人が入り込めない機械の中で機械の整備をしているようであった。

この男の子とヨナを爆発から守ろうと彼とナムグンは子供達に覆いかぶさる。

列車は爆発・脱線・・・・・・・・・どうなるのか。

レビュー

この映画での列車の中は地球の生態系の縮図だと感じるそして人口の抑制は戦争、つまり殺し合いなのか。今の世界において、どこかでいつも戦争がおこっている点と共通する。

ダークな物語を少し薄める意味でところどころに喜劇的な場面を入れている。メイソンの風貌と入れ歯が面白い、また機関銃をぶっ放す保母さんとか、ウィルフォードの少し太めの秘書とか。

最後に生き残ったと思われる人種が有色人種であることも面白い。また、氷河期にもシロクマは生き残っており自然のしたたかさを感じる。果たして、人類は大自然で生き残ってゆけるのかを問いかけるラストで終わっている。


僕はこの映画を観て昔読んだSFを思い出した。作者は誰か忘れてしまったが「無限高層ビルを旅する男」の物語である。

彼は毎日ひたすらビルを上って行く、登っても昇っても頂上に到達しない、上から降りてくる者や、下から上がってくる人々に話を聞くが、誰も頂上を知らない。彼は今日も昇る・・・・何のために。

TATSUTATSU

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