ストーリー
日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。
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スナフキンはご存じの通りムーミンの重要なサブキャラクターだ。外見がムーミンはカバのようだけど、スナフキンは人間に近い。彼は「自由と孤独を愛する詩人」である。
スナフキンは人間のように見えるが彼も妖精だ。一年中テントを背負って世界中を旅する。ムーミンはムーミン谷で冬眠するが、スナフキンは冬になると南の方に旅する。森の奥深くを探検するとスナフキンに会えるかもしれない・・・そんな気がする。
巷ではこんなスナフキンを愛する人が増えている。都会のわずらわしさがそうさせるのか、隠れ愛好家も多い。実は僕もその一人で彼にあこがれ森の中を一人で彷徨うことがある。ひょっとしたら認知症老人かもしれない。
僕らはスナフキンにあこがれる。でも彼は永遠の命とお金やモノに執着しない清らかな心を持っている。残念ながら僕らは稼がないと生きて行けないし、命も限りある。
世の中には妖精を見たことのある人が結構いる。これを単純に「目の錯覚」だと片づければそれで済むが、そうではないものも多いと聞く。見えないはずのものが見える病気として「シャルル・ボネ症候群」がある。
ある人から聞いた話だが、キノコ採りに山奥に入った友人の出来事だ。定期的に山に入るからキノコや山菜のある場所は分かる。今回もやはり、いつもの場所にキノコが密生していた。
彼はその一つを採ると少しかじった。そこからがどうもおかしい。目の前のキノコが沢に向かって動く。彼はそれを追いかけると、小さな泉があった。何回もここに来ているのに・・・見落としていたのか。
泉をよく見ると、たくさんの妖精が飛び交っているのが見えた。彼は夕暮れの靄の中にいるようなモヤを感じた。そこからは記憶が途絶えた。
暫く、そこで寝てしまったのか気が付くとあたりは暗くなり始めていた。慌てて下山した。思い返してみると、間違いなくたくさんの妖精がいたのは覚えている。その後、何回かそこに行った。でも泉なんかは無かった。
山の中は不思議な世界だ何が待っているか分からない。彼はこのことを冷静になってから分析してみた。あれほどの幻覚を見たのは初めてだし、確かに覚えている。
思い当たることを考えてみると、キノコをかじったのがいけなかったのか・・・でもいつもかじっている。今回、間違って幻覚を引き起こす毒キノコを摂取してしまったのか・・・。
知人は別の見解を持っている。山の中には火山性のガスがたまる場所がある。そのガスを吸い込んだため倒れ、幻覚を見たのかもしれない。
または、初夏の山は、山全体が冬眠から覚め始める。山の木々は多量の花粉や未知の化学物質をまき散らす。それにキノコだって胞子を大気に放つ・・・空の色が変わるほどに。当然、それらを吸い込めば、脳にダメージを与えることも考えられる。まだまだ、分からないことの方が多いのだ。
山の中や森に住んでいれば耐性も出来る。でも、我々は都会に生きているから今や自然の一部ではなくなっている。しかし、たまに行く自然の中は腹が減るし気分もいい。自然からは逃れられないのだ。
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昨日、夢の中にスナフキンが現れた。ギターを弾きながら僕に話しかける。「何を悩んでるんだい」「一緒に旅しないかい」・・・と。僕は焚火の火を見ながら涙を流している。
最近、つらいことが多い、つらいことは追っかけて来る。いくつになっても悩み事は多い。充分、働いてきたし、やるべきことはやってきた。でも何かが足りないのだ。この歳になってもやり残したことが次から次へと出てくる。
スナフキンは僕を見つめて、ギターをかき鳴らす。彼は永遠の命を持っている。物凄く清らかな心も持っている。僕のように汚れた男はいまだに物欲、金銭欲から逃れられない。
スナフキンはそんな僕でも一緒に旅しようと手を差し伸べてくれる。手が触れようとした時、目が覚めた。僕こそ「スナフキン症候群」を既に患っている。
「スナフキン症候群」に一度でもなってしまうともう元に戻ることは難しい。本物のスナフキンに会えるまで旅を続けようとするからだ。患者から聞いた話だが、夢の中だけでなく現実にスナフキンを見たと言う。
この病は多くの病気の中でもヤバい部類に入る。でも、治療法がないことは無い「ムーミンのアニメドラマを繰り返し見る」ことらしい。
僕も現在、この方法を用いて治療を継続している。ところであなたの後ろにいるトンガリ帽子は「誰」・・・。
TATSUTATSU
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「僕の金縛り体験記」
「連鎖する惨劇」
「クリスマスの雪女」
「幽霊が見える男」
「緑の少年」
「真夜中の鏡の怪」
「死相が顔に現れる」
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