ストーリー
1947年7月アメリカ ニューメキシコ州ロズウェル付近にUFOが2機墜落した。この中に各3体、計6体の異星人が確認された。さらに生存していた2体の異星人がいたらしい。
真実は長いこと闇の中に葬られていたが2026年に公開された。そして間違いなくアメリカ軍はUFOと異星人を回収していた。これが公表されたことによって世界中に衝撃が走る。
ロズウェル事件から数十年経過し、軍は冷凍保存してある異星人から細胞を取り出しクローン技術によって彼らを蘇らせようとした。人間の未受精卵を使ってそこに異星人の細胞を融合させる。色々な実験がなされたが、地球上で生きて行くためには人間とのハイブリットが良いと結論が出る。
アジアやアフリカから多くの代理母を集め、異星人の性質を持った赤子を誕生させようと計画が始まる。このような非人道的なプロジェクトは秘密裏に行わなければならない。
延べ200人以上の代理母が大金をもらい実験に参加した。多くは途中で胚の成長が止まったり、流産するものが多かった。しかし、研究を長いこと続けてゆくと十数人の異星人を産み落とすことが出来た。
しかし、そこから地球の環境になじみ生き抜く者は数体とプロジェクトの困難さが分かる。その中の一人アンディと呼ばれる個体の話をしよう。彼には5歳くらいからの記憶が心に残っている。
アンディが「お父さん」と呼ぶ、ベネディクト博士はクローン技術分野の大御所だ。既に75歳を超える高齢者だ。博士はアンディをものすごく可愛がる。一緒に寝たり、お風呂に入ったり、本を読んであげたり、遊んだりと毎日を過ごす。
アンディはひと月に一回、体と知能の検査を受ける・・・それ以外はフリーだ。住む家は軍の施設の中にあって広々とした庭付きの一軒家だ。「お父さん」とはここで約10年間過ごす。とても楽しかったと回想する。「お父さん」は85才の時心臓発作で亡くなってしまう。
その後、空軍のドナルド大佐・マリア夫妻と一緒に暮らすようになる。二人とも50才前後ではあるが優しくて実の子供のように接してくれる。二人には子供はなかった。
僕は外へ出てみたいと両親にせがむ。僕はほかの連中より成長が遅いようだ。18歳くらいなのに身長は140cmくらい、小学校高学年か中学低学年のようだ。僕の顔はまるでマンガだ。両親は、でかすぎる目を小さく、低すぎる鼻をやや高く整形し、外出してもおかしくないようしてくれた。
両親は僕をロスのディズニーランド、ベースボールやバスケットボールの観戦、さらにニューヨークにまで連れて行ってくれた。それに映画もよく見た。両親とは10年くらい過ごした・・・いまだにあの頃が忘れられない。
僕は生まれて25歳くらいになったが、身長は低く、小学生にしか見えない。それから空軍基地で仕事をすることになった。小さいのでデスクワーク中心だ。
僕は昼休みに遊び半分で「最高機密ファイル」に対しハッキングを試みてみた。ところがこれがうまくいってしまう。慌てた上司は僕を配属替えにしてしまう。次はNASA(アメリカ航空宇宙局)だ。
ここではロケットの推進方法に関する研究に従事した。この頃から不思議な夢をみる。地球上ではなくどこかの惑星上を彷徨っている・・・夢ではなく鮮明に記憶に残る場面もある。いつも不思議だ。
NASAでの仕事は毎日が楽しく面白い。チームを組んでロケットの新たな推進方法を考えるのがテーマだ。僕の案は核融合、反物質、重力エンジンなど多岐にわたる。研究が軌道に乗ろうとしていた矢先だ。僕に「日本」への転勤辞令が出る。僕はびっくりしたが初めて国外に出ることになった。
日本での勤務先は在日米軍と自衛隊の施設だ。この頃体調を壊し、病院に入院した。僕の場合、腸が短いので流動食やサプリで栄養を取っていた。ところが日本料理があまりに美味しく食べ過ぎてしまった。
僕が入院していた時に大スクープが発表された。UFOと異星人の公表だ。僕は入院個室のテレビにくぎ付けとなった。あまりに衝撃的な出来事で世界中がパニックに陥る。
生きていた時の異星人のビデオテープが流れる。異星人は画面に向かって何かを叫ぶ。一般人にはピープ、ピーポ、パー、ピー・・・などとしか聞こえてこない。
ところが僕は彼が叫んでいる声の意味が頭の中に入ってくる。「助けてくれ」「生まれ故郷に帰りたい」「死にそうだ」「体が痛む」「水が飲みたい」・・・。
ビデオテープの異星人の命を懸けた訴えが、僕を眠りから覚ます。「僕は彼らの仲間だ」「僕は異星人だ」・・・。長い間もやもやしていた霧が吹き飛んだ。
僕は主治医に「自分が異星人」であることを告げた。そして早くここから出たいと懇願する。僕の精神は日に日に悪くなり、一か月後には大声を出したり、暴力をふるったりもした。僕は鎮静剤で眠らされ、暴れる時は拘束される。
事実、この公表を境に世界中で精神に異常をきたす人が激増した。「僕は宇宙人に拘束されたことがある」「僕は宇宙人だ」「僕は宇宙人の子孫だ」「僕は宇宙人に人体実験された」など・・・・。これらを「異星人シンドローム」又は「宇宙人シンドローム」と呼んで精神治療が必要となる。
以上が、「アンディ」から聞いた話だ。彼の話は最初から妄想によるものかもしれない。彼の話を真に受けてはいけないのか・・・彼の瞳には嘘が感じられない。僕には「アンディ」が純粋に見えた。
その後、「アンディ」は病院から消えた。監視カメラ映像には真夜中にサングラスをかけた少女が現れる。そして警備が厳重な個室から「迎えに来たよ」と一言発して視界から消える。
その後近くで巨大なUFOが目撃された。後から確かな情報筋から聞いた話だが、「アンディ」のようなハイブリットは5体いたそうだ。そのうち2名が行方不明になった。慌てたアメリカ軍は残りの3人を「日本」「EU」「オーストラリア」に分散して隠したようだが無駄なことだった。
あの瞳のきれいな「アンディ」にもう一度会いたい。きっと今頃、別の星で楽しく暮らしているのかな。ひょっとしたら地球に遊びに来るかも。
TATSUTATSU
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