サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2019年10月11日日本公開のアメリカ・オーストラリア合作SFドラマ
監督・脚本 リー・ワネル(ソウ、インシディアス、インシディアス第2章、アップグレード、透明人間)
制作 ジェイソン・ブラム(アップグレード)
出演 ●ローガン・マーシャル=グリーン(プロメテウス、インビテーション、スノーデン、スパイダーマン:ホームカミング、アップグレード)
●ベッティ・ガブリエル(アップグレード、ゲット・アウト)
●ハリソン・ギルバートソン(アップグレード)
大どんでん返し系SFドラマだ。結末が分かってしまうと面白さが半減するので要注意。このドラマの影の主役は「超小型AIチップ」だ。しかも、このような研究は実際に進行中であり、近未来では実用化される可能性が高い。
今日(2019年10月19日)の日経新聞にグーグルが量子コンピューターの実証実験に成功したと載っている。最先端のスーパーコンピューターが1万年かかる問題を量子コンピューターが3分20秒で解いたそうだ。
こんな優れものが超小型化されれば世の中の常識なんか吹っ飛んでしまう。100年後の世界は予想もつかない展開を見せるかもしれない。果たして未来はバラ色かそれとも・・・。
妻を殺され全身麻痺になった男がAIによってよみがえる。「人間の体を動かしているのは脳からの電気信号だ」この電気信号が脊髄を通って各筋肉に流れる。ところが脊髄が損傷すると手足が動かせなくなる。
しかし、損傷した部分に最新鋭のAIチップを埋め込むと遮断された電気信号が筋肉に伝わり体を動かすことが出来る。このドラマの面白いところは「最新鋭のAIチップは最強の頭脳」であることだ。つまり主人公は体の中に2つの頭脳を持つことになる。
この2つの頭脳を切り替えることによって普通の人間からスーパーマンになる。窮地においてはAI頭脳に切り替え、ハイスピードで筋肉を動かせば超人的な反射能力によって敵を難なく倒せる。
こんなドラマどっかで見たぞと思う人は多い。「攻殻機動隊」「イノセンス」や「ロボコップ」なんかが浮かんでくる。低予算B級映画だが面白い。こんなSFドラマが好きな人にはお勧めだ。
監督・脚本は「ソウ」シリーズ「インシディアス」シリーズで有名なリー・ワネル、そして製作には「スプリット」、「ゲット・アウト」などを手掛けたジェイソン・ブラムが参加している。アップグレードとは「改良型」と言う意味だ。
話のスジを少し紹介すると。近未来の出来事である。アナログ好きなグレイ・トレイス(ローガン・マーシャル=グリーン)は電気自動車ではなくガソリンで動くレトロな車の修理工をしている。
彼は妻のアシャ(メラニー・バレイヨ)とビンテージカー「ファイア・バード」の納車にエロン・キーン(ハリソン・ギルバートソン)のところに行く。
エロンは巨大IT企業ヴェッセル社の若き天才経営者だ。彼は今、開発中の高性能な頭脳「ステム(軸とか幹と言う意味か)」を見せてくれた。ピンセットでつまめるようなAIチップが世界を変えるとエロンは言う。しかし、アナログ好きなグレイはそんな世界は嫌いだと考えを変えない。
グレイとアシャは自動運転車で家に帰る途中、暴漢に襲われ、妻は射殺、自分自身は全身麻痺となる。3か月先、車いす生活になってしまったグレイは失意のどん底にいた。
そこにエロンが現れ、損傷を受けた脊髄に高性能AIチップ「ステム」を埋め込めば普通の生活がおくれると言う。グレイは半信半疑であったがエロンの言うことを聞いて手術を受けることにした。但し、条件としてこの手術は倫理的に認められていないため秘密にすることと契約書にサインさせられた。
手術から何日かして、グレイは車いすから立ち上がることが出来るようになった。彼は奇跡だと喜ぶ。しかし、対外的には秘密にしなければならない。したがって表面上は車いす生活を続けていた。
五体満足な体に戻ったグレイは自分たちをこんな目に合わせた男たちに復讐しようと犯人捜しを始める。そして「ステム」の力を借りてある犯人たちにつながる証拠を入手する。果たして、グレイは復讐を果たすことが出来るのか、そして体に埋め込まれた「ステム」の真の目的とは・・・・。
その後のストーリーとネタバレ
「ステム」の声が頭に直接響く、外部には聞こえないようだ。「ステム」は我々を襲った者の画像を解析し一人の男のタトゥーからある人物を特定する。元海兵隊の男のようだ。
グレイはその男が出かけたすきに部屋を調べて証拠をつかもうとする。ところが奴がすぐに戻ってきて見つかる。そいつは自分を襲ってくる。とても勝ち目がない。
殺されそうになった時「ステム」が頭の中で「単独で動く許可を」とささやく、グレイは首を絞められながら「許可する」と声を絞り出す。突然、体が動きあっと言う間にそいつを殺してしまう。
この殺人事件にジェーン刑事(ベッティ・ガブリエル)は不審を持つ。近くの防犯カメラには車いすで移動するグレイが映っていた。
その後グレイは殺した男のつながりであるバーを訪ねる。そこで黒人の大男を捕まえ妻を殺した男たちの名前をはかせる。男たちのボスは「フィスク(ベネディクト・ハーディ)」と言う男らしい。
そんな時、グレイは体の動きがおかしくなる。エロンが「ステム」をコントロールしようとしているようだった。「ステム」は前もって調べておいたハッカーのところに急げとグレイに指示を出す。
グレイはその建物めがけて急ぐ、しかしそのあとからフィスクたちが追ってくる。ハッカーのところに駆けつけた時には完全に体が動かなくなっていた。ハッカーはウィルスをぶち込みエロンのコントロールを解除しようとする。
フィスクたちは部屋の中で倒れているグレイを見つける。体に内蔵されている銃でグレイを撃とうとした時、彼はすごいスピードで立ち上がり逃げる。そしてフィスクたちとの死闘の末二人を殺してしまう。
グレイはエロンのところに行くそこにはジェーン刑事もいて殺人事件の犯人としてグレイを疑っていた。彼はエロンを撃ち殺す。そしてジェーン刑事も撃ち殺そうとする。
しかし、グレイは最後の力を振り絞って拳銃で自分の頭を撃つ。その時、彼は病院のベッドで目を覚ます。そしてそばには優しい妻がいた。グレイは満ち足りた世界を感じ恍惚状態になる。
これは「ステム」による幻覚だ、グレイは幻覚の世界に閉じ込められていた。現実世界ではグレイの体は「ステム」に乗っ取られていた。「ステム」はジェーン刑事を撃ち殺し、自由な人間社会へと紛れ込んでゆく。
レビュー
AIの「ステム」は自分の生みの親でもあるエロンを殺して自由になる。体はグレイから奪い取る。ここに出てくる「ステム」はものすごく残酷だ。人間に恨みを持っているとしか考えられない。
暫く前にヒットした「エクス・マキナ」によく似ている。AIは人間をだましてでも実験室から外の世界に逃げたいようだ。「ウエストワールド」もAIロボットたちが反乱を起こし、人間世界に紛れ込みこの世界を乗っ取ろうとする。
将来、こんな出来事が現実化する可能性が無いともいいきれない。AI対人間の戦いでは人間がいつも負けるとは限らない「マトリックス」「ターミネーター」「トランセンデンス」などは人間が善戦する。
今回、人間の体に補助AI頭脳を埋め込んだが現実には補助臓器の研究は結構進んでいる。補助人工心臓などはかなり小型化が実現できている。近い将来これらの人工臓器が一般的になると思う・・・すごいね。
TATSUTATSU
「透明人間」
「死霊館シリーズ恐ろしいジェームズ・ワン ホラー映画ベストテン」
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