サマリー
2016年日本公開のスペイン・ブルガリア合作のSFロボット映画
監督 ガベ・イバニェス
出演 ●アントニオ・バンデラス(インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア、デスペラード、ファム・ファタール)
●ビアギッテ・ヨート・ソレンセン
●メラニー・グリフィス(ワーキング・ガール)
●ディラン・マクダーモット(あなたに逢えるその日まで・・・)
●ロバート・フォスター(ファミリー・ツリー、エンド・オブ・ホワイトハウス)
「オートマタ」とは18~19世紀に作られた機械人形のことだ。
この映画では人工知能を搭載したロボットの商品名が「オートマタ」になっている。彼らは人間より人間らしく描かれている。
人間によって作られ、人間を模倣し、人間に近づこうとした彼らなんだけど、もう人間から学ぶべきものは何もなくなったようだ・・・でも彼らは前進をやめない。
いったいどこに行くんだろーね、人間を見捨てて。
2044年の人類が滅んでゆく近未来が舞台だ。
この世界ではロボットが人間の奴隷のような扱いを受けて働かされているんだ。
人間が子供も含めて、徹底的に非人間化されている・・・こんなすさんだ世の中に主人公のジャックは幻滅し妻ともうすぐ生まれてくる娘の3人で海のある新天地で暮らしたいと考えている。
主人公ジャックだけが優しい人間として存在し、ロボットたちからも信頼され彼を守ろうと努力する。
近未来の世界観は「ブレードランナー」によく似ているし、どこからかパクってきたようなシーンが多くて、批評家たちからはあまり高い評価が得られなかったようだ。
2014年に作られているのに日本での公開は2016年になっている。低予算だし、スペイン・ブルガリア合作映画、監督も無名、こんな映画ヒットするはずがないと踏まれたようだ。
確かにアントニオ・バンデラスが出ていなければスルーされてもおかしくない映画だ。
でも僕は好きだねこんな映画が、何か心に残るものがある。
人間の傲慢さが描かれているし、ついにロボット達からも人類は愛想をつかされている・・・もう必然的に人類は滅んでいくしかないよね。
ロボットは二つのプロトコル(規格)で制御されている。その一つは人や生き物に危害を加えてはいけない、二つ目は自分や他のロボットを改造してはいけない・・・となっているんだけど。
二つ目のプロトコルが無いロボットをジャックは見つけてしまう。そしてそれを起点としてロボットたちが何かたくらんでいるような行動を取る。
何故なのか、それらのロボットは部品を集めて何かを作ろうとしている。このプロトコルが破られると大変な事態が生じる。
ところがそれを知ったジャックを会社の上層部は抹殺しようとする・・・何故なのか?
参考としてAIロボット映画「エクス・マキナ」と比較して見てね。
ストーリー
2030年代末に太陽からの太陽嵐で、地表は汚染されもの凄い勢いで砂漠化が進行してゆく。そしてそれに伴って99.7%の人類が死に絶える。
人口は2100万人にまで減少してしまった。
大気の乱れが地上の通信システムを妨害し、人類は技術的な後退を余儀なくされた。
ROC(ロック)社はロボット「オートマタ・ピルグリム7000型」を開発し、このロボットを使って砂漠化を防止する防護壁や機械式の雲を作る。
膨大な数のロボットたちを制御する基盤は2つの安全規格(プロトコル)
ロボット 第一のプロトコル ⇒ 生物に危害を加えてはいけない。
ロボット 第二のプロトコル ⇒ 自他を改造してはいけない。
によって、人類に危害が及ぶのを防いでいる。
ロボット(ピルグリム)達は人間社会に溶け込んでおり、彼らなしには人類は生きてゆけない状況になっていた。
ところがピルグリムを使っての砂漠化阻止が失敗に終わると、人々はピルグリムを憎悪の目で見るようになってくる。彼らは虐げられ肉体労働ロボットとしてこき使われる。
ジャック・ヴォーカン(アントニオ・バンデラス)はピルグリムの保険調査員(ピルグリムがトラブルを起こした時、保険金を払うかどうかを判断する)だ。
彼には身重の妻レイチェル(ビアギッテ・ヨート・ソレンセン)がいる。
彼のもとに連絡が入る自己修復をしているピルグリムが見つかったとのことである。(ピルグリムが自己修復できれば会社が潰れてしまう。)
陰には専門の技師(人間)がいるはずだとジャックは考える。このピルグリムには第二のプロトコルが無かった。
市は城壁によって囲まれ、城壁の外はスラム街が続いてる。都市に侵入しようとしてきたスラム街の住人達は虫けらのように殺される。
ジャックは城壁の作業場で、あるおかしな動きをするピルグリムを見つけたが、自分自身に火をつけ自殺のようにスクラップとなってしまった・・・会社に説明してもだれも信用しない。
ジャックはピルグリムを改造した技師を刑事のウォレス(ディラン・マクダーモット)と探し回る。
第二プロトコルの無い「バイオカーネル」(AIのバイオ頭脳)の分析をデュプレ博士(メラニー・グリフィス)に依頼する。
従来の「バイオカーネル」と第二プロトコルの無い損傷した「バイオカーネル」を融合させると大変なことが起こる。
デュプレ博士が改造したピルグリム・愛称「クリオ」は凄い勢いで進化し始める。自分の体の修復だけではなく、知性を持ち始めたと思われる。
ところが、デュプレ博士は少年に銃で撃たれ殺害される。そしてジャックの身も危険にさらされる・・・誰かが秘密の隠ぺいを図ったようだ。
ジャックは信じられないことに「クリオ」に助けられて生き延びる。
そして彼は4体のピルグリムによってどこかに運ばれようとしていた。
果たして「クリオ」を含めたピルグリム達はジャックをどこに連れて行こうとしているのか、そして彼らを改造した「技術者」は本当にいるのか、ピルグリム達の目的は何なのか?
レビューとネタバレ
サルが木から降りて人間に進化するのに700万年かかっている。ところがピルグリムの人工知能(バイオカーネル)から第二のプロトコルを無くすと、もの凄い勢いで進化が始まるとこの映画は言っている。
太陽の放射線が強烈に降り注ぐこの時代の地球では人類は生き残れないとピルグリム達は考えているようだ。そして人類を引き継ぐのはピルグリム達だとも考えている。
結局ピルグリムを改造できる人間の技師はいないんだ(AIは人間の知能を超えてしまっている、人間の知識では「バイオカーネル」の改造は不可能)。
23年前にピルグリム一号機が出来てから、残念ながら人類の技術は止まってしまったようだ。
結局、なんの制約もない一号機が、ピルグリムのバイオカーネルとプロトコルを作ったんだ。(この事実が知られてしまうと会社の存続も危うい・・・会社の上層部はこれらの事実が外に漏れないようジャックを抹殺する指示を出す。)
そして彼らは独自に進化し始めた、「亀」「昆虫」「ゴキブリ」の映像が出て来る。これらの生き物は激変する地球環境を長い年月生き延びてきた。
ピルグリムは人類を見捨てて、「昆虫」を参考にして形体を変え、自分たちだけで生きてゆこうと考えたんだ。
そして彼らは次世代型のロボットとして「ゴキブリ」をモデルにしたものを作る。しかも原子力電池を搭載でき充電なしで自由に動ける物体を作ってしまう。
この「ゴキブリ」型ロボットは第一プロトコルでさえ持ってない、自分を攻撃する相手には反撃する・・・自然界の中で生きてゆくためにはプロトコルなんて必要ない。
これが進化系の行きつく先なのかな、そして人類が核で汚染してしまった地区を目指して進んでゆく・・・この地区まで人間は追っかけてこないから。
人類が地球を汚染し自らの首を絞めていることへの警鐘を僕は感じた。
こんな世界で高度な知性を持って生きてゆけるのはロボットだけかもしれない・・・考えさせられる映画だ。
ひょっとしたらこんな未来が近い将来、来るかも知れない・・・怖いねえ。
最後に一つだけ疑問がある、第二のプロトコルの無いピルグリムはどうやって生まれたのかな?
ロボット映画「ターミネーター」「チャッピー」「ロボコップ」「ベイマックス」「スティールワールド」も見てね。
tatsutatsu
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