サマリー
★★★★☆(見るべき名作)
2020年7月日本公開のアメリカ・オーストラリア合作サイコ・サスペンス・ホラー
監督・脚本 リー・ワネル(ソウ、インシディアス、インシディアス第2章、アップグレード、透明人間)
出演 ●エリザベス・モス(アス/US、透明人間)
●オリヴァー・ジャクソン=コーエン(透明人間)
●オルディス・ホッジ(ドリーム、透明人間)
●ストーム・リード(透明人間)
サングラスをかけ顔を包帯でグルグル巻きにした透明人間を予想すると大外れする。科学が発達した現代では例の攻殻機動隊「光学迷彩」が実用化一歩手前だ。ボディスーツ全体に無数の小型カメラを仕込み、自分の後ろの映像を録画し前面に映せば自分の存在を消せる。
しかし、この透明人間を脇役に追い込んでしまうほどヒロイン役エリザベス・モスの演技が凄い。2時間以上の長い映画を通して彼女が主役だ。「透明人間」は彼女の数センチ横にいる。彼女は異変を感じ、恐怖に駆られる。
「監督のリー・ワネル」
奴は彼女の近くにいるのに誰にも見えない、そして何かを企んでいる。そいつがいつ彼女を襲うのか目が離せない。サイコ・サスペンス・ホラーとしてお薦めだ。監督のリー・ワネルは「ソウ」「インシディアス」などのホラー映画出身だがこんな怖いサスペンス物もなかなかいける。死霊館シリーズ、ジェームズ・ワンは彼の盟友だ。
「アップグレード」
前作の「アップグレード」同様、人気俳優ではなくて演技派俳優を起用している。リー・ワネルは低予算映画でありながらこれだけのクオリティの高さを引き出すとはただモノではない。
話のスジを少し紹介すると。「光学」の天才科学者エイドリアン・グリフィン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)はDV(配偶者暴力)男だ。恋人のセシリア(エリザベス・モス)は妹のエミリー(ハリエット・ダイアー)の力を借りて彼のスマートハウスから死に物狂いで逃げ出す。
彼女は警官のジェームズ(オルディス・ホッジ)と娘のシドニー(ストーム・リード)の家にかくまわれる。彼女はDVの後遺症が大きく、外出もままならない。2週間後、そんな彼女の処にエイドリアンの兄トム(マイケル・ドーマン)が現れる。
彼は弁護士で弟のエイドリアンが自殺し、5億円の遺産が彼女に残されたと言う。但し、彼女が罪を犯せばこの遺産はご破算になる。しかし、彼女はすべてを支配したがるエイドリアンが自殺するはずがないと感じていた。
高額の遺産は魅力的だ。彼女はこのお金をシドニーの教育費に使おうと考える。ところが彼女の周りで不思議なことが起こり始める。寝ていたベッドから布団が引きはがされたり、目玉焼きが焦げて火事になりそうになったり、自分が送ったように偽装された中傷メールが妹のエミリーに届いたり。
セシリアは精神的に追い詰められてゆく。間違いなく彼女のそばには奴がいるはずなのに誰も信じてくれない。彼女は妹に自分を助けてもらいたいと人気の多いレストランに呼び出す。突然、妹は首を切られ出血多量で倒れこむ、包丁は何者かによってセシリアの手にしっかり握らされていた。
彼女は警察に捕まり、精神病院に入院させられる。ベッドに縛られた彼女の精神は極限状態だ。しかし、この独房にも奴は忍び込んでくる。果たして執拗に付きまとう奴の目的はそして彼女は奴から逃れられるのか。
その後のストーリーとネタバレ
精神病棟に入院させられたセシリアは医療スタッフから血液検査の結果、妊娠していると告げられる。彼女は避妊していたはずなのに・・・頭が真っ白になる。きっと奴が避妊薬をすり替えていたに違いない。そして奴の目的は子供だったのだ。
独房の中で彼女は自殺を演出する。それを止めようと奴が正体を現す。奴と格闘している時警備員が入室してくる。セシリアは素早く逃げる。警備員を蹴散らし逃走する奴はシドニーを襲うと言う。
彼女は拳銃を握り、ジェームズに家に急行するよう連絡を取り、奴の車を追う。駆けつけたジェームズは奴と格闘するが歯が立たない。そんな時、シドニーが奴に向かって消火器をかける。粉末がこびりつき、姿が見えた奴に向かってセシリアは発砲する。
倒れこんだ奴の覆面を外してみると、なんとトムだった。警察がエイドリアンの自宅を捜索すると拘束された彼が発見される。すべてはトムの仕業だと、事件は捜査終了となる。しかし、セシリアは信じない。エイドリアンが全て仕組んだと・・・。
彼女はエイドリアンの招待に応じ、彼の家におもむく。そして、化粧室に行くと言いながら、少し前に見つけておいたスーツのある場所に行く。
エイドリアンは突然首を切り自殺する。監視カメラには彼が自分で首を切る瞬間が記録される。セシリアはジェームズに連絡を取る。駆けつけた彼は、勝ち誇ったような顔をした彼女を見る。彼女はエイドリアンが自殺した事を告げる。
ジェームズはセシリアが持っていたバッグの中にちらりと黒いスーツらしきものを見た。
レビュー
「1933年版透明人間」
H.G.ウエルズが1897年に書いたSF小説「透明人間」は薬を飲むことによって体が透明になる。この「透明人間」は色々な映画で使われ、膨大な作品を残している。日本でも円谷英二の特撮によって作品化されている。
有名なところでは2000年に作られたポール・バーホーベン監督の「インビジブル」だ。この映画では透明になるまでが実にグロい、皮膚⇒筋肉⇒骨格⇒透明と変化してゆく。
いずれにしても「透明人間」が主役だ。ところがリー・ワネルの作品はヒロインが主役で最終的には「透明人間」に対峙してゆく。また透明化の技術も薬や注射から「光学迷彩」になっている。
TATSUTATSU
「死霊館シリーズ恐ろしいジェームズ・ワン ホラー映画ベストテン」
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