SF

映画「アド・アストラ」感想・評価:宇宙を舞台にした親子の愛と生死の物語だ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2019年9月20日日本公開のアメリカ制作SF宇宙映画
監督・脚本・政策 ジェームズ・グレイ(アド・アストラ
出演 ●ブラッド・ピット(セブン、12モンキーズフューリーアド・アストラ
●トミー・リー・ジョーンズ(逃亡者、メン・イン・ブラックシリーズ、ノーカントリー、リンカーン、ジェイソン・ボーンアド・アストラ
●リヴ・タイラー(アルマゲドンロード・オブ・ザ・リングシリーズ)
●ルース・ネッガ(アド・アストラ
●ドナルド・サザーランド(M★A★S★Hマッシュ、1900年、SF/ボディ・スナッチャー、鑑定士と顔のない依頼人アド・アストラ

映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開

 

「アド・アストラ」とは「星々へ向かって」という意味だ。この映画は派手な予告編の割には実際に見てみると印象が全く異なる。宇宙を舞台にした父と息子の葛藤の物語といった方が良い。静かな心理サスペンスだ。

アクションやロケット発射・宇宙の素晴らしい映像よりも主人公の心の内面に重点が置かれ描かれている。「スター・ウォーズ」系と言うより「2001年宇宙の旅」系のような現実味がある。宇宙版「地獄の黙示録」ともいえる。

このドラマは僕が考えるに今から100年後くらい先を想定しているのではないだろうか。だから現在の宇宙技術の延長線上でストーリーが組み立てられている。

僕は面白かったけど退屈だと思う人もいるかもしれない。実は「2001年宇宙の旅」を最初に見たときは難解でつまらなかった。ところがこの映画は何年たっても古臭さを感じない。「アド・アストラ」はそんな映画かもしれない。

映画を見ていると宇宙には知的生命体などいないのではないかと感じさせる。人類が宇宙で唯一の知的生命体なのかもしれない・・・ひとりぼっちだね(ひょっとしたら当たっているかも)。

話のスジを少し紹介すると。人類は資源や地球外知的生命体を求めて活動範囲を宇宙へと拡大していた。「リマ計画」と称して地球外生命体の探索に出た宇宙船が16年後に消息を絶つ。ところが最近になってこの船が海王星近くで発見される。

この船の司令官クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)はロイ少佐(ブラッド・ピット)の父だ。父は母と息子を残したまま旅立っている。仕事に熱中するあまり家族を捨てたも同然だ。そのクリフォードが生きているらしい。

ロイは上層部から「父を探せ」「謎を追え」「必要であればリマ計画を破壊しろ」と命令を受ける。クリフォードは宇宙で危険な実験をやっているようだ。そのためこれによる「サージ(電気嵐)」が地球を襲う。このままでは太陽系のあらゆる生命体が滅んでしまうと危機感を持っていた。

ロイはまず月に向かって旅立つ。果たして生きている父を見つけそして、父を地球に連れ戻し、危険な「リマ計画」を停止させることが出来るのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

ロイは地球において国際地球アンテナの工事中、高所から落下し危うく死にかけた。原因はサージがアンテナを直撃したためだ。地球では飛行機の墜落や火災が頻発していた。

ロイはかつて父の同僚であったブルイット大佐(ドナルド・サザーランド)と月に向かう。月は地球からの移住者たちが資源の奪い合いをしている危険な場所だ。ロケットの着陸地点から月面基地に向かう途中、賊に襲われる。

数台の月面走行車が被害を受け、ブルイット大佐も重症を負ってしまう。ここから先は一人で火星に向かわなければならない。ブルイット大佐は「軍は君を信用していない」とロイに告げる。

火星に到着し、基地の責任者ヘレン(ルース・ネッガ)に出迎えられる。この基地から父が乗った探査船へとメッセージを送る。このメッセージは彼の息子であるロイが朗読する。しかし、父からの返答はなかった。激しく動揺したロイは海王星へ向かうメンバーから外される。

しかし、ロケットの出発直前にヘレンが機転をきかしロイを地下通路から船のコクピットに乗れるよう手配する。ヘレンの両親は「リマ計画」に参加していたのだ。彼女は両親の消息が知りたかった。

ロイがコクピットに乗り込んだ時、作戦本部はロイを排除するよう指示を出す。ロイを襲ってくるクルーたちを撃退しようと誤って部屋の空気を減圧にしてしまう。クルーはすべて亡くなり、ロイひとりで海王星に向かわざるを得なくなってしまう。

長い旅路を経て海王星に到着する。備え付けの小型艇で父の船にドッキングしようとするが拒否される。小型艇から脱出した彼はハッチから船内に侵入する。

船に爆弾を仕掛け、船内を探すとそこにはまさしく父がいた。父を説得して船外に出る。しかし、父は帰るのを拒み宇宙服のまま命綱を外し、暗闇の宇宙へと消えてゆく。ロイの心は張り裂けそうだ。

彼は自分の船へと戻り、爆弾のスイッチを遠隔で作動させる。そして激しい爆発の衝撃波を利用して地球に帰還する。しばらくしてロイは今まで心を閉ざし冷たく接していた恋人のイヴ(リヴ・タイラー)を受け入れようと決心する。

レビュー

この映画は「ダンケルク」「インターステラー」を手掛けたホイテ・ヴァン・ホイテマが撮影監督をしている。だから映像が美しくリアリティに富んでいる。NASAや元宇宙飛行士、航空宇宙エンジニアなどが撮影に協力していることも見逃せない。

しかし、ストーリーが尻切れトンボになってしまっていることは大変残念だ。ロイの父クリフォードの船が何故失踪したのか、何処にいっていたのかそして何故海王星に戻ってきたのか。

他の乗組員はどうなったのか。さらに太陽系を破壊しようとする実験とは・・・何にも答えていない。それに今の宇宙技術の延長戦で描かれているとはいえ、コールドスリープやワームホールなどの超未来技術を使わない限り恒星間旅行は出来ない。

こんなギャップがあるから最後はもやもやした感じで終わってしまう。大変残念な作品だ。監督はわざと説明拒否したのか、理由を知りたいね。

TATSUTATSU

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