サマリー
監督・脚本・原案・製作 ギレルモ・デル・トロ(ミミック、ブレイド2、ヘルボーイ、パンズ・ラビリンス、パシフィック・リム、クリムゾン・ピーク、シェイプ・オブ・ウォーター)
出演 ●サリー・ホーキンス(ブルージャスミン、GODZILLAゴジラ)
●マイケル・シャノン(マン・オブ・スティール、シェイプ・オブ・ウォーター)
●リチャード・ジェンキンス(扉をたたく人、モールス、シェイプ・オブ・ウォーター)
●ダグ・ジョーンズ(パンズ・ラビリンス、ヘルボーイ、シェイプ・オブ・ウォーター)
●マイケル・スタールバーグ(メッセージ、ドクター・ストレンジ、シェイプ・オブ・ウォーター)
●オクタヴィア・スペンサー(スノーピアサー、ドリーム、シェイプ・オブ・ウォーター)
人間の女性と半魚人の愛を描いたギレルモ・デル・トロ監督の作品だ。「シェイプ・オブ・ウォーター」とは「水の形」「水の姿」と言う意味だが、何を示しているのかよく分からない。
僕は「水の姿」とは半魚人のことを言っているんじゃないかと思う。映画の中では半魚人を「神のような美しい生き物」と言っている。つまり水の中で優雅に泳ぐ姿から「水の姿」としたのかな。
ギレルモ・デル・トロ監督と言えば「パンズ・ラビリンス」が有名だ、この映画では女の子が主人公で異形の怪物たちが出て来る。今回も怪物(半魚人)が出て来るが主役は大人の女性だ。日本での公開は「R15+指定」となっており大人のダークファンタジーと言える(一か所ぼかしが入っているし、サリー・ホーキンスの全裸シーンがある)。
オリジナルバージョンでは「R18+指定」であり大人向けだ。何故 監督は大人向けにしたのか? 僕が考えるに、生と性を描きたかったのでは無いかと思う。生きることはセックス抜きでは考えられない、主人公の自慰の場面とか、半魚人とのセックス、また仲の良い画家はゲイで恋人を探しているなどタブーな部分も赤裸々に描いている。
主演のサリー・ホーキンスが素晴らしい、彼女で持っているような映画だ。彼女は「ブルージャスミン」でダメ男ばかりを好きになるダメ女を演じて、第86回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。彼女の演技に注目して映画を見るのも面白い。
この映画は第74回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得している。また第90回アカデミー賞で13部門ノミネートされている(作品賞・監督賞を受賞)。世界的に評価の高い作品であることは間違いない。でも低予算で、アクションシーンや派手な演出やCGが少なめなので、これを期待するとガッカリするかも知れない。
1962年のレトロな雰囲気とアレクサンドル・デスプラが手掛けるムード音楽が実にここちいい。大人のしっとりとしたファンタジードラマを堪能してはどうかと思う。
話のスジを少し紹介すると、舞台は1962年の米ソ冷戦時代、アメリカの航空宇宙研究センターで清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は単調ではあるが幸せな日々を過ごしていた。
彼女は孤児で、小さい時に虐待されたことから声が出ない、手話でコミュニケーションをとっている。友達は同じ清掃員のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)とアパートの隣部屋に住む売れない画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)だけだ。
ある日、研究センターにロバート博士(マイケル・スタールバーグ)を中心とするチームが秘密の生物を運び込む。数日後イライザとゼルダは秘密の研究室に呼ばれ床を掃除するように言いつけられる。床は血だらけで、手の指二本がちぎれて落ちていた。
この研究の責任者ストリックランド(マイケル・シャノン)が秘密の生物から反撃され、指を食いちぎられたようだ。彼は謎の生物を虐待していた。イライザは掃除の合間に謎の生物を見る。その生物はアマゾンの奥地で神のように崇められていた半魚人(ダグ・ジョーンズ)だった。
半魚人は異様な姿をしていたがイライザにはもの凄く魅力的に見えた。彼女はそれ以来こっそりと研究室へ忍び込み彼と手話でコンタクトをとる。不思議なことに彼は手話を理解することが出来るばかりか音楽に対しても反応を見せた。そしてイライザと半魚人には少しずつ信頼関係が芽生え始める。
そんな二人の様子をロバート博士は陰で見ていた。半魚人は肺呼吸とエラ呼吸が出来る、人間には無い能力を持っていた。ホイト将軍(ニック・サーシー)が研究所に視察に来る。ストリックランドは半魚人を生体解剖しその能力を調べるべきと進言する。
ロバート博士はこんな美しい生き物を殺してしまうことに大反対する。彼はホイト将軍とストリックランドを説得するも、意見を変えることが出来なかった。
この話を盗み聞きしたイライザは彼を助けなくては、自分たちは人間ではないと強く思いつめる。そしてジャイルズに協力してもらい彼を逃がす計画を立てる。果たして彼女の計画は成功するのか・・・・。
その後のストーリーとネタバレ
イライザは半魚人を逃がす為に、洗濯物を集める台車を使う。ところが半魚人の首には鎖に繋がれた鉄の首輪ががっちりとかかっていた。その時突然ロバート博士が現われ、イライザに首輪の鍵をわたす。
イライザは半魚人の首輪を外し、台車に乗せて外に運ぶ、そこにはバンに乗ったジャイルズが待っていて、彼をそこに乗せて逃走する。これに気づいたストリックランドは車に発砲するが既に手遅れだった。
ロバート博士は実はロシアのスパイだった。彼は上層部から半魚人を殺すための毒注射器を渡されていた。しかし彼も半魚人に情が移ったのかイライザの味方をする。
イライザとジャイルズはアパートに乗り付け、半魚人を部屋のバスタブの中に匿う。そして何日かしたらこっそり桟橋から海に彼を帰そうと考えていた。
イライザは半魚人をアパートにかくまっているうちに深い愛情で結ばれてゆく。下水溝をタオルで塞ぎ部屋を水浸しにして彼女は彼と抱き合いセックスまでしてしまう。イライザは何食わぬ顔をして研究室に出勤していた。
ストリックランドは怪しいとにらんだロバート博士を監視・尾行する。ロバート博士はロシア人の同志と密会していたが自分たちの言うことを聞かなかった博士を撃ち殺そうとする。
しかし、そこに現れたストリックランドがロシア人たちを射殺する。そしてケガをしたロバート博士の傷口に苦痛を与え、半魚人の居場所を聞きだそうとする。ロバート博士は首謀者が清掃員であることをほのめかす。そして彼もストリックランドに射殺される。
ストリックランドはゼルダの家に押しかけイライザが首謀者であることを知る。ゼルダが電話でイライザに「早く逃げろ」と通報したため奴がアパートに着いた時にはもぬけのからだった。ところが日めくりに桟橋とメモ書きが残されていたのをストリックランドは見てしまう。
桟橋ではイライザと半魚人が別れを惜しんでいた。そこに駆け付けたストリックランドは拳銃で二人を撃ってしまう。そばで待っていたジャイルズは慌てて角材でストリックランドを殴り倒す。
死んだかと思われた半魚人は起き上がり、ストリックランドに鋭い爪で致命傷を負わせる。半魚人はイライザを抱き上げると海に飛び込む、彼がイライザを抱きしめ、口づけをすると彼女は息を吹き返す。
半魚人にはキズを癒す不思議な能力があった。それ以来、二人を見た者はいない・・・。
レビュー
ギレルモ・デル・トロ監督は「美女と野獣」が好きではない、美女が野獣にキスするとハンサム男に変身してしまうなんてまやかしだと言っている。
だからあまり美人ではない演技派女優サリー・ホーキンスを起用している。彼女がキスをしても半魚人はそのままだ、しかもセックスまでしてしまう。これが本当の「美女と野獣」ドラマではないかと考えているようだ。
主人公のイライザは口のきけない孤独な女性だ、また半魚人も孤独だ、孤独どおし心が通じるものがある。でも半魚人は怪物だ猫を捕まえ食べたりするし、鋭い牙と手足の爪が武器だ。
結末では半魚人は拳銃で撃たれても生き返るばかりか死にかけているイライザまで蘇生させてしまう。この能力が神と崇められているゆえんなのか?
半魚人を救ったのは非力で無力な人たちだと映画はアピールしている。ひょっとしたらアマゾン奥地には彼らがいるかもしれない、なんせ巨大魚の宝庫だからね。
TATSUTATSU
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