ヒューマンドラマ

映画「エンパイア・オブ・ライト」感想・評価:中年女性と黒人青年の恋を映画館を舞台に叙情豊かに描く秀作

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2023年2月23日 日本公開 アメリカ・イギリス合作 ヒューマンドラマ
監督・脚本・製作 サム・メンデス(スペクター
脚本 ステイシー・メニヤー
出演 ●オリヴィア・コールマン(ロブスター、オリエント急行殺人事件女王陛下のお気に入り
●マイケル・ウォード
●コリン・ファース(裏切りのサーカスマジック・イン・ムーンライトリピーテッドキングスマン
●トビー・ジョーンズ(裏切りのサーカスレッド・ライトアトミック・ブロンド

『エンパイア・オブ・ライト』予告編│2023年2月23日(木・祝)公開!

 

映画の中には過激な描写もあるが全体的に叙情豊かでしっとりとした大人の恋愛映画になっている。オリヴィア・コールマン扮する精神が崩れかけた中年女性ヒラリーの演技は素晴らしいがそれにもまして黒人青年スティーヴンを演じるマイケル・ウォードが実にいい。

彼の素直で優しい演技に引き込まれる。1980年代のイギリスにおいて20代の黒人青年と40代の白人女性の組み合わせはそれだけで奇異な視線を浴びる。

お互いに人生の重荷を背負っていて、共感するものがある。二人は人種と年齢を超えて、激しく燃え上がるが周りにとっては目障りだ。

世の中は不況の真っただ中、大きな映画館でさえその波をもろ受けている。全館4スクリーンあったが客が入らず半分の2スクリーンで細々と上映を続けている。劇場の最上階は長いこと使われておらず、ハトのねぐらになっている。

スティーヴンはそこで羽の折れたハトを見つけ治療してやる。暫くして羽が治ったハトは元気に大空に向かってはばたく。このシーンが映画の内容を象徴している。ヒラリーはそんな優しいスティーヴンを見て、心に灯がともる・・・この場面が実に心に残る。

話のスジを少し、紹介すると。時は1980年代初頭のイギリス、舞台は海辺の町マーゲイト。ヒラリーは地元でも人気のある映画館「エンパイア劇場」で働いている。

彼女は劇場支配人エリス(コリン・ファース)の部屋に呼ばれては、セックスを強要される。彼女はもううんざりだが彼の巧みな話術で拒むことが出来ない。そして日常が味気なく、精神病院にも定期的に通っている。

この劇場に、大学の建築学部を目指して勉強しているスティーヴンが現れ、働き始める。彼は大学進学がうまく行かず諦めかけている。同僚となったヒラリーに「諦めるな」と励まされる。

スティーヴンは映画館の仲間たちの温かい雰囲気に触れ、彼らと打ち解け仕事を続けてゆく。映画館の中は魅力ある別世界だ。そして屋上から見る景色は何て素晴らしい。

スティーヴンはここで仕事をしてゆく中でヒラリーに好意を持ち始める。彼女もスティーヴンの素直なやさしさに触れ心を通わせ、一線を越えてしまう。

そんな二人に試練が容赦なく降りかかってくる・・・。

全編に流れる音楽と美しい映像が素晴らしい。ホラーとかアクションとかコメディなどに飽きたらこんな映画もたまにはいい。地味な映画だけど、見てるうちに物語に引き込まれてゆく。そして見終わった後は清々しささえ感じる。

イギリス・アメリカ合作だがイギリスの名優たちがサム・メンデスのもとに集結して素晴らしい作品を作り上げている。映画が心底好きな人にはお勧めだ。かつてのレトロな映画館や映写室が味わえるよ。

TATSUTATSU

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