ヒューマンドラマ

映画「ノマドランド」感想・評価:漂流老人の悲劇は世界共通だでも彼らは信念をもって旅を続ける

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2021年3月日本公開のアメリカ製作漂流する高齢労働者を描いたヒューマンドラマ
監督・脚本 クロエ・ジャオ
原作 ジェシカ・ブルーダー「ノマド:漂流する高齢労働者たち」
出演 ●フランシス・マクドーマンド(ファーゴ、あの頃ペニー・レインと、スタンドアップ、スリー・ビルボード、ノマドランド)
●デヴィッド・ストラザーン

『ノマドランド』予告編

 

昨今、人生100年と言われる時代が来つつある。100才まで生きられる人は運がいいのだがそうとも言い切れない。65才、或いは70才で定年を迎えてもまだ後30年もある。

残りの30年どうして暮らして行けばいいのか。伴侶に先立たれ、身寄りも、金も、住むところも無い老人は都会の海の中を人知れず漂流してゆく。漂流先は野垂れ死にか、孤独死か・・・身につまされる出来事をしばしば耳にする。

僕も既に70才近い、常に将来を気にしながら生きている。いつかは終着駅が訪れるのだがそれがいつになるのかどんな場所なのか。それまでは嫌でも生き続ける。

豊かな国アメリカにおいても社会問題となっている。2008年のリーマン・ショック、未曽有の経済危機が世界を襲う。その影響は現役世代だけでなくリタイヤ世代にも及ぶ。これによって多くの高齢者が住む家を奪われた。

老人たちは自家用車を寝泊まりできるように改造し、季節労働者として働き口を求めて全米各地を動き回る。現代の「ノマド=放浪の民」だ。

このドラマは派手なアクションや奇抜なストーリー展開があるわけではない。でもなぜか引き付けられる。それは我々が心の底に持っている、全ての物から解き放たれ自由に生きることにあこがれるからだ。

車に乗ってどこへでも行けるし、トイレも野外だ、季節に触れられ、同じノマド達に逢える。腹が減れば飯を食べ眠くなれば寝る、自然の一部としてふるまう。お金が無くなれば季節労働者として働く、そしてまた旅を続ける。

誰もいない荒野でパンクや車が故障すれば死を覚悟する危険性はあるがそれは織り込みずみだ。満天の星空、美しい夜明けと夕暮れ、心を洗い流してくれるきれいな小川、そして時々出会う野生動物たち。しかし、零下に下がる冬季は下手すれば凍死する。

このドラマの原作はジェシカ・ブルーダーの「ノマド:漂流する高齢労働者たち」だ。主演のフランシス・マクドーマンドがこの本に感銘を受け、中国人監督のクロエ・ジャオを起用して作り上げた。俳優はフランシスとデヴィッド・ストラザーンの二人だけ、後は実際のノマド達が協力している。

主人公のファーン(フランシス・マクドーマンド)はネバダ州のエンパイアで臨時教員をやっていた。リーマン・ショックによって工場が閉鎖・夫は解雇され、家も失う。そしてその後最愛の夫も亡くなる。

いつまでも途方に暮れるわけにはいかない、彼女は自家用車に家財道具を積み込み仕事を求めて「ノマド」生活を始める。生活は厳しく、日雇い労働も楽ではない。でも失ったもの以上に得るものも多い。何物にも代えがたい「自由」がある。

旅先で「ノマド」の仲間、デヴィッド(デヴィッド・ストラザーン)と知り合う。彼は病気になり、息子の家に厄介になることになった。彼はファーンに一緒に住まないかと誘ってくれた。しかし、彼女はそんな夢のような申し出を振り切り、一人「ノマド」を続けてゆく。

TATSUTATSU

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