ヒューマンドラマ

映画「ゲティ家の身代金」感想・評価:ゲティ三世の身代金400万ドルは結局払われたのか

サマリー


★★☆☆(そこそこ面白い)

2018年5月日本公開のアメリカ・イギリス合作のヒューマンサスペンス映画
監督 リドリー・スコット(エイリアンブレード・ランナーブラック・レインブラックホーク・ダウンプロメテウスエイリアン:コゲナントエクソダス:神と王ゲティ家の身代金
原作 ジョン・ピアースン「ゲティ家の身代金」
出演 ●ミシェル・ウィリアムズ(ブロークバック・マウンテン、マリリン7日間の恋、マンチェスター・バイ・ザ・シーゲティ家の身代金
●クリストファー・プラマー(サウンド・オブ・ミュージック12モンキーズプリーストドラゴン・タトゥーの女ゲティ家の身代金
●マーク・ウォールバーグ(ディパーテッド、パーフェクトストーム、ザ・ファイター、テッドシリーズ、ローン・サバイバートランスフォーマーシリーズバーニング・オーシャンパトリオット・デイゲティ家の身代金
●チャーリー・プラマー(ゲティ家の身代金

映画『ゲティ家の身代金』予告編

 

決してエンタメ映画ではない、胃が痛くなるようなドラマだ。見ていて楽しくはないが考えさせるドラマだ。大富豪にはとても感情移入出来ない。誰しも大富豪がどんな暮らしをしているか興味があるが、至ってシンプル、こんなものかと感じた。

世界一の大富豪ジャン・ポール・ゲティは金の亡者だ。溢れるほど金を持っているが、孤独で不幸な存在だ。彼のもとに集まってくるのは金目当ての蛆虫どもと考えている。そして彼は強烈なケチだ、ホテルに泊まっても自分のワイシャツを自分で洗ってアイロンをかける・・・ケチもここまでくると徹底している。

彼は美術品だけが自分を慰めてくれる唯一の存在だと高額な絵画を買いあさる。彼の寂しさ、孤独さが伝わってくる映画だ。ドキュメンタリータッチの派手さのない演出が真実味を増す。映画に色を付けるとすれば灰色からセピア色のようなくすんだ感じだ。決して抜けるような青空色の映画ではない。

僕はリドリー・スコット監督が好きなんだけど、この映画は彼独特のどんでん返しや奇抜なアイデアを封印し、淡々と流している。高齢のクリストファー・プラマーの演技が渋い、当初彼の役はケヴィン・スペイシーが演じていた。ところがセクハラ報道が出て急きょ撮り直した。しかし、クリストファー・プラマーの演技がアカデミー賞にノミネートされるなど結果的には「吉」と出る。

話の筋を少し紹介すると、1973年石油王ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の孫ジョン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)が夜のローマで誘拐される。彼は石油王の息子ジョン・ポール・ゲティ・2世(アンドリュー・バカン)とアビゲイル(ゲイル:ミシェル・ウィリアムズ)の長男だ。

誘拐犯達は身代金1,700万ドル(当時のレートで約50億円)を要求する。ゲティの資産1,400億円と考えると払えない額ではない。ところが彼は支払いを拒絶する。

彼には14人の孫がいたが彼らが全て狙われるようになることと自分の身も危ういと考えたようだ。しかし彼は元CIAのフレッチャー・チェイス(マーク・ウォールバーグ)にこの件を調査し孫を連れ戻せと指示を出す。

ジョン・ポール・ゲティ3世の母親ゲイルは夫と離婚していて、払える金などどこにもない。かつての義理の父ゲティにすがるしか方法がないのだ。

当初ゲティ3世の狂言誘拐の線もあったが死体が見つかる。ところがその死体は誘拐犯の一人だと判明し、アジトを急襲するがゲティ3世は見つからなかった。誘拐犯のリーダー チンクアンタ(ロマン・デュリス)はゲティ3世をマフィアに売ってしまう。

マフィアと行動を共にしたチンクアンタはゲイルに電話を架け700万ドルに身代金を下げる。1973年11月にゲティ3世の片耳と写真のはいった封筒が新聞社に送られる。そして手紙には400万ドル払わないともう一つの耳も送ると書かれてあった。

この時点で事の重大さに青ざめた石油王ゲティは金を払うと言い出したが果たして3世は無事に戻ってくるのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

チンクアンタとゲイルの電話のやり取りで次のように引き渡し方法が決まった。車の上部に大きなスーツケース2個を積んで指定された道を走れ。そしてフロントガラスに小石が当たった場所で現金を降ろし、近くのガソリンスタンドで連絡を待て・・・・。

その通りにして、ガソリンスタンドで待つと「近くに解放した」と連絡があった。そこに駆け付けたがゲティ3世の姿が無い。彼は恐怖のあまり、指定された場所から逃走したようだ。

この一連のやり取りのあと、警察が犯人たちを取り押さえようと駆け付ける。犯人たちは「警察に連絡するとは裏切られた、人質を見つけて殺せ」と探し回る。

チェイスとゲイルはゲティ3世を探し回る。マフィアの一部は警察に捕まる。緊迫した時が流れてゆく、近くの街の狭い通りでやっとゲティ3世を見つけることが出来た・・・マフィアが近くに迫っていて危機一髪だった。この5か月間もの間 拉致された事件がもとで後年、ゲティ3世は不幸に見舞われることになる。

誘拐犯の一部は逮捕されたがマフィア ンドランゲタの幹部は証拠不十分で無罪となった。そして身代金の大部分は戻ってこなかった・・・マフィアの麻薬がらみの活動資金になったと言われている。

ジャン・ポール・ゲティは84才 がんで死去。映画では最も愛した絵画を抱きしめ孤独なうちに息を引き取る。彼の死後、莫大な遺産はゲティ財団(芸術機関として世界一の資産を保有する)に託される。そしてゲティ石油はテキサコに売却された。

レビュー

この映画を見ていると、お金とは有り過ぎれば身の破滅をもたらすものだと感じる。ジャン・ポール・ゲティはお金しか信じていない、人を信じることが出来ない。そのため自分の子供や孫までも不幸にしている。

彼は5人の妻との間に5人の息子がいる。長男のジョージはストレスのため49才で自殺する。三男ジョン・ポール・ゲティ・2世の息子が誘拐されたジョン・ポール・ゲティ3世だ。

ゲティ3世は誘拐されたトラウマから薬物に走り54才で亡くなっている。彼を5か月間も拉致させておくとは正気の沙汰ではない。お金を払えばすぐにでも解放できたはずだ。しかも身代金を値切りに値切りまくって最終的には290万ドルだ。

その他にも多くの親族が不幸な人生に見舞われているようだ。僕は金持ちではないが、大富豪の悲惨な人生を見ているとやはり「清貧」が一番だと感じるね、負け惜しみかもしれないが・・・。

 

TATSUTATSU

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