ヒューマンドラマ

映画「グリーンブック」感想・評価:人種差別を乗り越える心温まるヒューマンドラマ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2019年3月日本公開のアメリカ製作コメディドラマ
監督・脚本 ピーター・ファレリー(グリーンブック
出演 ●ヴィゴ・モーテンセン(ロード・オブ・ザ・リングシリーズ、イースタン・プロミス、グリーンブック
●マハーシャラ・アリ(ムーンライト、ドリームアリータ:バトル・エンジェルグリーンブック
●リンダ・カーデリーニ(グリーンブック

【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告

 

久々に心温まるヒューマンドラマを見た、お薦め映画だ。1962年のアメリカ、人種差別が色濃く残る南部。何かを変えようと演奏旅行に旅立つ黒人の天才ピアニスト。彼はガサツで無教養、腕っぷしだけ強いイタリア系用心棒を運転手に雇う。

二人はまさに水と油ほどタイプが違う。黒人の天才ピアニストにはマハーシャラ・アリ、イタリア系用心棒にはヴィゴ・モーテンセンが扮し、絶妙なコンビネーションを見せる。用心棒は黒人を嫌っている。しかし、旅の終盤には生涯の友と言えるほどのキズナが芽生える・・・ここがこの映画のキモだ。どんな出来事が待っているのか?

主演のヴィゴはこの映画の為に20キロ太って「ロード・オブ・ザ・リング」のハンサムなアラルゴンの面影が無い。いつも何かを食っているかタバコをふかしている。

マハーシャラ・アリはピアノが弾けないらしいが特訓の成果と編集によって、天才ピアニストを難なく演じている。このドラマを見ているとつくづく俳優とは「凄いね」と感じる。

「グリーンブック」とは南部を旅する黒人が泊まれる宿が載っているガイドブックだ。このドラマは実話をベースにしている。主役のトニー・バレロンガの息子ニック・バレロンガが脚本と製作に参加している。

第91回アカデミー賞に5部門ノミネート、作品賞・助演男優賞(マハーシャラ・アリ)・脚本賞を獲得している。たまにはこんなドラマでもいかが、涙がポロリと出ちゃうよ。

話しのスジを少し紹介すると。ニューヨークのナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒をしているトニー・”リップ”・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は店の改装のため2か月間職を失う。

そんな時、カーネギー・ホールの上階に住む、黒人天才ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手に雇われる。クリスマスまでの2か月間南部を回るコンサートツアーにはトニーのような用心棒が必要なのだ。

トニーは妻のドロレス(リンダ・カーデリーニ)にしばしの別れを告げ、「グリーンブック」を持って南部へ向かう。タバコをふかしたり、つまらない話をペラペラしゃべり、サンドイッチをガツガツ食いながら車を運転するトニーに対しシャーリーはもっと紳士的に振る舞えと苦情を言う。

シャーリーは天才ピアニストだけではなく3つの博士号を持つインテリだった。でもトニーはそんなことお構いなしに普段通りにふるまう。勝手にしろと当初は険悪な二人だったが、ある会場でチェロのオレグ(ディミテル・D・マリノフ)、ベースのジョージ(マイク・ハットン)を率いてピアノ演奏をするシャーリーを見てびっくりする。

トニーは「奴は天才だ」と再認識する。しかし、シャーリーはいつも寂しそうに見えた。ある夜、白人のバーに入っただけで袋叩きにあったシャーリーを助けたことから二人には友情が芽生える。

シャーリーはホワイトハウスでケネディ大統領を前に演奏する実績がありながら、南部では黒人差別の犠牲になる。そして最期のコンサートホールで問題が生じる。このホールではかつて有名黒人歌手が観客から暴行を受けた場所だ。

さて、無事にコンサートを終えることが出来るのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

トニーは電話代が高いので、愛する妻ドロレスに手紙を書く。ところが彼は中学レベルの教養しかない、見かねたシャーリーは手紙の内容を添削する。手紙を読んだドロレスは感激する。

「グリーンブック」に載っているホテルやレストランはシャーリーにとっては快適ではない。ニューヨークでは玉座のあるマンションに住み、何処に行っても破格の待遇を得ていたのに・・・ギャップの大きさに耐える日々が続く。

南部でも最高のコンサートホールで演奏させてもらえるがトイレや食事は白人とは別で粗末だ。最期のコンサートホールで白人専用のレストランに入ろうとしたシャーリーは店の支配人ともみ合う。彼はついにキレてコンサートをすっぽかして出て行ってしまう。

彼の後を追うトニーは二人で黒人専用のバーに入る。バーでは黒人たちが演奏に合わせ楽しく踊っていた。一通り演奏が終わった舞台にシャーリーは何気なく向かう。

そして、そこのピアノで即興演奏を始める。さらにその即興に合わせバンドマンたちが加わりバーは最高潮の盛り上がりをみせる。これが彼の実力だ、その場の観客を虜にしてしまう。

店から出たシャーリーは車に向かおうとする。その時、トニーは空に向けて拳銃を2発撃つ。シャーリーはびっくりするが車の陰からこそ泥が2人逃げる。トニーは「人前では札束を見せるな」と警告する。彼は頼りになる用心棒なのだ。

さあ、これからニューヨークに向かっての帰途だ。クリスマス・イヴに間に合わせるよう夜を徹してトニーはハンドルを握る。ところが睡魔に勝てず眠ってしまう。シャーリーに起こされた時には家の前だった・・・なんと彼が運転してくれたのだ。

トニーは「家に寄ってゆけ」とクリスマスパーティーに誘うが彼は固辞して帰って行く。トニーは久しぶりの家だ、家には親戚仲間が集い、パーティーの真っ最中だった。

暫くして、玄関先に酒を持ったシャーリーが現われる。トニーをはじめみんな大歓迎だ。妻のドロレスがシャーリーを抱きしめ、「お手紙有難う」とほほ笑む。

トニーとシャーリーはそれ以来50年以上に渡って親交を温める。トニーは2013年1月4日に82才でシャーリーその3か月後86才で亡くなる。

レビュー

このドラマはヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリを出演させたことが成功につながった。ヴィゴを使いたい監督は多い。彼はデンマーク系だ、最初イタリア系用心棒をやるのを心配していたようだ。しかし、映画をみるとさすがだと感心せざるを得ない。

マハーシャラ・アリも伝説の天才ピアニストを演じるにあたって相当苦労したようだ。ドクター・シャーリーは2013年に86才で亡くなっているがあまりにも本人の映像が少ないからだ。でも映画ではピッタリだ。

ドクター・シャーリーと言う人物は同性愛者だったらしい。彼はクラシックを演奏したかったようだが当時はそれは難しかった。だからクラシックにジャズやR&Bを融合させ独自のサウンドを作り上げた。

この映画で実際に演奏しているのはクリス・バワーズだ。彼も巷では天才ピアニストと言われている。物語に感動しながらさらにクリス・バワーズの演奏が聴けるのは二重の贅沢だね。

TATSUTATSU

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