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映画「セッション」感想・評価:主人公のドラム能力を引き出した鬼教官は許されるのか

サマリー


2015年日本公開のアメリカ・ヒューマンドラマ、監督はデミアン・チャゼル、主な出演者はマイルズ・テラー(ダイバージェントファンタスティック・フォー)、J・K・シモンズ(スティーブ・ジョブズ、スパイダーマン、クローザー、ターミネーター:新起動/ジェネシスラ・ラ・ランド)である。

映画『セッション』予告編

 

監督のデミアン・チャゼルは高校時代ジャズ・ドラマーを目指していたことから、彼の実体験が映画のヒントになっている。原題の「WHIPLASH:ウィップラッシュ」とはムチの様にしなやかにすばやく打つと言う意味で、邦題の「セッション」とはかなり異なる、どちらが良いのか別にして、邦題の方が分かり易い。

この映画の評価は非常に高く、第87回アカデミー賞5部門でノミネートされ、3部門(助演男優賞、編集賞、録音賞)受賞している。監督は当時28才で、脚本も担当しており非凡な才能を感じさせ将来が楽しみである。

プロのジャズ・ドラマーを目指している青年が、学内最高のジャズバンドへの参加が許され有頂天になる。ところが彼を待っていたのは、完全主義者の教授による地獄の特訓であった。

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彼は教授からイスを投げつけられ、罵倒され、平手打ちを食わされ、心身ともに極限状態となってゆく。恋人とも別れ、彼は必死に教授の要求を受け入れようと自分を追い込む、やっとのことでバンドのコアドラマーの地位を獲得する。

演奏会の当日、彼はレンタカーで事故を起こし、血だらけのまま会場に駆け付けドラムの前に座る。果たして彼は演奏できるのであろうか、是非映画を観て頂きたい・・・・・そして結末の魂が揺さぶられるような白熱したドラムの演奏に酔いしれて欲しい。

ストーリー

ストーリーを紹介すると、アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)はアメリカ最高の音楽学校シェイファー音楽院に入学する。彼はバディ・リッチ(アメリカ最高のジャズ・ドラマーの一人)の様な偉大なドラマーを目指し、日々努力している。

アンドリューの練習風景をたまたま通りかかったフレッチャー教授(J・K・シモンズ)が見ていて、声をかけられる。彼は一年生のため初級クラスのジャズバンドの控えドラマーとして、コアドラマーのライアン(オースティン・ストウェル)の譜めくりをしていた。

バンド練習の時フレッチャー教授が突然部屋に入ってきて、各パートの演奏を一通り試した後、アンドリューを呼び寄せる。そして教授から明朝6時にB‐16号室に来いと言われる・・・・・彼は天にも昇る思いであった。

アンドリューは映画館でバイトをしているニコル(メリッサ・ブノワ)に声をかけデートに誘う・・・・・デートもOKでついているときは何事もうまく行く。

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次の日アンドリューは遅刻しそうになってあわててB‐16号室に行くが教室はもぬけのからで、練習は9時からとなっていた・・・・聞き違えなのか、ダマされたのか。9時までにメンバーは全員そろい、皆の雰囲気は初級クラスとは全く異なり、緊張の糸が張りつめていた。

フレッチャー教授が部屋に入って来ると緊張がさらに高まる、最初の曲は「WHIPLASH」であり、演奏が始まる・・・しばらくして、音程が外れている奴がいる、自己申告しろと教授が追求する。

誰も言い出せず、教授は一人のトロンボーン奏者を怒鳴りあげ部屋から追い出す、でも本当は音程がずれていたのは別の男で、教授は能力だけでなくガッツの無い奴は大嫌いであることが分かる。

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休憩の後アンドリューのドラム演奏が始まる。教授はテンポが速い・遅いを指摘し何回もやり直しさせる、そして激昂してイスを彼に投げつける。

さらに何度もアンドリューの頬を平手打ちし罵声を浴びせる。彼はいたたまれなくなって涙を流すが、教授は容赦しない、次から次へと罵詈雑言が飛ぶ、そして「私は悔しいと」と皆の前で大声を出して叫べと強要される。

初日なのにまるで、地獄のような練習である。彼は「負けるものか」とプライベートで猛練習する。手のマメが破れ指は血だらけになる、それでもこぶしを氷で冷やし練習を続ける。

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ジャズ・コンテストの当日、フレッチャー教授はメンバー全員の前で「租チンで音が不ぞろいの薄っぺらな馬鹿ども、用意はいいな」とカツを入れる。

休憩時間中に、コアドラマーのタナーが楽譜を無くしてしまった、これを機会にドラマーがアンドリューに交代となり、彼はチャンスをつかむ。

アンドリューはドラムをうまくやりこなし、その結果シェイファー音楽院が当然のごとく優勝する。これによって彼はバンドのコアドラマーに昇格する。その後彼は数々の演奏をこなし、教授に信頼されていると思っていた。

ところがフレッチャー教授はライアン・コノリー(アンドリューが最初に属していたグループのドラマー)を試したいと言い出した。そして二人の演奏を聴いた教授は、コノリーを主奏者してもいいと言い出した。

そんな時に、教授の教え子ショーン・ケイシーが交通事故で亡くなったと訃報が入る。教授はバンドのメンバーに彼のCDを聞かせ涙ぐんだ、そして彼は最高のプレイヤーだったと残念がった。

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教授は「キャラバン」を課題曲にして、アンドリュー、コノリー、タナーの3人のドラマーを競わせる。ドラマーのテストは3時間以上続いた、3人共腕がしびれ、指のマメが破れ血がしたたり落ちる、それでもテストは延々と続く、やっと主奏者がアンドリューに決まった時には真夜中の2時になっていた。

ダネレン大会の当日、アンドリューはバスで現地に移動する。ところが運の悪いことにバスのパンクで立ち往生し、彼はあわてる。そしてレンタカーを借り会場に向かったがスティックを忘れ、取りに戻る途中に交通事故で車が横転し血だらけとなる。

果たして彼は会場に間に合うのか、そして演奏が出来るのか、是非映画を観て頂きたい。

ネタバレ

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彼は血だらけのまま会場にたどり着き、スティックを持ち演奏を始めるが、思うように演奏できず、スティックを落としてしまう。

フレッチャー教授から「お前は終わった」と引導を渡される。逆上したアンドリューは教授に殴りかかろうと突進し、馬乗りになったところを皆に止められる。そして、この事件でアンドリューは退学処分となる。

ある弁護士がアンドリューのもとを訪ねる。教授の教え子ショーン・ケイシーは自動車事故ではなく、部屋で首を吊って自殺したとのことであった。そして、フレッチャーの生徒になってからうつ病が発生したことから、彼の教育方法に問題があったのではないかと考えている模様であった。

弁護士はアンドリューに、教授に行き過ぎた指導があったかどうか、匿名で証人になって欲しいと懇願する。彼は当初、それは無いと否定していたが、弁護士の説得に負け証言することを承諾した。

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それからしばらくして、町を歩いている時に、ジャズ・ライブにフレッチャーが特別ゲストとして出演する看板が目に入った。アンドリューがふらふらっとそのバーにはいったところ、彼がピアノを弾いていた。

演奏が終わったフレッチャーはアンドリューを見つけ、声をかけ一緒に飲むことになった。フレッチャーはショーン・ケイシーの一件で音楽院を辞めさせられたようであった。

そして今はプロのバンドの指揮者をしているとのことであった。彼はアンドリューに自分がやってきたことは正しいと告白する。つまりバンドのメンバーを一段高めるために厳しい指導をしてきたと。

そしてJVCジャズフェスティバルが二週間後にある、ドラマーを探しているので是非出てほしい、選曲は今まで教えたレパートリーだと言われた。アンドリューはフレッチャーの真剣さに負け了解した。

アンドリューは当日会場へ出向き、いざ演奏となった時、フレッチャーが自分に言ったことはフェイクであった事を思い知らされる。演奏曲はアンドリューがやったことの無い「アップスウィンギン」であった。しかもフレッチャーがアンドリューに近づき「私をなめるなよ、私を密告したのはお前だ」とささやく。

当然アンドリューは演奏できず、公衆の面前で笑いものにされる。また仲間からも白い目で見られる。いたたまれなくなったアンドリューは舞台から去る。

心配になって、舞台そでに来た父親ジム(ポール・ライザー)に抱きしめられ「帰ろう」と言われるが、アンドリューは舞台に戻る。

そして、彼は自分勝手に「キャラバン」を演奏し始める。それを知ったベースが同調し、ピアノも加わる。フレッチャーは驚いたが、指揮を始める。管楽器が鳴り響き、バンドが一体感を持って演奏がスタートする。

さらにアンドリューは何かが乗り移ったように、夢中でドラムをたたき続ける。最初は怒りを感じていたフレッチャーだがアンドリューの演奏に熱い魂と目覚めた天賦の才能を感じ、本気になって指揮をとって行く。

レビュー

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アンドリューは「クソ男(やろう)」である。僕にはこれほど共感出来なかった主役もめずらしいと感じる。彼には親しい友人は一人もいない、バンドのメンバーは全て自分のライバルつまり敵である。そして先輩であろうと能力の低い者は軽蔑し、悪態をつく。

せっかく彼女が出来たのに、ドラム練習の足手まといになると言って彼女を怒らせ別れてしまう。また、いとこ連中にも冷たい態度を取る。彼は一流のプロミュージシャンになれさえすれば、あとは何を犠牲にしてもいいと考えている。

主役のマイルズ・テラーの演技が素晴らしい、天賦の才能を秘めた「クソ男」を実にうまく演じている。彼はこの映画のためドラムを特訓したらしい、実演奏はプロがやっているんだろうが、実にサマになっている。

そしてさらに素晴らしいのは、J・K・シモンズであり、彼は60代にしてオスカーを獲得している。長い間ご苦労さんと言いたい。

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彼は今回、体を絞り、頭をそり上げて鬼のように過激な教授役を作りあげている。大学で作曲を学び、オペラにも出演しているキャリアを考えると、ピッタリのはまり役かもしれない。

フレッチャーは本当に世界最高の音楽家を育てるために、異常で過激な指導をするのか・・・・・僕には学生いじめの腹黒い人間の様に見えたが、映画では善人なのか悪人なのか判断つかないような演出になっている。

結末の演奏「キャラバン」は音響の良い映画館で観たら最高だろうなと思う、DVDで観てもかなりの迫力を感じた。薄暗い部屋で、可能な限りボリュームを上げて鑑賞することをお勧めする。

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ジョニー・シモンズ

最後にこの映画を作る資金集めの為に、18分のパイロット版が作られている。この短編版も絶賛されている。この時の主役はジョニー・シモンズであり、本作ではマイルズ・テラーに置き換わっている。

何故主役が交代になってしまったのか、スケジュールの都合なのか・・・・世の中には運・不運があるね、マイルズ・テラーは運の良い「クソ男」かもしれないね。

辰々

 

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