サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2019年2月日本公開のアイルランド・アメリカ・イギリス合作ヒューマン・コメディドラマ
監督 ヨルゴス・ランティモス(ロブスター、聖なる鹿殺し、女王陛下のお気に入り)
出演 ●オリヴィア・コールマン(ロブスター、オリエント急行殺人事件、女王陛下のお気に入り)
●エマ・ストーン(アメイジング・スパイダーマンシリーズ、マジック・イン・ムーンライト、バードマン、ラ・ラ・ランド、女王陛下のお気に入り)
●レイチェル・ワイズ(ロブスター、女王陛下のお気に入り)
僕としてはこういうドラマは苦手だ。でも巷では大評判で第91回アカデミー賞9部門でノミネートされ、主演女優賞をオリヴィア・コールマンが獲得している。政治の裏側を見ると「女性たちが国を支配していた」と言う事実は多い。中国の清朝・西太后、日本の大奥なんかもそうだ。
このドラマは18世紀のグレートブリテン王国を支配していたアン女王と彼女の周りで覇権争いをする二人の女性の物語だ。史実に基づいているがフィクションも多い。しかし、ひょっとしたら宮廷の奥底ではこんな秘話があったかもしれないと思わせる。
きまぐれな女王は「女王って楽しいわ」と少女のようなことを言うが病弱で孤独を抱えていた。アン女王(オリヴィア・コールマン)は17人も子供を産んでいるが死産が多く、生きて生まれてきたのは5人だけ、しかも最も長く生きた王子も11才で亡くなってしまう。女王は子供を思い、17匹のウサギを大切に飼っていた。
女王の唯一の拠り所は幼なじみのレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)であるが彼女は気性が激しく、女王に物を申す唯一の存在だ。女王は何でもレディ・サラに相談し、二人で国を治めてきた。
フランスとの戦時下であるにも関わらず女王はレディ・サラに新しい宮殿をプレゼントしようと考える。彼女はこの戦時下に贅沢過ぎると申し入れを一蹴する。そんな時に没落した貴族の娘、アビゲイル・メイシャム(エマ・ストーン)が女中として宮廷に上がってくる。
このころ、女王は痛風に悩み一晩中苦しんでいた。アビゲイルは薬草を積み、許可を得ず女王の寝室に入り患部に薬草を塗る。これがサラに知れ、アビゲイルは女中頭に鞭打たれる。ところが薬草が効き、アビゲイルはこの功績により個室をあてがわれ女官に出世する。
ある日、アビゲイルは女王とレディ・サラが暗闇で抱き合っているところを見てしまう。二人は友人だけではなく肉体的にも繋がっていたのだ。そんな時に戦争反対派の政治家ハーリー(ニコラス・ホルト)がアビゲイルに近づき、女王やレディ・サラの情報を横流ししろと迫ってくる。
このことをレディ・サラに話し、私は秘密は守ると主張したつもりだが、逆に彼女の反感をかってしまう。レディ・サラの夫はモールバラ卿で対フランス戦争の最高司令官だ。
レディ・サラは女王に代わり政治を代行してきたが彼女の横暴さが次第に目につくようになってくる。そして、その隙をついてアビゲイルは女王に取り入り、肉体関係を持つまでになる。それを見たレディ・サラは怒って、アビゲイルを解雇しろと女王に迫るが彼女は首を縦に振らない。
女王を中心にレディ・サラとアビゲイルの陰湿な戦いが始まる・・・果たして勝つのはどちらか?
その後のストーリーとネタバレ
アビゲイルはレディ・サラの飲み物に眠り薬を入れる。そして彼女は馬に乗って遠出するのだが途中で気を失い馬に引きずられ大けがを負う。
レディ・サラが宮廷に来ないのを見計らって、アビゲイルはマシャム大佐(ジョー・アルウィン)と結婚する。女王からは2000ポンドの持参金もせしめてしまう。彼女は宮廷で確固たる地位を築く。
暫くしてキズが癒えたレディ・サラが現われるが既に宮廷はアビゲイルに牛耳られていた。彼女はサラが宮廷費を横領していたとのでっちあげを女王に吹き込む。
そしてサラは自宅謹慎となり、領地からも追放される。アビゲイルはライバルを蹴落としたが女王のしもべであることには変わりない。今日も憂鬱だ、女王からの「きまぐれ」に死ぬまで付き合わなければならないのか・・・。
レビュー
きらびやかな現代風の衣装と奇抜なファッション。そして宮廷内の豪華な調度品、絵画・・・。これらを見るだけでも面白いかもしれない。
「アビゲイル・メイシャム」
2000ポンドの持参金は今では約30万円ほどだが当時のお金ではかなりの大金であっただろうと推察する。アビゲイルは宮廷内で大きな影響力を手に入れるが1714年にアン女王が亡くなるとその力は陰り、寂しい老後だったそうだ。
「サラ・ジェニングス」
アン女王とサラとの関係は情熱的な手紙のやり取りがあったことから事実らしい。この手紙の一部が大英図書館に残っている。
イギリスのチャーチル首相はモールバラ卿=ジョン・チャーチルの家系だ。モールバラ卿はアン女王の寵愛を受けた女官サラ・ジェニングス(レディ・サラ)と結婚しその権力を確固たるものにしている。また、あのダイアナ妃もこの家系の子孫だ。
事実とフィクションを上手く組み合わせた上に、これをコメディにしてしまうところはびっくりする。イギリス王室からクレームが来ないのか心配になってしまうね。
TATSUTATSU
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